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クレイン・クレイドル  作者: 倉利来
第1章 エンドレス・ペイン
1/9

プロローグ 其のプリズムは彼方を廻る

やばくて、重い世界観の話です。

最初は重いけど、段々とコメディ出てきます。

どうか、続けてお読みいただけると嬉しいです。

ーーーこの世界は狂っている。


青年はヘリコプターの中で、灰色の空を眺めながら考えていた。


「カイ君、どうしたの?」


金髪の少女は"カイ"と呼ばれる青年に話しかける。


「いや、戦争はいつ終わるのか、悪人はいつ滅びるのか、考えてた。」


第三次世界大戦が始まって19年。

その重い空気は、ヘリの中にも染み付いていた。


「そうなんだ。カイ君らしいね。」


金髪の少女は目を伏せて物憂げに話した。


「グラシィは戦争を終わらせたいか?」



カイは"グラシィ"と呼ばれる金髪の少女に問う。


「うん...もう、こんなの嫌だよ......」



グラシィはその碧眼(へきがん)を陰らせながら話す。


すると、割って入るように今度は大柄な青年が冷静に2人に返す。


「そんなことを考えても仕方がない。俺たちは、目の前の任務を遂行するだけだ。」


それを聞くとグラシィはハッとし

決意の眼差しを大柄の青年へ向けながら


「そうだね。それしかないよ。ありがとうカナタ君。」


と答えるのだった。


"カナタ"と呼ばれる青年は、ニヤリとしながら


「敵より先に帰るぞ。そうすれば、俺たちの勝ちだ。」


と皆に投げかけた。


■■■


空の旅が続く中、数十分が過ぎた。


ーーーそろそろだな。


カイは心を踊らせていた。




カイが心中で呟くや否や、すぐ隣で

カナタが


「総員、着陸体制に入れ!」


と大声で叫ぶ。


それに、すかさずカイが反応し



「聞こえるからもう少し小さな声で話せよ!」


とツッコミを入れるのだった。


それを受けて、いつも通りカナタは「わりぃわりぃ」とニヤニヤしながら答えた。


かくして、カイたちはヘリコプターを降り、

敵軍の滞在地へと向かう───











向かうのはカイだけだ。


■■■


カイが単騎で敵陣へと走り込み、数十分が経った。


ーーー相変わらず、敵地は鼻を突くような錆びた鉄の匂いがするな。


カイはひとまず岩陰に隠れると、

呆れ顔をしながら心中で呟く。



しかし、カイのやることは決まっていた。

分かりきっていた。

身体からだで憶えていた。

ただ、全身全霊をかけて敵に突っ込むだけ。

それだけである。



「カイ、前方500mに敵複数確認。

走れ。」


「了解」


カナタの指示が無線越しに伝わると、

カイは抑揚のない声で、一言だけ発した。



カイは乾ききった大地を力強く踏み込んだ。



「なんだ、アレは...」









「ッ!」


敵兵の疑念が、驚愕にかわる。

無理は無い。

こんな細い、弱そうな男が単身で突撃してくるのだから。


「撃て!撃ち殺せ!」


その類の罵声にカイは退屈していた。


ーーーもっとマシなセリフは無いのか。


とカイは皮肉混じりに心中で悪態する。


「まぁ、これから殺そうとする相手にエンターテイナーを求めちゃいけないな。」


カイは走りながらそう呟いた。





刹那、カイの体を一筋の銃弾が貫く。


それをきっかけに無数の銃弾がカイを包み込む。



ーーーあぁ、痛い。痛い。痛い。

でも痛いから、まだ安心できる。

オレは生を実感できる。

この痛みも快楽に他ならない━━━



カイが異常な悦びを感じてる内に敵の銃撃が終わった。


「さすがに死んだだろ。」


「全く、訳が分からない。銃の射程を理解していないのか。これじゃまるで ━━━」


敵兵がそう言いかけた刹那───














「な、なんだと!?」


その顔は戦慄に変貌した。

それもそうだ、死んだと思った相手が突っ込んでくるのだから。


「バカな!有り得ない!銃撃を続けろ!」


この顔がカイの嗜虐心(しぎゃくしん)を煽る。まるで

鼠を狩る猫のような、そんな狩猟本能が刺激され、カイは走り続ける。



再び、銃弾がカイの身体を貫く。

貫き続ける。


しかし、無意味だ。

全く持って意味を成さない。


「カイ、そろそろだ」


無線越しの低い声が聞こえる。

カイはスイッチを押した。

次の瞬間、カイの体が無慈悲にも弾け飛ぶ。だが、それは敵も同じだ。


砂煙が辺りに舞い散る。

辺りは、生命の痕跡すら残っていない更地になった。














(ただ)し、カイを除いて。




ーーー今日もいつも通りだな。

昔の非日常が日常になってやがる。



カイは皮肉めいた笑みを浮かべ、

呟いた。


ーーー昔と言えば...




過去の光景が、カイの脳裏に滲み始める......

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