第30話 警軍本局突入
こんにちわ!
僕はジュースよりお茶が好きです!
本編どうぞ!(謎)
なんだか重要人物だった気がする女性から得た有力情報を元に、再び歩き出した俺たちだったが。
正直、目的地に着いてからが大変なのを考えると歩く速度も落ちてくる。
時計塔の隣の建物という情報を元に、街のいたるところに点在する地図を見てみると、どうやら人間の警察や軍隊は、総称して、『自警軍』というらしい。
そしてその自警軍が駐留するのは情報通り、街のシンボル時計塔の隣、『警軍本局』と呼ばれる場所らしい。
警軍本局の全体的な規模や警備体制が気になるところだが、コインの双子がいる限りどうにかなるはずだ。
人通りが多くなって来た。それに伴って、今更気がつく。
「あれ?あそこにいるのって、人間じゃないよな?……あそこにも、そこにも!」
暑そうに、ローブをパタパタしながらデクシアが答える。
「あぁ。まぁさっき大通りを歩いていた時にもちらほら見かけたけれど、人間領には、多種族居住区があって、普通に人間以外の種族も一定数暮らしているんだ」
「でもでも、龍皇戦争での卑怯なやり方に避難が集中して、いろんな種族から敵対意識を持たれてるはずじゃ?」
「まぁ確かに世界的に見たら人間という種族は嫌われているけれど、龍皇戦争の時も、それ以外の争いの時も、卑怯なやり方だったり非人道的な行いをしてきたのはあくまで自警軍、もっと言えばその上層部の限られた人間たちだ。一般市民に非があるとは誰も思っていないんだ」
「だからって人間領に住むってのも考えものだと思うけどなぁ」
「はは……、まぁ差別とかも無いらしいから、意外と人気らしいけどね、人間領の多種族居住区」
「人間と言えば、金持ってるイメージだしな。生活水準高い感じするわな」
ちらほら見かけるのは、獣人?だろうか、あとはエルフも少しだけ。エルフは特に、前回の龍皇戦争で自警軍の卑劣な作戦の被害を大いに受けた種族だからこそ、人間への憎悪は根が深いとは思っていたけど。気にしないやつもいるのか。
グローバルな雰囲気漂う大通りを3人並んで歩き続ける。
出店が立ち並ぶ商店街のような場所を抜け、教会などの大きな建物が増えてきたあたりで、大きな噴水のある広場に出た。
視界の中央にそびえ立つ時計塔を見上げて、視線を移動させる。
隣に構えるのは、とにかく巨大な鉄格子に囲まれた頑強そうな建物。市民の平和を守る自警軍の本部という割には、ラスボスの城って感じもするくらい殺伐とした雰囲気だ。
警軍本局と書かれた看板が、鉄格子の門の横に立て掛けられている。
そうして見ているうちにも、1人の男が2人の兵士に連れられて、その鉄格子の門をくぐっていった。
市民でさえも、にこやかな目であの建物を見てはいない。
戦争時の卑劣なやり口は、争いに正しいも悪いも無いとは言えども、人間の一般市民も、あまりいい気分では無いらしい。
多種族居住区と一般市民との繋がりはどうも強いらしく、仲の良い種族の友達が、自警軍の汚いやり方で仲間の種族が多く被害に遭ったという理由で人間領から出ていってしまうことだってあるだろう。
そうでなくとも、今人間領にいるエルフに、人間たちはただ普通に接して良いものかと迷わなくもないだろう。
多種族との交流を積極的に行っておいて、いざ戦争となれば待ってましたと言わんばかりに牙を剥く。
どうも人間という種族は“自由”の意味を履き違えてるようにも思えるが。
そんな、人間の市民からも、他種族からも忌み嫌われる自警軍の本部が、街の中心、ましてや広場という多くの人が行き交う場所に鎮座しているのは、少し怖いとも思う。
圧倒的な権力と軍事力を持った自警軍が、まるで市民を見張っているようにも思える。
見上げるほどの巨大な鉄格子の囲いを見て、思わず呟く。
「なぁ……ここに侵入するって、無理じゃね?」
「でも、確かに“石”は光ってるし……」
ポケットから、レプトスに貰った特別な石を取り出す。手のひらの上で、青く光るその石は、もちろんここに来るまではただの黒い石だった。
レプトス曰く、アマルティアには体の中に、この光る石と共鳴する何かを埋め込んでいるらしい。怖すぎる。
ちなみに俺にも、別の石と反応する何かが埋め込まれてるらしいから、どこへ逃げても無駄だと脅された。逃げるつもりなんて無かったけどその話を聞いて逃げ出したくなった。
俺たちがもーっと小さい頃、体に埋め込まれたらしい何かに、“光る”という形で反応する石を貰ったが、その石が、この警軍本局の前に来た途端に光り始めたんだから、アマルティアの居場所はここで間違いない。
にしても大きな建物だし、構造を知らないこちらからすれば、どこから手を出せばいいのか見当もつかない。
「どうしたもんかなぁ……アリステラに一気にぶっ壊してもらうのはどうだ?」
「いやいやランくん、それじゃ中にいるアマルティアくんも危険だよ……」
「あのティアが建物の崩落ぐらいでくたばるとは思えねぇけどなぁ」
「危険な信用の仕方すぎるよランくん」
アマルティアを選んだ龍皇玉がいつ孵化するかは誰にもわからないが、余裕綽々といった展開ではもちろんないので、一刻も早くパトリダに連れ帰らねば。
つか心配だ。アマルティアはめちゃめちゃ可愛いから、男だとしても手を出す輩が絶対にいる。俺なら手を出してる。……ってのは冗談。冗談。
いろんな意味で身の安全が保障されない危険な場所にいつまでもアマルティアをいさせてなるものか。
「ティアのうなじに“ほくろ”があるのを知っていいのは俺だけなんだぞ……」
「ちょっと気持ち悪いよランくん……」
「……ほくろの語源は、母胎内でついた母親の糞という意味の『母糞』で、後に『黒』という言葉も混ざって、ハハクロ、ハワクロ、ホークロという変化を経て今のほくろって言葉になったらしいけど、そんなものに喜んでるとか趣向が捻じ曲がってるにも程がある」
「おいこらクソ女。今ボソッと嫌な事言ったろ。それもあんまり知りたく無かった事言ったろ。木っ端微塵にするぞコラ」
「ちょ、アリステラもそんな事いっちゃダメだろう、ランくんも落ち着いて!」
まじで気に食わねぇんだが。何で俺の発言にちょくちょく嫌な言葉挟んでくるのコイツ。俺の趣向よりお前の性格の方が捻じ曲がってるわ!
今度アリステラの嫌いな霜降り草のサラダを山盛りにしてやるからな、覚悟しとけよ。
さて。
強行突破もできなくはないが、無用な戦闘はなるべく避けたいところだ。
デクシアの防御系神法“アスピダ”は神気を無効化するが、神気を纏っていない物体も存在する。
加護神であるベータの加護を拒絶する物体は、世界各地で見つかっていて、そのほとんどが武器の形状をしていることから、『神殺し』とも呼ばれる。
警軍本局ともなれば、それくらいの武器も持っていておかしくない。
それを装備した兵士と戦うことになれば、デクシアの防御系神法は役に立たない。
人間にだって、強いやつは必ずいる。事実、パトリダの主戦力の一角であるアグノスと互角に渡り合っていた金髪の剣士がいたじゃないか。
そんなやばい奴らが神殺しの武器を使ってくる可能性を加味すると、デクシアの神法に頼り切った強行突破は下策中の下策だ。
何か手はないだろうか。
と、ちょうど思い悩んでいた、その時。
「あれ?少し騒がしくなってきてないかい?」
「何言ってんだデクシア、何も聞こえねぇけど」
「……いや、やっぱりそうだ、向こうで何かが起こってる」
デクシアは右手に見える教会の方を指差す。つられてそっちに視線を向ける。
耳をすますと。
「うをっ、ほんとだ。何かすげえ音するけど……近づいてきてないか?」
「ははは……これは、ここにいたら危ない気がするけど、どうする、ランくん」
「何その言い方……とりあえず離れるか。嫌な予感がするし」
どんどん近づく騒がしさに危機感を覚え、広場中心の噴水の近くまで下がる俺たち。何だろう、と不思議に思った、その直後。
爆音と共に、教会の壁を突き破って広場に転がり込んできたのは、まさかの。
「ピ、ピズマ!?」
大剣を片手に走り回るピズマ。追いかける大人数の人間兵士たち。
綺麗に並べられたレンガ仕立ての広場の地面はピズマとそれを追いかける兵士たちにより捲れあがり、あっという間に広場は惨状と化した。
「港町で囮役をやってるはずのピズマが何でここまで……てかどんだけの敵を引き連れてんだあいつ!?」
「ああ……綺麗な街並みが破壊されていく……って、あれ、アグノスはどこだろう?」
デクシアの一言とほぼ同時。再びの爆音と共に広場に飛び込んできたのは、漆黒の長剣を振り回すアグノス。
アグノスもまた、とんでもない数の兵士に追われていた。
アグノスが切り壊した建物が崩れるなか、完全にパニック状態の広場。
混乱が混乱を呼び、逃げ惑う市民たちと、続々と警軍本局から飛び出してくる兵士たち。
地獄絵図だなぁ、と呑気に思いながら、とりあえずデクシアに提案する。
「なぁ、デクシア。もうこの騒ぎに混じって、警軍本局に乗り込んじゃわない?ピズマとアグノスも来たし、みんなで行ってササっとティアを取り戻しちゃうのが得策だと思うんだけど」
「短期決戦か……それならピズマたちにも伝えないと」
「それは俺が行くから、デクシアたちは警軍本局の警備体制を崩して来てくれ、後から行きやすいように」
「わかった。ランくんも気をつけて」
地面を蹴る。加速によって感じる風の抵抗に肌が震える。この瞬間は嫌いじゃない。
広場を大きく使って走り回るピズマの横に並ぶ。
「おい!ピズマ!こんなとこで何してんだ!てか、お前の実力ならこんな人数簡単に殺せるだろ!」
疲れた様子で走るピズマは、俺の声に反応し、振り絞るように言う。
「はぁ、はぁっ……今回の私たちの目的は、アマルティア様の救出であって、人間たちを殺しに来たわけでは……はっ、はぁ、ありませんので!」
「なーるほど、そりゃそうだ。それでだピズマ、作戦変更のお知らせだ。このままアグノスも連れて、あの鉄格子に囲われた建物に突撃する。あの中にティアがいるのはもうわかってる」
「なるほどぉ、はぁっ、……では、私はこのままその建物に向かうので、ラン様はアグノスをっ……!」
「おう。あとなピズマ、普段から走ってないからこういう時にスタミナ不足で苦しい思いをするんだぞ」
俺はそう言い残してその場を離脱。少し離れたところで、何人もの剣士と剣を交えるアグノスの下へ向かう。
多対1で奮闘するアグノス。その周辺の兵士の膝裏にナイフを刺していく。
膝から崩れ落ちる兵士の頭上を飛び越えて、人の波から出て来たアグノスに並んで走る。
「ピズマにはもう言ってあるけど、作戦変更だ。このままあの建物を陥とす!んでティア連れてさっさと帰る!おけぃ!?」
「お、おけぃ……って何だろう」
苦笑いで答えるアグノスと共に、警軍本局に走りこむ。
おそらくアリステラがやったのだろうが、入り口ごと建物の前面がごっそり崩れ落ちている。
入りやすくしろとは言ったけど、それは敵兵の数を減らせとか、そういう意味で、入り口をバカみたいに広くしろという意味ではなかったのだが。
とりあえず崩れ去った入り口から建物に入る。一階建ての外観だったが、どうやら地下があるらしく、それも信じられないほど階層が並んでいる。
階段に向かったが、そこには多くの兵士が待ち構えていた。
「醜悪なゴブリンどもがっ!人間様に楯突くか!!」
「うるせぇばーか!偉そうに言ってんなよ!彼女もできたことなさそうな顔しやがって!」
「はぁああ!?」
兵士たちの最前列にいた、偉そうな男が額に青筋を立てて怒り狂う。
その直後、吹き荒れる大風に、兵士たちは吹き飛ばされ倒れていく。
振り返ると、片手を正面にかざしたアリステラが不機嫌さマックスの顔で立っていた。
「ぐおぉっ……!クソどもが!!おい!援軍をもっと呼べ!どうしてこんなに兵が少ないのだ!?」
「それが!東から攻めて来たゴブリン軍によって、兵力の多くがそこに未だ集中しています!ここは我々だけでどうにかしなければ!!」
「な、なにぃ!?」
どうやら、イギア姉に頼んでおいた援軍はしっかり働いてるらしい。
一階はザコしかいないようだから、さっさと地下階層に降りてアマルティアを探さなきゃな。
再び、アリステラの神法によって吹っ飛ばされた兵士たちを無視して、俺たちは螺旋階段を走り降りた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
地下、一階層。
鉄格子が並ぶこのフロアは、犯罪者を幽閉する牢獄エリアと言ったところか。
恐ろしい顔付きのやつらが、こちらを睨んでいる。
「怖ぇ……、こいつらが第一級犯罪者ってやつか?」
デクシアが答える。
「いや、どうやら、牢獄はもう少し下の階層まで続くらしい。下に行けば行くほどに重刑を課せられた犯罪者たちがいるらしいよ」
「何だよ、じゃあこいつらヘボいのか」
「そう言ってやるな、こいつらにもプライドってのがある」
俺の発言に反応したのは、ピズマでもコインの双子でもアグノスでもなく、暗い廊下の奥から現れた大柄の男だった。
やたらムキムキの大男の登場に、空気が引き締まる。
「やたら上が騒がしいと思えば、客人とは……おっと、“人”ではないから、客ゴブリンと言ったところか?」
「誰だお前。あとな、筋肉もつけ過ぎると動きづらいだろうから、ほどほどにしとけよ、逆にフォルムがキモいぜお前」
「こらクソチビ虫、口を慎め。筋肉はあるに越したことはないんだよ。それと、名を聞くならまず自分が名乗れ」
「あたしは〜、ランって言いますぅ〜!好きな物は可愛いものでぇ、最近は水素水と、五穀米、あと、アボカドにはまってますぅ〜!ちなみにぃ〜、あたしサバサバ系なんでぇ、女子といるより、男子といる方が気が楽なんですよねぇ〜!」
「何だそれはおい」
「とある極東の島国で蔓延してるクソ女ウイルスにかかった感じの自己紹介だこの筋肉野郎。お前も名乗れやいっ!」
どうも現代日本ギャグはこの世界の住民には伝わらないらしい。
大男はゴホンと咳払いを1つ。口を開く。
「俺の名は漆塚武雄。宵隊副隊長であり、この第一監獄フロアの監守を務める男だ」
「へぇ。そりゃ凄い。じゃあ、誰かこいつの相手しといて」
「地上からの援軍の可能性も考えると、ここは激戦地になるだろうから、人数は少しでも多い方がいい、僕らが残るよ、ランくん」
デクシアが袖をまくる。
ちなみに、全身を覆っていたローブは、ここに突入するときに脱ぎ捨てた。もうバレるもクソもないからな。
「わかった、じゃあ2人はここを頼む。俺らも急いでティア連れてくるから」
「おいおい、クソ虫ども、勝手に決めるんじゃないぞ、俺はそこのお前とやりたいんだ、いい筋肉をしている、そこのやつ」
漆塚武雄こと、筋肉男はピズマを指差す。
確かにピズマは2メートルを超える身長に、えぐい太さの腕、厚い胸板だが、その巨漢と目の前の筋肉男が戦うとか暑苦しくて見てられない。
無視して進む。
「おい、無視するなゴブリンごときが、俺の相手をしろと言ってぶふぉあぁいっ!?」
ドゴーンと、壁に突っ込む漆塚。無論、イライラ顔のアリステラがやったらしい。
こんなことでくたばるような筋肉はしてなかったので、間も無く起き上がるだろうから、俺たちは急いで廊下を抜けて、奥へ向かう。
明かりが増えてきて、やがて見えたのは。
巨大な、巨大過ぎる螺旋階段。
先ほど俺たちが駆け下りてきたそれとは比べものにもならない大きさの螺旋階段が、天井の方から、見えないほどの地下深くまで続いている。
壁に、この警軍本局の案内図が描かれていた。
「なるほど、ここは中央螺旋階段って言うのか。そもそもこの建物は円柱状だったんだな。めちゃ地下まで続いてるし。地下5階層までが、監獄フロアらしいな」
「ならばラン様、この螺旋階段の中央を飛び降りて一気に最下層まで行った方が早いのでは?」
「いやピズマ、さすがに死ぬだろ」
「いえいえ、私がいますし」
「何その自信」
どうやら自分さえいればどんなに高いところから飛び降りようと死なないと主張するらしいが。
まぁピズマの回復神法の凄さは龍皇フロガとやったときに体感してるからな、信じてもいいだろう。
俺とアグノスとピズマは、階段の縁に立つ。
「いくぞ、せーのっ」
飛んだ。宙を浮く。自由落下の感覚が全身を襲う中、頭に巡ったのは、先ほど見た案内図の、最下層の説明欄に書かれていた文字──
──『最下層:Xエリア/全権管理者:暁隊隊長 桜坂紀伊』
今話も、読みにきていただき、感謝の極みです。
もうすぐ第3章……にいくはずですが、第3章も、第2章とは一転、大きな変化が訪れます。
その辺が、僕がこの作品を投稿する前から書きたかったところなのですが……。




