表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライトノベルじゃあるまいし  作者: ASK
第ニ章【ゴブリン・パトリダ】
56/105

第29話 アマルティア救出作戦開始

こんにちは!お久しぶりです!

無事、2学期中間考査も終わり、やっと執筆ができるようになりました!

待っていてくださった方がいたとは思えませんが、「お、これ更新されてんじゃん」とだけ思っていただけたなら光栄の極みです。

来週も日曜日に更新予定です!


 立ち尽くす。


 脳内を巡るのは思い出の数々。それは、俺が過ごした濃密な11日間。


 目が覚めたのは美少女のスカートの中。入学式に遅れそうで、その子をおんぶして走った。


 昼休みに声をかけてきたのは幼馴染みだと自称する金髪の女の子。3人で笑いながら帰った。


 ずっと空いていた隣の席。やっと出会えたその席の子は、スパッツに丸メガネにボクっ娘という、俺の好きな要素を詰め込んだ女の子。


 1日ずつデートした。アニメイト……じゃなくて、アニメイツにいったり、遊園地に行ったり。家に泊まったり。


 妹の話は……もういいだろう。瑞樹みずきは妹ではなかったんだし。


 ともかく。


 あの世界は。俺が夢にまでみた、ライトノベルのようなあの世界は、20歳無職童貞クズニートの千葉ちばらんにとっては、言葉通り、異世界だった。


 そんな異世界での11日間。そして、一度は本当の現実世界に戻ったものの、再び訪れた異世界。しかしそこは前回のラブコメに満ちた天国などでは決してなく、生きていく上で、パソコンいじって寝てればいいような現実世界とはかけ離れた修羅の道。


 俺は勝手に、こう考えていた。


 『理窟は置いておいて、俺は2つの、“別の”異世界に飛ばされた。1つ目の世界では11日間だったけど、2つ目の世界ではもう何年も暮らしてる』


 そう。“別々の2つの世界”だと認識していた。


 しかし、俺がさっき目にしたのは。あのアグノスと互角に戦っていたあの金髪の剣士は。


 確かに、紛れもない、紀伊きいちゃんだったじゃないか。


 歩くのが少し遅くて、いつも元気で、よく笑って。背は低いけど、決して背伸びはしない子で。等身大の彼女の行動がどれだけあの11日間を充実させてくれただろう。


 そんな紀伊ちゃんは、あの世界での俺の幼馴染みで、紗江さえ傘音かさねの友達で。


 決して人間離れした剣士ではなかったはずだ。


 なのに、なのに。一体どうして……。



 アマルティアが拐われたことや、それ故にパトリダに危機が、というか龍皇りゅうおう誕生だから、全世界を揺るがす事態が起ころうとしているわけだが。


 それすらも思考の波に置き去りにされてしまうほどに、俺の混乱は止めどなくゆらり流れて回るのだった。


 ボーッと、やっとの事で立つ俺の肩に、手が置かれる。



「ひゃはは。よぉ、どうした、ラン」



 無論、レプトスだ。それは予想できていたが、しかし。その次に鼓膜を叩いた言葉に、全身がゾワりと震えた。



「どうした、“見覚えのあるやつ”でも、いたのか?ひゃはは」



 レプトスは、こいつは、一体。



「レプトス……お前、何を……」



 こいつは一体何者なんだ。何を知ってるんだ。



「何、怖い顔して睨んでんだよ。質問しただけだろ、知り合いでもいたか?ってな。ひゃはは」


「……お前が何をどこまで知ってるかを知らねぇから、話す必要があるのか否かは判断しかねるけど、一応言う。あの金髪の剣士に、見覚えがある。俺は彼女に会ったことがある……ような気がする」


「そうか、ひゃはは」



 自分から聞いておいて大した反応もせず、ニヤニヤしながらレプトスは。



「……で、どうしてぇんだ?」



 試すようにそう言った。



「え?」


「だから、お前はどうしてぇんだ。アマルティアが拐われて、龍と、それに伴って龍皇も誕生するかもって時に、お前はそれすら霞むほど、さっきの剣士に思い入れがあんだろ?……で、どうしてぇんだ?」


「俺が……どうしたいか……」


「お前が、お前だけが、決めることだぜ、ひゃはは」



 勝気な笑みを浮かべてレプトスは俺の答えを待つ。



「俺は……俺は……」



 拳を強く握り、喉元まで上がってきた言葉を、どうにかこうにか、吐き出そうとする。



「俺は……」



 俺は……?



「……ん?あれ?あれれ?これってもしかして」


「どうした、ラン、ひゃはは」



 レプトスは、それに気がついた俺の顔を見て一層ニヤニヤを強める。……ニヤニヤを強めるって何だよ。



「……これって、決められないやつじゃね?」


「ひゃはははっ」


「そりゃそうじゃん!アマルティアが拐われてるし!龍とかもやばいし!さっきの子もほっとけるわけないし!」



 意地悪く笑うレプトス。


 アマルティアやパトリダの危機にも関わらず、1人の剣士を見て、その事しか考えられなくなった俺を見たレプトスは、その2つは二者択一では到底決められないのだろうと判断し、しかしその上で“お前はどうしてぇんだ”とかカッコつけて聞いてきた。


 さも、「俺は〇〇を選ぶ!」と、クサイ台詞を言わせようとしたように見せかけて、結局は選ぼうにも選ぶ事ができない事実に気づく俺を見たかっただけなのだろう。


 俺で遊ぶなと何回言えばわかるんだこいつ。



「でも……紀伊ちゃんに会いに行かなきゃいけない気がするんだよなぁ」



 会ったら何かが、この世界の何かが変わる気がする。元の世界にもどる兆しもないこの世界に、異世界の干渉という可能性を感じさせる存在がいたんだ。状況に大きな変化があっても何らおかしくはない。


 が、しかし。



「まぁどっちにしろ、あの剣士がランにとってどんだけ大切なやつだったとしても、無理やりアマルティア救出のために動いてもらうけどな。ひゃはは」


「ならどっちかなんて聞くなよ!」



 まぁ、それでいいと思う。確かに、ゴブリンの俺とは違って、紀伊ちゃんはちゃんと人間の女の子だったし。……あれ?でも少し大人びていたような……。


 人間として元気にやってる紀伊ちゃんと、今まさに大ピンチのアマルティアだったら、迷う必要なんてなかったな。紀伊ちゃんにはまたいつか会えるさ、この世界にいれば。



「……わかったよ、じゃあ早速アマルティア救出作戦でも立てて、サクッと助けてきますかね」


「ひゃはは、そんな簡単に行くとは思えねぇが。とりあえずここにいる5人と、あそこにいるアグノスとイギア。合わせて7人でどうにかできるとは思えねぇな」


「そうか、じゃあ……そうだな、デクシア、アリステラ。一度パトリダに戻って、始祖じいとか、他の兵に、現場とか、ある程度の援軍が必要なことを伝えてきてくれないか?」


「……ランくん、その……」



 妹、アリステラの頭をナデナデしながら、デクシアは俯く。俺が不思議そうにしていると、横からピズマがそっと言った。



「ラン様、“絶対攻守”以外に、コインの双子が、パトリダで何と呼ばれているか、ご存知でしょう?」


「え?コインの双子が?……あ!」



 そうだった!



「“コインの双子は無愛想ぶあいそう”!」


「あまり大きな声で言わないでくれるかなランくん!」



 そうでした。彼らは基本無口で、双子間のみ、お喋りで仲良しなのでした。……いや、でも。



「自分で思い出しておいてあれだけど、デクシアは全然、無愛想なんかじゃないよな。アリステラはともかく」


「はは……いやぁ、アリステラが……」


「にぃと話していいのは私だけなの!」


「こう言ってるからさ、昔から。だから極力他の人とは話さないようにしてるんだ」



 頬をぽりぽりかきながらデクシアは照れながら言った。


 ……いや、いやいやいや。バカじゃないの?てかバカでしょ。はい、バカ認定おめでとう。



「お前バカだろ」


「バカだな、ひゃはは」


「まぁ、そうですね、バカ、でしょう」



 俺とレプトスもピズマもみんな口に出した。



「そこまで言う!?……でも、本当に話してほしくない時には、アリステラはすぐにめるんだけど、幹部のみんなと話している時は、黙っててくれるんだ」


「だって、始祖様に言われたんだもん、幹部同士のコミュニケーションもとらせてやらないとにぃに嫌われちゃうぞって」


「でもさ、デクシア、俺はまだ幹部じゃないんだけども?」



 俺は手をあげる。



「そこが不思議なんだよね、ランくんと、アマルティアくんに話しかける時は、なぜか許してくれるんだ」


「おいおい〜アリステラ〜!お前以外と俺のこと好きなんじゃね?」


「……」


「待て待て待て!俺に手をかざすな!“トリュボス”はやめて!粉々になっちゃう!」



 最強の攻撃神法をよもや仲間に使おうとするとは、恐ろしい女だ。



「ラン様、そういうことですので、パトリダへの連絡は、他の者にさせるべきでしょう」


「そうだなぁ、足の速さで言うならレプトスがダントツだけど、こっちの危機的状況をあのニヤケ顔で伝えきれるとは思えねぇしなぁ」


「ひゃはは、失礼だな、ラン。左脳潰すぞ」


「怖い怖い」



 どうしよう。俺が行くのもなぁ、俺主人公だし。たぶん。


 それが連絡係ってどうなのよ。……あれ?俺って本当に主人公?


 俺のこの世界での凄いところって、アルファのほこらっていう神秘的な場所で生まれた『自然性胎児』ってこと。そして、やたらと成長速度が速いところ。


 ……これぐらいしかないんだけど。


 それに比べてアマルティアは。


 父親は、創造神アルファ、加護神ベータと並べられるほどの能力、『生命いのち』をもった男。アルファ、ベータと続き、神とさえ言える能力ゆえに、ガンマと呼ばれた。


 その能力の影響を多大に受け生まれた彼は常人とは比べるのもおこがましいほどの、生命体としての優秀さをもってる。そんでもって、嘘が嫌いな正直な性格に、努力を怠らない真面目さ。そしてあの美貌。


 そこに加えて今度は、龍という最強の種族に選ばれ、世界最強の龍皇という称号さえ得られるかもしれないという展開。


 もしかしなくてもこの物語の主人公はアマルティアで、俺は普通に脇役なのかもしれない。


 も、もしかしたら!語り部がアマルティアの回があったのかも!俺が知らない間にアマルティア目線でアマルティア周辺の物語が進んでたのかも!!


 ……まさか、ね?読者様は僕のお話を読んでますよね。まさか。俺が龍皇と戦ってる時のアマルティアの様子なんて読者様は知りませんよね?



 “俺が主人公ではない説”の信憑性の高さに足が震え始めたころ、さっきまで少し遠くにいたアグノスとイギアねぇが、小走りでこっちに来た。



「少し話は聞こえてたんだけど、パトリダに色々伝えに行くの、私がやるわよ、時間もないわけだし、戦力は一ミリも削ぎたくないの。あなた達は取り急ぎアマルティアちゃん救出のために動いてちょうだい」



 紀伊ちゃんに逃げられてショボンとしているアグノスを引っ張りながらイギア姉は言った。



「わかった。じゃあそっちはイギア姉に頼むわ。アグノスもいつまでうなだれてんだ、これからの救出作戦の内容によっては、また紀伊ちゃんと戦えるかもしれないし、とりあえず切り替えようぜ」


「……そうだね、ランくん。でも、僕はまだ彼女に一度も勝ったことがなくて……さっきまんまと逃げられたのも悔しくて……」


「ガチで落ち込んでるじゃん、アグノス」



 うっかり俺が“紀伊ちゃん”、って名前で呼んじゃったミスにも気がつかないほど落ち込んでるなー。


 紀伊のことを知っているのか!?とか聞かれるかと思ったけど、バレなくてよかった。



「じゃあ、早速だけど、どうする?」



 俺はその場にあぐらをかき、みんなを見上げてそう言った。


 なんとなく、みんなも座って、作戦会議が始まった。


 まずデクシアが言った。



「そもそも、助けに行こうにも、アマルティアくんがどこにいるのかがわからないんじゃないか?まだ船の中で、海に浮かんでるかもしれないし、もう港に着いて、人間領の中かもしれないし」


「あー、そっか。やばいのは後者だな、人間領の広さから考えて、人1人探すのは困難だろうし」


「ひゃはは、そこは安心しろ、糸なら付けてある……完璧ってわけでもねぇけどな」



 全員が首をグルンッと回してレプトスを見る。驚いたとかじゃなくて、もう信じられないというか、またふざけてデタラメを言ってるようにも思えた。

 けど、それ以上に、レプトスならそれくらいのことをできたのだろう、とも心のどこかで納得してしまっていた。


 レプトスは得意げな表情で続けた。



「まぁそこまではいいんだが問題は居場所を突き止めてから、だぜ。ひゃはは。そうだな、まずは──」




❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎




 レプトスがとある作戦を提示して、悩みつつもそれを採用してから、1時間半……いや、2時間は経っただろうか。



 ──俺は今、人間領にいる。



「……なぁデクシア……これ本当に大丈夫か?」


「……僕だって不安だけど……もう後戻りできないだろうし、だって……」



 横切るのは人間。すれ違うのは人間。笑いあって酒を飲んでるのは人間。役所の役人に文句つけて怒鳴り散らかしてるのは人間。


 人間、人間、人間、人間、人間。


 見渡す限りの人間達。当たり前だ。ここは人間領の中心。名前は知らないが、大都市、と言ったところか。


 そんな場所を歩くのは、3人のゴブリン。俺と、コインの双子。


 レプトスは1人で行動してて、ピズマはアグノスと2人で散策してる。


 ゴブリンの姿のままだと、無論人間たちに見つかって、袋叩きにされる。だから、俺たちはレプトスから受け取った、全身を覆うローブと、仮面を顔につけて静かに歩いている。


 手袋もして、肌は一切見せないようにしている。幹部ゴブリンは皆、人間語を始祖じいに教わっているので、会話だけならバレる心配はない。


 しかし、体格があまりに人間離れしたピズマは、ローブを羽織っていても完全に怪物なので、今は散策と同時に、とある任務を任せている。



「なぁ、港の方で、ゴブリンが現れたらしいぜ、気持ちわりぃな」


「最弱種族のくせに、人間様の領地に入ろうなんざ、頭まで最弱かよ、はははっ」



 人間たちの会話が聞こえる。どうやらピズマは早速バレたらしい。だがこれも想定内だ。


 ピズマには、囮として動いてもらう。バレるまでの短い時間は、港の探索に使ってもらうが、バレてからは、少しでも多くの警察部隊や兵士たちを引きつけてもらう。領土内のど真ん中にいる俺たちが少しでも動きやすいように。


 まぁ、そんなに効果のある作戦でもないが、どうしても1人だけパトリダに置いていかれるのは嫌だとピズマが言ったので、苦肉の策としてピズマに囮の役職を与えたのだった。


 アグノスも一緒だし、あっちは大丈夫だろう。



「えっと、この石が光ったら、近くにアマルティアくんがいるんだっけ?」



 デクシアは、ピンポン玉サイズの青い石を見ながら言う。


 アリステラも、手のひらで石を転がしながら不思議そうに眺めている。


 俺も、ローブの内ポケットの中に手を突っ込み、石を触る。



「レプトス曰く、そうなんだけど、どんな風に光るのかもわからねぇし、何より近くにいるって言ったってどれくらい近いのかがわかんねぇ」


「それは、まぁ頑張るしかないだろうね」


 先ほど、出発前にレプトスに渡されたのは、アマルティアに反応して光を放つ石。なんでそんなもの持ってるのか小一時間問いただしたいけど、それどころじゃない。


 ──俺たちは、全身ローブに仮面という怪しすぎる姿なので、なるべく目立たないように静かに移動する。やがて大通りを抜けて、人が少なくなった辺りで立ち止まる。



「まずは、どこにいるか、だけど。いそうな場所を当たってみるのもいいかもね」


「でもよぉ、デクシア。いそうな場所ってお前わかるか?人間領くるの初めてなんだろ?」


「それをいったらランくんも初めて来たでしょ」


「そうだよなぁ、この際、町の人に聞いてみるのも1つの手かもな」



 枝で地面に絵を描くアリステラを放っておいて、俺たちは話を進める。


 人間と接触するのは危険性が高いのも承知の上だが、なんのヒントもなしに探すには時間がないようにも思う。



「……危ないとは思うけれど、そうだね、聞いた方が早いかもしれない。人間語はランくんの方が何故か流暢りゅうちょうだから、それはランくんに任せるよ」


「おう、いざとなったら守ってくれよ」



 たとえ人間領のど真ん中、大勢の人間たちに囲まれようと、俺たちが死ぬことは100パーセント無い。あり得ない。


 何故かと言えばそれはもちろん、デクシアがいるから。


 以前にも説明したが、デクシアの防御系神法“アスピダ”は、神気を無効化する。


 この世界の、生命体以外の物質のほぼ全ては、『存在』という加護を受けていて、それ故に必ず神気を纏っている。加護を授かったものは例外なく。


 それを無効化できるのだから、デクシアの神法は、敵の神法を消すだけではなく、敵の持つ武器や衣服、やろうと思えば、効果範囲内の物体を全て消し飛ばすことができる。


 それほど範囲は広くないが、その範囲内にいれば、人間領のど真ん中だろうと、どんな攻撃も受け付けないし、範囲内に入ってきた敵は全員が丸裸になる。


 “アスピダ”を使用してる最中は、デクシアは他の神法が使えないので、守りに徹することしかできないが、そこはもちろん、バーサーカーとも言うべき暴れん坊、アリステラがいる。


 危険度マックスの妹がいるのだから、まさに“絶対攻守”。付け入る隙がない。この2人がパトリダに不満を持って、ゴブリンの敵として戦うことになったら、本当に誰もとめられない。


 まぁおそらくレプトスならどうにかするのだろうが。


 と、まぁそんな2人がいるのだから、実際ビビることはない。


 そうは言っても見渡す限り敵しかいないなら、緊張するし、怖い。


 完全にビビりながら俺たちはもう少し人の少ない道に入る。


 人間領の中心から少しだけ離れたところで、早速1人の人間に話しかけた。


 屈強な男に話しかけるのは怖いので、女の人に話しかけた。



「……あのー、すみません、急に。少しお尋ねしたいことがあるんですけど」


「……あ、私ですか?はい、なんでしょう?」


「軍の本部といいますか…えーと、帰還した兵士たちがまず向かう場所いいますか……」



 女性は、布の様なものを顔に巻いて、鼻から下を隠している。家の外で掃除をしていたのだろう、手には清掃用具が握られている。ホコリを吸うのが嫌で、マスクとして布を巻いてるのかは知らないが、ミステリアスな感じがして最高に良い。


 聞きたいことがうまく言えない。


 アマルティアが拐われてることは、一般市民は知らないだろうし。かと言って軍の関係者に聞きに行くのはまずいだろうし。軍の本拠地みたいなところさえわかれば良いんだけど。



「軍の本部……うーん、普通は知ってると思うけど、田舎の方から来たのかな?まぁいいや、えっとですね。あそこに見える、高〜い時計塔があるでしょう?あの時計塔の隣の建物は、一応警察と軍が拠点としてる場所ですよ」


「そこには、一般人には入れない場所とか、あったりしますか?」


「それはもちろん、牢屋だったり色々ありますけど、どうやら“やばい”ものとかが運び込まれる場所もあるらしいですよ」



 おっと、いきなり有力情報ゲットだ。警察や軍の本部もわかったし、何より政府側が秘密裏にしているものが運び込まれる場所があるなら、眠らされたアマルティアもそこにいるだろう。


 簡単に入れるとは思えないが。



「わかりました。ありがとうございました本当に。助かりました」


「いえいえ〜」



 お礼を言って、俺たちは時計塔の方向に歩き出す。


 その時。先ほどの女性の家の中から聞こえた声に、俺は思わず立ち止まる。



瑞樹みずきちゃーん!外のお掃除終わったー?よかったらこっち手伝ってくれなーい?」


「あ、はーい!」



 俺は振り返る。先ほどの親切な女性は、小走りで家の中に入っていった。


今、確かに、瑞樹って呼ばれてたような──



「おいこらクソ野郎。ぼーっとしてないで早く行くぞ、時間がないんだから」



 俺の思考は、クソ女ことアリステラのローキックにより、中断された。


 どうにも嫌な予感がするが……とりあえず今は。


 俺たちは急いで時計塔の方へ向かった。もう振り返らなかった。


ありがとうございました。

ちなみに、みんなに配ったローブを、レプトスがどこから持って来たかと言うと、北の海岸にはレプトスが建てた小屋がありまして、そこから調達してきたわけです。

北の海岸以外にも、パトリダの至る所にレプトスの物置だったり秘密基地があります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ