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ライトノベルじゃあるまいし  作者: ASK
第ニ章【ゴブリン・パトリダ】
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第22話 2度の形成逆転

こんにちは。

あのですね、セブンイレブンに売ってる、100円くらいのアイスがあるんですけど、リンゴ味とマスカット味がありまして。

それがですね、果肉が入ってるんですよ、アイスの中に。100円なのに美味しくてですね、オススメです。………はい。本編どうぞ。


 陽が少しずつ高くなっていく。本格的に朝が訪れる。


 穏やかな朝日に照らされた、ゴブリンの故郷、パトリダ。その西にある程度進んだ荒野に、もう1つの太陽が──。



 ──駆ける。転がる。地を蹴り、目に沁みる汗をぬぐい、ただ駆ける。


 絶望的状況。頼りにしていたコインの双子を盾にして、なんとか龍皇りゅうおうの一撃を回避した俺だったが、それで終わり、とはならない。


 次々と襲い来る炎の塊。生物として本能的に、火に対する恐怖心がはたらく。


 肌をかすめる灼熱に、いちいち泣きそうになる。


 暇つぶし、とばかりに、遊ぶように攻撃してくる龍皇。俺は、ヒリヒリ、ズキズキと痛む身体を必死に動かして、踊らされる。


 火に耐性のあったマントは、先ほど一瞬で燃え尽くされた。こちらに防御という選択肢はなく、ただ回避と攻撃を繰り返すしか、ここで生き残る道はない。


 しかし、その回避も限界がきているし、何よりこちらの攻撃なんて一度も与えられてない。そんな余裕があるなら、もっと上手に炎を避けてる。


 恐怖心と、反射的な危機察知で、奇跡的に生き延びてはいるが、この命も時間の問題だろう。


 援軍さえ来てくれれば、なんて考えたが、この西の荒野に出動されたあの数のゴブリン兵が、皆殺しにされたなんて考えるやつはいないだろう。


 そうすると、援軍をこの荒野に向かわせるなんてこと、ありえない。必要ないと考えるだろう。


 実際は援軍というか、最高戦力をごっそり持ってきてもらいたいくらいだけれど。マジで死ぬ。


 乾ききった喉で荒々しく呼吸する俺に、龍皇はニヤニヤしながら話しかける。



「この俺は、お前はもう少し骨のある蟻んこだと思ってたんだがなぁ……仲間を身代わりにしてまで生き延びるくらいだしな」


「……身代わりだなんて人聞きの悪いこと言うなよジジイ。こちとら守ってもらったのさ」



 肩で息をしながら、顎を伝う汗を手の甲で拭った。



「この俺が思うに、お前を守ろうとしてたようではなかったみたいだがな」


「どちらにせよ、ただあの2人を盾にしたわけじゃねぇよ。炎が目前に迫った時、デクシアが防御系神法を小さな声で唱えてたのが聞こえたから、それにあやかろうとしただけさ」



 俺は真実を話す。元々、デクシアがあの“唯一詠唱を必要とする神法”を使うとは予想していたわけではなかった。

 その上であの2人の後ろに隠れたのだから、俺の意地汚さというか、最低な人間性は否定できないが、しかし。


 あの瞬間、確かにデクシアは、『アスピダ』、と。口にした。


 使用したい神法名のみを詠唱とした、事実上最強の防御系神法。全ての神法を無効化し、あらゆる攻撃を物ともしない光の壁。


 わかりづらかったけれど、あの時確かにその光が見えた。アスピダは発動していた。


 それなのに。



「デクシアが、どんな神法も攻撃も無効化する神法を唱えてたのを見たから安心したってのに、どこかのクソジジイが、神法もろとも燃やしやがったからな」


「この俺のやることを止められるわけがないだろうが。そもそも、あの神法は、『神気しんきを孕んだ全ての事象を無効化する』ものだからな。俺には関係ない」


「何難しいこと言ってんだお前」


「この俺が思うに、さすがは蟻んこだな。脳まで小せぇのか」



 皮肉の浴びせ合いはともかく。気になったことを聞く。



「で、なんだよさっきの。神気を孕んだ全ての事象を無効化って」


「今からこの荒野の土になるお前ごときにこの俺が直々に話すのも贅沢が過ぎるが、まぁいい。時間だけはあるからな、暇なんだ」


「早くしろよ」


「殺すぞおい。………まぁいい。つまりは、加護神ベータによって、15歳になれば加護を受けられ、それだけでなく、存在する数多の物が、大気を埋め尽くす神気を帯びているこの世界で、神気を無効化するというのは、世界にかかったベータの加護を無効化するということだ」


「加護を受けた生命体は、例外なく神気を体内に宿すって言うもんな。それは知ってたけど、大気中にも神気ってあんのか?」


「ああ。この俺とは違う、お前ら下等生物共が吸ってる酸素にも微量の神気が含まれてるくらいだ。それもそうだが、面白いのはそれじゃなくてな。何と生意気なことに、この世に存在する全ての物は、『存在』という加護を受けているらしい」


「『存在』という、加護……」


「そうだ。お前が腰に携えてるそのナイフも、存在していられるのは、加護神ベータが、全ての物体に存在させる加護を与えているからなんだ」


「じゃあ、この世界にあるものは、本当の意味で例外なく、なんらかの加護を受けている……ってことなのか?」


「この俺が言うことだ、嘘はない。そんで、そこで考えてみろよ。あのゴブリンの小僧が使う神法の効果を」


「『アスピダ』の効果……」



 あれは確か、『神気の孕んだ全ての事象を無効化する』って、さっきこいつが言ってたよな。


 大気中にまで漂う神気を動力源として働く『加護』。それをこの世の全ての物体が受けている。


 それなら……。



「そうか、つまり、神気で作り上げられた神法はもちろん、『存在』の加護を受けて神気を孕んだ“武器”などの攻撃は、それら神気を無効化するアスピダには、絶対に敵わないって仕組みか!」


「この俺がわざわざ説明してやったんだ。正解して当たり前だ。そんなわけで、あの神法は、もはやこの世界において唯一、“神に抗う”力だということだな」



 すげぇ……。めちゃめちゃ硬い光の壁なのかな、とか思ってたけど、そうじゃなくて、必然的に帯びている神気ごと無効化してたのか。そりゃ神法も消えるし敵の攻撃も効くはずがない。



「……つーか、そんなにすげぇ防御系神法なら、何故あの2人は丸焦げになったんだクソジジイ」


「そろそろ口を慎めよ蟻んこ。というか、そんなこの世界にうってつけの神法で、この俺を止められるわけがないだろうが」


「意味わかんねー。説明下手かよ」


「よし、殺す」


「おわぁあぁああっ!!」



 地面のいたるところから炎が噴き出す。俺の身長を超えるほどの高さまで噴き出した炎たちが、ユラユラと揺れる中、俺は熱された肌を抑えながら、叫び散らす。



「あっぶねぇな!おい!殺す気か!」


「この俺に対する狼藉には、死という代償しか存在しないからな」


「バカじゃねぇのかまじでよぉっ!」



 今度は隕石のごとく、空から豪速で落ちてくる炎の塊と足元からも噴き出す炎を避けつつ泣きそうなりながら叫ぶ。


 こいつ、急に怒り出すのやめてほしいんだけど。ジジイは短気だな、まったく。


 ちょっとした命乞いついでに、質問を再び投げかける。



「おい、龍皇様!ちょっと待って!ごめんなさい!謝るから!ちょっとだけ待って!」


「……何だ、急に手のひらを返して。現金なやつだな、蟻んこ」



 炎の雨と噴火が止む。俺は作り笑顔を満開に咲かせて、接待作戦にでる。



「いやぁ、龍皇様。どうせわたくし、ここで死ぬのなら、人生最後のわがままとして、少し質問に答えてはいただけないでしょうか?」


「早く言え蟻んこ。この俺が最弱種ごときにここまで寛容なのは珍しいんだぞ」


「この世に存在する物が全て神気なるものに関わっていて、それらを例外なく無効化するのがアスピダという防御系神法なら、どうして龍皇様の炎を防ぐことはできなかったのですか?」


「そんなの言うまでもないだろうが。この俺が龍皇だからだ」



 えー……。何それ。適当かよ。いや、その説明で俺が本当に納得すると思ってるならやっぱりこのジジイはかなりのバカだぞ。



「まぁ正確には、加護神ベータではなく、“龍の加護”を受けているから、存在することにも、生きるのことにも、神気を必要としなくなったってだけだがな」



 いや、先にそれ言えよ。何カッコつけてんだクソジジイ。



「だから、俺の炎は、神法みてぇな貧弱なもんじゃなくて、龍の加護によって生み出されたものだから、神気に反応して無効化する神法とか、無いに等しいってわけだ」


「へ、へぇー……。すごいっすねぇ……」


「もう、“いい”か?」



 いいか?というのは、無論、殺していいか?ということである。


 ……し、死ぬー!!



「何だ、この俺に殺されるのが怖く無いのか?案外落ち着いてるじゃねぇか」



 落ち着いてるのではなく、体が動かないだけです、はい。


 目の前に立つこのジジイは、骨も残さず俺を殺す力を持っている。逃れるすべは無い。


 そう思うと、なんか、あれ?これ、本当に死ぬの?みたいな気持ちになってくる。死ぬという確信と、そんな事実を受け止められない動揺がぶつかり合って、結果的に思考停止。



「この俺が思うに、話し相手としてはそんなに悪くなかったぜ、蟻んこ。俺に殺されることを光栄に思え」



 そう言いながら龍皇は右手を空に掲げて、指を鳴らした。


 刹那、視界を覆う赤。足下も含め、360度炎に囲まれ、そして少しずつ炎が迫ってくる。


 足はすでに焼け始めて、目前の炎が遂に鼻先に触れる、その瞬間。



「──ひゃはは」



 聞き慣れた笑い声と入れ替わるように、俺を包んでいた炎が霧散する。


 急に冷えた温度に、不快感を覚えながら、生を諦めていた体に力を再び注ぎ込む。


 ぼやけた視界がはっきりと澄み、そして見えたのは。



「俺があげたマント無くしたからって、炎の服を着るとは、中々面白ぇな、ラン。ひゃはは」



 いつも通り、ダボダボの服を着崩した、やる気なさげな“死神”がポケットに手を入れながら歩いてきた光景。


 眉をひそめて、その男を見る龍皇は、少し考えるような仕草の後、口角を上げた。



「少しはマシな蟻んこが出てきたじゃねぇか」


「誰が蟻んこだ、誰が。ひゃはは」


「れ、レプトス!?」



 レプトスが来てくれた。俺が知る最も強い味方。


 安心した俺は、すぐさま走り出し、レプトスの後ろに隠れた。



「へ!クソジジイ!レプトスが来たからにはお前も終わりだぜ!」



 レプトスがいるので、強気に言ってみる。虎の威を借る狐。



「……レプトス?その名前、どこかで……」


「ひゃはは。それにしても派手にやられたなぁ、ラン。服もボロボロ火傷だらけの満身創痍。修行の成果は出てないように見えるぜぇ?ひゃはは」


「俺より、あの双子の方が重体だぜ。レプトス」



 黒く焦げた土の上に倒れる2人を指差しながら言う。



「どうせお前があの2人を盾にしたりしたんだろ、ひゃはは」


「何でわかったんだ!?」


「非常時に“そういう”行動がとれるように、お前を育てたからな、修行の成果も少しは出たみたいだ、ひゃはは」



 えー…。あれはもう俺の性根の悪さが露呈したのかと思ってたけど、それだけではなかったのか。

 俺とレプトスが緊張感もなく話していると、その間ずっと考え込んでいた龍皇ジジイが、やっと顔を上げた。



「……そうか、なるほどな……。そりゃあお前、ただの蟻んこなわけがねぇよな。そうかそうか」


「何ぶつぶつ言ってんだクソジジイ!200年も生きてればさすがに頭ボケたか?」


「生意気なクソ蟻んこは置いといて……おい、お前、レプトスとか言ったか」



 一歩前に出た龍皇を、レプトスはいつになくヘラヘラせずに見上げる。何か探っているというか、見極めているように。



「この俺が思うに、少々面倒くさいな。都市伝説だと思っていたんだが。……お前、その名前と見た目、やはり『パノプティコン』の──」



 ──龍皇が言いかけたその時、俺の視界からレプトスが消える。


 そして先ほどまで言葉を言いかけていた龍皇の上半身が消える。


 瞬きをする。まぶたが上がると、レプトスがいた。 顔は見えない。ただ、龍皇が何かレプトスについて言おうとした瞬間、レプトスが龍皇を殺したことは、状況的に理解した。



「……れ、レプトス?」



 反応はない。しかし、荒野に静寂が鎮座したのは、ほんの一瞬だけだった。



「おいおい、いきなり酷いじゃねぇか、レプトス」


「……チッ」



 先ほどまであった龍皇の下半身は炎に変わって、そして消えた。


 同時に俺の後ろに、死んだはずの龍皇が仁王立ちしている。その声に驚いて、俺はまたまたレプトスの後ろに隠れた。


 明らかにイラついてるレプトス。龍皇も怖いけど、イラついてるレプトスを見るのは初めてなので、レプトスも怖い。



「やはりそうか。俺の言葉に反応したってことは、そういうことだよな、レプトス」


「龍に呪われた人間ごときが俺の名を口にすんな。殺すぞ」


「この俺に生意気言ってこの世に形をとどめてるやつは1人もいねぇことを思い知らせてやろうか……?」



 睨み合う2人を余所に、わけが分からなくなる俺。 とりあえずレプトスの後ろに隠れてはいるものの、この2人の戦いの間近にいると余波で死にそうな気がするんだけどどうしましょう。


 と、いう俺の心配はレプトスの言葉で解決する。



「ラン、お前はこっからある程度離れた所にいろ。……ひゃはは。なんだその顔。早く行け、こっからは俺だけでいい」


「……わかった。こんな老いぼれに負けんなよ!」



 俺は走り出す。「当たり前だろ」という声が聞こえた。


 俺がある程度の距離をとった瞬間。


 大量の火柱が立ち昇る。


 凄まじい熱気に、汗を流しながら、その様子を見る。どうやらその火柱は、レプトスを狙った攻撃ではないらしい。


 龍皇を囲うように配置された火柱が、それぞれ形を作り出す。やがてそれらは人の形になり、遂には龍皇そっくりの姿に変わった。


 先ほどレプトスに上半身を消し飛ばされた龍皇が、死ななかった理由は、身代わりを作り出せるから、ということか。


 しかし、その身代わりと戦って、全く敵わなかった俺からすれば、あの量の身代わりと、そして本体がいれば、勝ち目は無いに等しいのでは、と思ってしまう。


 ──が、しかし。そんな常識的な考えは、あの男に限って通用しない。


 レプトスは相も変わらず、ポケットに手を突っ込んだまま、突っ立っている。そこに襲いかかる炎でできた龍皇のレプリカ達。


 しかし、レプトスにある程度接近すると、それら全てが、炎に戻り、そして消えてしまう。


 まるで、デクシアが使っていた、アスピダという防御系神法を纏っているかのように。しかしあの神法は龍皇の炎を防げないし、何よりレプトスは盗賊なので神法は使えない。


 一体どういうことかと驚いているのは、俺だけでなく、龍皇もそうだ。珍しく余裕のない表情になってきた。


 しかし、龍皇もバカじゃない。その単純な攻撃をやめて、すぐに切り替える。


 龍皇のレプリカ達が全て消えて、残った本体が指を鳴らす。瞬間、地面に亀裂が走り、そこから大きな腕の形をした炎が姿を表す。


 計4本現れた巨大な腕は、その大きさからは想像し得ない俊敏さと柔軟さで、四方八方からレプトスを襲う。


 ポケットから手を出したレプトスは、“素手”でその炎の腕を薙ぎはらう。


 火傷の心配をしているのは俺だけのようで、レプトスは蹴りも加えて、次々と地面の亀裂から現れる炎の腕を一掃していく。


 ──あの龍皇を、物ともしていない。


 想像をはるかに超えた頼もしさに、目をキラキラさせていると、次の瞬間。



「ぐぉぁっ……!」



 という苦鳴。攻撃を仕掛けるたびに、指を鳴らしていた、龍皇の腕が、宙を舞う。


 レプトスはナイフすら取り出していない。終始素手で、炎の大群を制圧し、レプリカではない本体の腕をも奪い取った。


 噴き出す血を見て、龍皇は笑い出す。



「おいおいおいぃ……なんてデタラメ具合だよ、こりゃあ……!この俺は、龍皇だぞ……!?」



 止血の代わりだろうか、龍皇は傷口から炎の腕を生やす。


 レプトスは、宙を舞う龍皇の腕をキャッチして、それで遊んでいる。


 今さっきまで、死を目前にして、生を諦めかけた俺だったが、今は憧れの男があまりにも遠くて、悔しい気持ちでいっぱいだった。


 あれは修行とか加護とかのレベルじゃない。レプトスは、そんなこの世界に存在するものとは、別種の、異色の力を持っている。

 それが何かは想像もつかないが、それはおそらく、一生かかっても、俺たち普通のゴブリンには、到達できないものだろう。


 このまま戦えば、レプトスが勝つのは火を見るよりも明らかだ。俺はその瞬間を。伝説が死す瞬間をこの目に収めようと、唾を飲み込んで目を見開いた。


 ──その時。



「──ラン様っ!?」



 背後から聞こえた驚愕の声に、俺は肩をビクリとさせる。


 聞き慣れたその声に振り向くと、そこには全身を鎧に包み、背中に大剣を携えた、パトリダ最強の『天使』の加護を受けたホブゴブリン。ピズマがいた。


 ピズマは、俺に何かを言おうとしたが、視界の端に捉えた、コインの双子に、手をかざし、そしてすぐに俺に向き直った。


 俺は横目に双子を見ると、火傷の1つもない2人が、立ち上がりはじめていて、ピズマの無詠唱の即時回復神法の威力を改めて感じた。


 龍皇を圧倒するレプトスに、パトリダ最強の天使ピズマ、そして“絶対攻守”のコインの双子。


 負ける要素をなくした俺は、嬉々としてレプトスと龍皇の方を振り返る。


 すると。



「ぎゃあぁああっ……助けてぇ……!」



 とか半笑いで叫びながら、レプトスが両手を挙げて逃げてきた。



「え、え?レプトス?どうしたっ!?」


「ちょっとこっちこい。話がある。………ピズマ!あいつの相手しといて!俺じゃ勝てねぇ!ひゃはは!」



 そう言いながら俺を引っ張っていくレプトス。俺じゃ勝てないから、逃げてきて、ちょうど到着したピズマに代わってもらった、かのように見えるが、今のレプトスの顔は、よく知っている。


 イタズラをしている時の顔だ。何を考えてやがる。


 レプトスは、しゃがんで、小さな声で俺に言う。



「ひゃはは。いやぁ、困った困った。あと10秒くらいピズマが遅く来てくれたらなぁ……ひゃはは」


「どういうつもりだ、レプトス。ふざけてる場合かよ」


「ひゃはは。いやぁ、特殊な事情があってよ、俺が龍皇を殺せるくらい強いってことは、ピズマや、あの双子に見られちゃあ、いけねぇんだ」


「え?何、強いの隠してんの?」


「色々と事情があるんだよ。ひゃはは、こりゃあ、俺はもう本気出せなくなっちまったなぁ」


「……それで、勝てるのか、龍皇には」



 レプトスはおもむろに立ち上がり、ポケットに手をいれて、俺を見下ろしつつ。



「……来世でまた会おう、ひゃはは」



 俺は全力でレプトスのすねを蹴ったが避けられた。


本日も読みに来てくださり、本当にありがとうございます。


今更ですが、第1章のラブコメ感がサッパリなくなり、そのせいで読む気をなくしてしまう読者様もいたかもしれませんが、もう少しこの雰囲気が続きますです……。


また来てください( ´ ▽ ` )ノ

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