第23話 なんだかんだ話を聞いてくれる
おはこんちにばんわ。
(※読まなくていいです)
僕は潔癖症ではないのですが、ポテトチップスはお箸で食べる派です。スマホの画面が汚れるのが嫌というより、指が汚れて洗うのが面倒臭いのです。僕のこの行動は、家族や友達に、潔癖すぎ、と言われるのですが、皆さんはどうなのでしょう?
遮蔽物のない荒野には、様々な方向から風が吹き込んでくる。砂塵が舞うという致命的な欠点を除けば、日差しが強くとも常に涼しい、とてもいい場所だ。
青い空に白い雲。髪を揺らす心地よい風に暖かな陽気。それがいつものこの荒野の姿。
「──吹き飛べ蟻んこぉ!!」
……ああ。今日も良い天気だと言うのに。
「コインの妹っ!!」
「にぃ以外が私に話しかけるな!──“トリュボス”!」
先ほど夜も明けて、空で燦々と輝く太陽はあんなにも美しいのに。
「ひゃははっ!効いてねぇじゃねぇかよ!ひゃははははっ!」
「あんまり僕の妹をいじめないでくれるかい!?」
……何だかなぁ。
「おいおい何だよ蟻んこ共!数が増えりゃまだマシになるかと思えば、レプトスは急に弱くなるわ、口の悪いガキはボーッとしてやがるわで、つまらねぇにもほどがあんぞ!」
「ラン様!いつまでそこで突っ立っているのですか!」
──遮蔽物のない筈の荒野は、“絶対攻守”のコインの双子の妹、アリステラ・コインによる、超攻撃系神法“トリュボス”によって、地面がガタガタに崩れていた。
遠くに見える山々の斜面を滑って吹き込んでくる心地よい筈の風は、200歳を超えるのにバカみたいに元気な最強ジジイの生み出す炎によって、灼熱の熱風に変わっていた。
ファンタジー世界らしく、幻想的な光景だったはずの荒野は、黒く焦げた土と、舞い上がる火の粉に覆われた、ただの地獄絵図に成り果てましたとさ。
「めでたしめでた熱ぅっ!!!」
「ひゃははは!ラン、だせぇ!ひゃははっ!」
右手を思いっきり焼かれた。絶賛現実逃避中だった俺にはあまりに衝撃が強すぎる。熱すぎて何か逆に冷たかったくらいだ。
皮膚の爛れた右腕を見て泣きそうになっていると、瞬く間にその傷が完治する。淡い光の粒が俺の腕から離れ、やがて消えていった。
ピズマの、無詠唱の即時回復神法。効果は絶大だ。
むしろ、今この戦いが続いているのは、負傷者が出るたびにピズマがすぐ治してくれているからだ。まるで時間を巻き戻すかのように傷が治るその効果によって、俺たちの命は繋がれている。
大剣を片手に、龍皇の正面に立つのは屈強なホブゴブリン、ピズマ。
その両サイドに、手をかざしながら立つのは、それぞれ“絶対攻守”のデクシアと、アリステラ。
そして、フラフラしながらも、基本的には龍皇の背後にいるのが、レプトス。
ついでに、少し離れたところで雲を見ながら現実逃避しているのが俺。
「ラン様!いい加減にしてください!状況がわかっているのですか!?」
「せやな。大変やな」
「ラン様!?」
本当だったら、もうすでにレプトスがあのクソジジイなんぞ瞬殺していたはずなのに。レプトス曰く、レプトスが龍皇を倒せる程強いという事実を、とある事情でピズマやコインの双子に知られてはならないらしい。
そのせいで、ついさっきまで龍皇を追い込んでいた状況も、綺麗な形勢逆転。数が増えたのはこっちなのに、圧倒的な劣勢に陥った。
レプトスの強さに安心しきっていた俺からすれば、この展開は最悪どころの話ではなく、もう現実逃避しながら空を流れる雲を見ているしかできなくなっていた。
「よぉ、マヌケのランの、本領発揮だな。ひゃはは」
いつの間に横にいたレプトスが話しかけてくる。視界の端で繰り広げられる壮絶な殺し合いを意図的に無視して、気の抜けた返事をする。
「だから何だよ」
「ひゃはは。いやぁ、そうだな、よし。こうしよう。お前が一撃でもあの龍皇に与えられたら、“龍皇を倒した”という名誉をやろう」
「……は?」
レプトスは相変わらずのニヤけ顔を絶やさずにそう言った。龍皇を倒した名誉。言葉そのものの意味はわかるが、その意図がわかりかねる。
表面上の意味だけで捉えれば、俺がこの戦いに参加するなら、その代わりに名誉をあげる、ということ。……はい、意味がわからない。
「マヌケの最終形態、みてぇな顔だな。ひゃはは」
「……つまり、俺なら、一撃でも与えればあいつを倒せるってことか?」
「なわけねぇだろ、ひゃはは」
期待させんなよ!俺には秘めたるパワーがあって、つまるところこの場でやつを倒しうるのは俺だけとか、そんなロマンと夢に溢れかえった展開を期待せざるを得ない言い方をするんじゃない!馬鹿たれ!
ってことは、そんな栄誉は、欲しくたって手に入らないじゃないか。そんな、掴み取ることさえできない代償のために、俺がこの殺し合いに参加するのは、気が進まないなんて話じゃない。嫌だ。単純に嫌だ。
「ひゃはは。つーか、そろそろピズマも余裕が無くなってきてるからよ、早いとこ決めろよ。やるか?やらねぇか?」
「……何をだよ」
「だから、龍皇を倒しますか?倒しませんか?っつってんだ。ひゃはは」
……倒すか否かの以前に、倒せるか否かという疑問を投げかけたいのだけれど。しかもその疑問に関しては目に見える回答を誰もが察していると思うのだけれど。
今こうしてレプトスと、時折飛んでくる炎を避けつつ話している時間にも、ピズマやコインの双子は、何度も命を落としかけてまで、戦っている。その状況を鑑みれば、決断は早いに越したことはない。しかしながら。
「だから、そんなことできたら今頃現実逃避なんかしてねぇってば」
「ひゃはは、馬鹿だな。ラン、お前見たろ?俺があいつを倒せるだけの実力を持ってるところ」
「確かに見たけど、そのお前が本気を出せないなら話にならねぇよ」
「いや、本気を出すさ。一瞬だけな。だから龍皇は俺が殺す。でも、表面上は、“お前に殺してもらう”ぜ、ひゃはは」
レプトスが龍皇を殺す、しかし表面上は俺が龍皇を殺す。さっぱりでござる。
え、何、“表面上は”ってことは俺が龍皇を殺すという事実が残るということ。しかしながら実際に手を下すのはレプトス。………そんなの無理じゃないか?
「いやいや、レプトス。お前の冗談はたまに意味不明なことがあるけど、今回のはとびきり意味不明過ぎて、むしろ笑えてきたぞ」
「ひゃはは、何言ってんだお前。まぁいい。すげぇ簡単に言うと、お前が龍皇に一撃与える瞬間に、俺が離れたところから龍皇を殺す。その光景を見たピズマとコインの双子は、あたかもお前が龍皇を殺した、というように見える。たったこれだけの簡単な話だ。ひゃはは」
最初からそう言えよ!“龍皇を倒した名誉をやろう”なんて言うからごっちゃになるんだよ!こいつ戦場でもやっぱりレプトスのままだな!
「つーか、それならピズマやコインの妹の攻撃の時にでもやればよかったじゃねぇか」
「ひゃはは、馬鹿もここまでくると感動モノだな。殺した手応えもないのに龍皇が死んだら、どうしたって怪しいと思うだろ」
「そうでしたすいません」
至極単純な説明に、今作戦の趣旨を理解した俺は、劣勢の戦況を変えるべく早速走り出した。
「1つ言っておくぜ、一撃でも与えればとは言ったが、ナイフが掠っただけだったり、明らさまに効いてなさそうな一撃だったら、意味ないからな。本当に殺したように見える一撃をかませよ、ひゃはは」
並列に走りながらレプトスはそう言って、途端に姿を消した。音もなく消え去った師匠を見習い、俺も最近上達してきた“音消し”を駆使して、気配を消しつつ龍皇に近づく。
今も、龍皇は巨大な炎でピズマたちを襲っている。
炎の腕がピズマに向かって飛んでいく。ありえない速さで移動するその炎の腕を、ピズマは大剣で一刀両断。しかし体の所々に火傷を負う。
この様子を見る限り、すぐに直せるとはいえ、龍皇の攻撃を完全に防ぐ手立ては、今のところ、コインの双子が使う水の神法のみ、か。
しかも、最上級の水系神法を、全力で使わないと防げないのだから、便利な盾にはなり得ない。
絵に描いたような劣勢。未だに龍皇が負ったダメージは、レプトスに奪われた片腕のみ。しかしそこも、傷口から生えた炎の腕によって、相手のハンデでは無くなっている。
やはり、無尽蔵に生み出される炎の威力はあまりに強い。近づくのでさえ容易ではないというのに、遠距離でも構わず攻撃をしてくるのだから、笑えない。
俺は焦りを足の速さに変えて、殺し合いの渦中に飛び込む。
「よぉ、やっと起きたか、蟻んこ」
「もうバレた!?」
「ラン様!?」
龍皇の真後ろに立とうと、近づいた瞬間にバレた。やっぱり、炎を司っているだけがこの男の強さじゃない。単純に、炎などなくとも強い敵なんだ。
予想外の展開に若干戸惑いつつも、レプトスの教え通り、自己防衛を最優先した立ち回りに切り替え、一旦距離を取る。
驚きを隠せない顔のピズマが、話しかけてくる。
「ら、ラン様、何故……?」
「ピズマだってさっき、“いつまでそこで突っ立ってるんだ”って言ってたじゃんかよ」
「それは、早くお逃げくださいという意味でして!決してその身を危険に晒してでもお助け願ったわけでは!」
「うるせぇ、カッコつけさせろ馬鹿ピズマ」
俺は地面を蹴り飛ばす。初速の速さは、レプトスには圧倒的に劣るものの、常人には目に捉えるのも難しいほどの速さだ。これに関しては自信がある。
頬を撫で、服を揺らす風を、腰に付けたナイフケースから取り出した、亜水晶石のナイフで切り裂きながら、最速を維持しつつ一気に距離を詰める。
少しだけ眉を上げた龍皇が、指を鳴らす。
崩れた大地の隙間から噴き出した炎が、俺の背中を焼く。熱いとかそんなレベルじゃない。背中の皮を引きちぎられるような痛みが背中を襲う。直後、完治。
どうせピズマはすぐに直してくれる、という浅はかな確信をもとに、さらに無謀に攻め入る。
側面から迫る炎は、次々と水に包まれ消えていく。コインの双子の水系神法。まぁこういう防御系に関しては、兄デクシアの神法なんだけれど。
仲間の恩恵を利用し、ついに龍皇の懐にまで接近。正面に迫った俺に、ニヤリと笑う龍皇。
俺は逆手に握ったナイフを、龍皇の喉元に向かって、思い切り振り上げる。龍皇は一歩下がり、刃を避ける。
すぐに地面を蹴り、前進。龍皇の脇腹に回し蹴りを叩き込む。が、想像以上に頑丈な肉体をしていて、ダメージは全くなさそうだ。
掴まれそうになった足をすぐ戻し、四方八方からナイフを振る。
ナイフのような、刃渡りの短い刃物は、短剣や大剣、刀のように、一刀両断とはいかない。ある程度深い傷を負わすことはできるが、そこまでである。
それ故に狙い所が重要となる。
首はもちろん、脇や太ももの内側などの、血管が集中していたり、太い血管が通る場所を切るのもいい。 目に刺すのは、難しい代わりに、その後の戦いを有利に進められる。
下手に腕や肩などを切りつけても、大したダメージは与えられない。ましてや、レプトスの様に、頭蓋骨の隙間に、ナイフを差し込む技術はないので、頭は狙えない。
今挙げた点は、龍皇も理解しているらしく、致命傷になりうる攻撃は、確実に避けている。
簡単にはいかない。地道に。地道にやるんだ。
「何だ蟻んこ、細かい芸当は得意なんだな。この俺でもそこまで器用じゃねぇ」
汗ひとつかかず、余裕そうにそう言う龍皇に、間髪入れずに攻撃を浴びせる。
そのひとつひとつを丁寧に避けられ、やがて体勢を一瞬崩した俺は、眼前に迫る灼熱の赤に、死の絶望を体感する。
直後、盛り上がった地面に吹き飛ばされ、結果的に、その炎には当たらなかった。
「おい!今のコインの妹だろ!痛いわ!助けてくれてありがとなバカ!」
俺は宙を舞いながら露骨な皮肉を混ぜた礼を言う。神法で地面を操り、俺を無理やり炎から回避させたのだろう。しかし全身を打ち付けられるこちらからすれば、地味にダメージが大きいのだ。
そりゃ、怒る。礼も言うけどね。
やっぱり守ってもらうならデクシアだな。アリステラは論外として、痛い思いをしてから治すピズマより、痛い思いをする前に助けてくれるデクシアの方がありがたい。
贅沢は言ってられないけど。
着地と同時に前進。再び迫る炎を、ピズマが大剣で薙ぎはらう。絶え間ない炎の壁の間を縫って、再び接近。
スライディングで、龍皇の足の間に滑り込み、逆手に持ち替えたナイフで膝の裏を刺す。が、しかし。服の下に鎧でも着込んでいるのか疑うほど、膝の裏は鉄のように硬く、刃は通らなかった。
後ろ蹴りを喰らって、龍皇の後方に吹き飛ばされる。蹴りだけで体が浮くほどの威力。蹴られた腹の痛みに顔を歪めながら、着地の体勢に入る。
しかし、直後、着地地点の地面が割れ、炎が噴き出す。俺は全身を炎に包まれ、声にならない絶叫で喉を震わせながら悶え苦しむ。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い………治った。
すぐに立ち上がり、ナイフを投擲。龍皇の喉元に向かって飛んだナイフは、スレスレのところで避けられる。
しかし、ナイフを避けるために体勢を崩した龍皇のその隙を見逃さず、ピズマが大剣を振り下ろす。
明らさまに無茶な体勢から、体を捻った龍皇は、間一髪で大剣の刃を避け、そのまま炎を纏ったつま先をピズマの脇腹に突き刺す。
蹴りで体に突き刺すという表現を使うのは初めてだが、事実だから仕方ない。体の内側を焼かれ、吐血するピズマ。すぐに傷はなくなったが、次に腹を捉えた龍皇の拳に、ピズマの巨体が何メートルも後ろに吹き飛ばされる。
直後、地面が波打ち、ぐにゃぐにゃに曲がりくねった大地が、龍皇を包む。赤茶色の土が球体になり、龍皇を完全に覆う。
閉じ込めた瞬間に、球体だった土のドームが、ウニや栗のように、棘の目立つ形に変わる。ドームの中の状況は察しがつくが、一瞬の間をおいて爆炎と共に土のドームから出てきた龍皇を見て、やはり効かないか、と肩を落とす。
指の骨をポキポキ鳴らす龍皇。刹那、何もないところから俺の亜水晶石のナイフが、龍皇めがけて飛んでいく。
首を曲げてそれを避ける。その先にいた俺が、ナイフをキャッチして、構え直す。無論、今ナイフを投げたのは、視認さえできないほど気配を隠すのが得意なレプトス。
ピズマが立ち上がり、振り出しに戻る。
「わちゃわちゃと忙しい蟻んこ共だな。この俺は退屈なのも大嫌いだが、忙しいのも好きじゃねぇぞ」
腕を組んで龍皇は笑う。楽しそうではあるが、五対一の状況でその余裕は正直驚く。
「“暇は人を殺す”って言うからな。忙しいくらいがちょうどいいだろクソジジイ」
「この俺、フロガをクソジジイだと呼んでいるのはこの世でお前だけだぞガキ」
「それは光栄なことですねー」
気持ちのこもっていない返事をしつつ、頭を埋め尽くす焦りに表情を歪める。
“倒したように見える一撃”。それだけ実現できれば、あとはレプトスが何とかしてくれる。しかし、その一撃はおろか、こちらの攻撃は一度だって効いちゃいない。
ましてや、膝の裏でさえ刃が通らない。一体どうなってる。
「……よし、お話しましょう、フロガ様」
俺はナイフをナイフケースにしまいながら口調を変える。
「何だ、時間稼ぎか?この俺に無駄な時間を取らせるのか?」
「無駄なんてそんな。またお聞きしたいことが思いきまして、どうかお答え願いたいという、私のわがまま故に、“無駄”にも及ばない、ほぼ無意味な時間でございます」
「この俺が思うに、なおさらめんどくせぇな」
ぽかんとした顔で俺を見るピズマとデクシアと兄を見つめるアリステラ。
構わず続ける。
「そう言えば、どうしてフロガ様は、戦争が始まった初日にしか、攻めてこなかったのですか?」
「……何だ、知らねぇのかガキ。今、人間はな、てめぇら蟻んこゴブリン以外にも、様々な種族と敵対してんだよ、だからこの俺は、毎日、世界を歩き回りながら、敵対種族の兵を殺し回ってるわけだ」
「なるほど、始祖じい……じゃなくて。僕らの始祖様が、“世界規模の戦争”が起きていると、以前言っていたのは、このことだったのですか」
「まぁ、そんで、最初の攻撃対象であるゴブリンの土地に、また帰ってきたってだけだ。この俺がわざわざ教えてやったんだ、圧倒的な感謝で溺れ死ね」
人間は今、ゴブリン以外の種族とも戦争をしていて、だから龍皇はそれらの対応のために世界中を回っていたから、戦争初日にしかパトリダを攻めてこなかったのか。
「では、もう1つ。夜明け前、僕たちゴブリンの里、パトリダの北の海から、人間軍が攻めてきたのですが、あれはフロガ様のための囮ですか?」
「この俺のための囮なんぞいらねぇ。本当は今日はゴブリンじゃなくて他の種族のところに行けってクソ生意気な人間のリーダー達に言われてたんだがな。この俺が命令に従うのもそう言えばおかしな話だと思ってな、カス共の作戦全部無視してこっちきたんだ」
わがままだなおい。つまりは北の海からの奇襲、そしてそれと同時に西の荒野から攻め入ってきた人間軍。
そうした用意周到な作戦行動を、このジジイは自分の独断専行でぶっ壊したわけだ。というか人間の兵皆殺しにしたのこいつだし。
「ラン様。人間軍の作戦が龍皇によって台無しになったようですが、北側からの進軍、あれはあれで中々手強い敵がいるらしく、未だに決着がついていません。我々が言うのも何ですが、パトリダはかなり危機的状況にあります」
ピズマが大剣を構えたままそう言った。
「へぇ、北の海には、アグノス達が向かったんだろ?それでも手こずるってことは、かなり強いんだな、敵は」
「女性剣士らしいのですが、アグノスと一対一でも引けを取らない実力らしく……」
「まじかよ」
女で、あのアグノスと同じくらい強いとかふざけてんな。もしかしてこの世界の女性は、お淑やかではなく逞しく育てられてるのかな?まさかね。
「女の剣士……あぁ、暁軍の金髪の嬢ちゃんか。あいつガキのくせに剣だけはこの俺が認めるほどにはできるからな」
「金髪の嬢ちゃん……?」
何だか変な予感がしなくもない単語だが、今はそれどころじゃない。
「そろそろいいだろ、蟻んこ。この俺がいつまでもこんなとこにいる理由はない」
龍皇の両手から炎の球が無数に生まれる。
「──チェックメイトだ、蟻んこ」
対龍皇戦、最終局面突入──。
今話も読みに来てくださり、本当にありがとうございます。
お前ら殺してやるよ、って言ってる割に話を聞いてくれるフロガさん。以外と優しいかも知れません。
………金髪の嬢ちゃんとは果たして。




