プロローグ 其のプリズムは彼方を廻る
やばくて、重い世界観の話です。
最初は重いけど、段々とコメディ出てきます。
どうか、続けてお読みいただけると嬉しいです。
ーーーこの世界は狂っている。
青年はヘリコプターの中で、灰色の空を眺めながら考えていた。
「カイ君、どうしたの?」
金髪の少女は"カイ"と呼ばれる青年に話しかける。
「いや、戦争はいつ終わるのか、悪人はいつ滅びるのか、考えてた。」
第三次世界大戦が始まって19年。
その重い空気は、ヘリの中にも染み付いていた。
「そうなんだ。カイ君らしいね。」
金髪の少女は目を伏せて物憂げに話した。
「グラシィは戦争を終わらせたいか?」
カイは"グラシィ"と呼ばれる金髪の少女に問う。
「うん...もう、こんなの嫌だよ......」
グラシィはその碧眼を陰らせながら話す。
すると、割って入るように今度は大柄な青年が冷静に2人に返す。
「そんなことを考えても仕方がない。俺たちは、目の前の任務を遂行するだけだ。」
それを聞くとグラシィはハッとし
決意の眼差しを大柄の青年へ向けながら
「そうだね。それしかないよ。ありがとうカナタ君。」
と答えるのだった。
"カナタ"と呼ばれる青年は、ニヤリとしながら
「敵より先に帰るぞ。そうすれば、俺たちの勝ちだ。」
と皆に投げかけた。
■■■
空の旅が続く中、数十分が過ぎた。
ーーーそろそろだな。
カイは心を踊らせていた。
カイが心中で呟くや否や、すぐ隣で
カナタが
「総員、着陸体制に入れ!」
と大声で叫ぶ。
それに、すかさずカイが反応し
「聞こえるからもう少し小さな声で話せよ!」
とツッコミを入れるのだった。
それを受けて、いつも通りカナタは「わりぃわりぃ」とニヤニヤしながら答えた。
かくして、カイたちはヘリコプターを降り、
敵軍の滞在地へと向かう───
向かうのはカイだけだ。
■■■
カイが単騎で敵陣へと走り込み、数十分が経った。
ーーー相変わらず、敵地は鼻を突くような錆びた鉄の匂いがするな。
カイはひとまず岩陰に隠れると、
呆れ顔をしながら心中で呟く。
しかし、カイのやることは決まっていた。
分かりきっていた。
身体で憶えていた。
ただ、全身全霊をかけて敵に突っ込むだけ。
それだけである。
「カイ、前方500mに敵複数確認。
走れ。」
「了解」
カナタの指示が無線越しに伝わると、
カイは抑揚のない声で、一言だけ発した。
カイは乾ききった大地を力強く踏み込んだ。
「なんだ、アレは...」
「ッ!」
敵兵の疑念が、驚愕にかわる。
無理は無い。
こんな細い、弱そうな男が単身で突撃してくるのだから。
「撃て!撃ち殺せ!」
その類の罵声にカイは退屈していた。
ーーーもっとマシなセリフは無いのか。
とカイは皮肉混じりに心中で悪態する。
「まぁ、これから殺そうとする相手にエンターテイナーを求めちゃいけないな。」
カイは走りながらそう呟いた。
刹那、カイの体を一筋の銃弾が貫く。
それをきっかけに無数の銃弾がカイを包み込む。
ーーーあぁ、痛い。痛い。痛い。
でも痛いから、まだ安心できる。
オレは生を実感できる。
この痛みも快楽に他ならない━━━
カイが異常な悦びを感じてる内に敵の銃撃が終わった。
「さすがに死んだだろ。」
「全く、訳が分からない。銃の射程を理解していないのか。これじゃまるで ━━━」
敵兵がそう言いかけた刹那───
「な、なんだと!?」
その顔は戦慄に変貌した。
それもそうだ、死んだと思った相手が突っ込んでくるのだから。
「バカな!有り得ない!銃撃を続けろ!」
この顔がカイの嗜虐心を煽る。まるで
鼠を狩る猫のような、そんな狩猟本能が刺激され、カイは走り続ける。
再び、銃弾がカイの身体を貫く。
貫き続ける。
しかし、無意味だ。
全く持って意味を成さない。
「カイ、そろそろだ」
無線越しの低い声が聞こえる。
カイはスイッチを押した。
次の瞬間、カイの体が無慈悲にも弾け飛ぶ。だが、それは敵も同じだ。
砂煙が辺りに舞い散る。
辺りは、生命の痕跡すら残っていない更地になった。
但し、カイを除いて。
ーーー今日もいつも通りだな。
昔の非日常が日常になってやがる。
カイは皮肉めいた笑みを浮かべ、
呟いた。
ーーー昔と言えば...
過去の光景が、カイの脳裏に滲み始める......




