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二話

何ヶ月ぶりだろう……。

すみません、とにかく、更新です!


「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 今、俺はリュックサックを抱えながらこれまでにないくらい走っている。全力で。

 それは……。


「キシャァァァァッ!!」


 アナコンダとか比にならないくらいでかい赤黒い色をした蛇が奇声を上げ、俺なんか簡単に丸呑みできそうなくらい大きな口をパクパクさせながら凄い勢いで迫ってきているからだ。

 何故こうなったのか。それは五分前に遡る──。





ー・ー・ー・ー





「クソ幼女めっ! なんて事してくれたんだあいつは!」


 見渡す限り、緑、緑、緑。

 まだ空が見える分、鬱蒼とした、と言うよりは爽やかな雰囲気の森の中。

 その中に俺は立っていた。

 足元まで雑草らしき草が生えており、近場に道らしい道は見えない。

 完全にあの幼女はやってくれたようだ。


「あいつ今度会った時覚えてろよ……!」


 俺はいつ会えるかも分からない幼女に怒りつつ、大きく溜息を吐く。


「はぁぁ……、まぁ終わった事はしょうがない。切り替えるか……」


 幼女への怒りはいつか晴らすと心に決め、改めて辺りを見渡す。


「……にしても、本当に森の中だなこれ」


 やはりいくら見渡しても背丈の大きい木ばかりしかない。だが、今は昼間らしく、無駄に綺麗な青空が木々の間から覗いており、全体的に明るい森だ。森林浴なんかしたらさぞ気持ちいいだろう。した事など一度もなかったが。

 こんな訳も分からない場所で呑気に森林浴、なんて言ってる状況ではないのだが、前世でリフレッシュついでに行きたかったなと素直に思う。


「えーっと。とりあえず、身の回りでも確認するかな」


 幼女への怒りで色々と忘れていた事を思い出す。

 兎にも角にも、自分の今の状況を知ることは重要だ。

 えー、今の自分はっと……上下スーツに、何故か靴だけランニングシューズ。そしてスーツの胸ポケットには丁寧に折り畳まれた薄水色の小綺麗なハンカチ。

 他のポケットには……何もなし。

 そして今の俺は手ぶら……。


「……あぁ、終わった……」


 食料はおろか、装備すらないとは。

 俺は近場の木に手を付き脱力する。

 ……と、ふと足元に感触が──。


「……って、リュックサック?」


 不自然なくらいに存在感を発揮する真っ黒なリュックサックが木の根元の方に置かれていた。

 ここは森の中で、おそらく人は居ないはず。

 にも関わらず放置されているリュックサック。

 誰のとも知れないこのリュックサックの中身を不用意に覗くようなことはしたくはない。

 ……が。


「……状況が状況だし、仕方ない……よな」


 恐る恐るリュックサックを持ち上げてみる。


(うーん……中々軽いっぽい……? 中身入ってるのかこれ……?)


 見た目とは裏腹に中々の軽さである。

 この軽さだと中身はあまり期待出来なさそう──。


(っていやいや、盗んだりする訳じゃないんだ。そう、確認。確認するだけだから)


 誰に言うでもなく言い訳をしつつチャックに手をかける。ゆっくりとチャックを引くとジーっと小気味よい音と共にリュックサックが開かれる。

 そしてその中身は。


「……ん? 中が見えない……」


 真っ黒なデザインと同じように中身も真っ黒に染っているリュックサック。

 違いがあるとすれば、真っ黒、と言うより真っ暗、がより近い表現である事くらいだろうか。


「……うーん、困ったな」


 中身に何も入ってないとなると、出来れば、拝借させて頂こうと思っていた考えが無駄になってしまう。

 はぁ、とため息をつき、リュックサックを元の位置に戻そうとして。


「……ん? 紙……?」


 リュックサックが置かれていたちょうど真下辺りに一枚の紙切れが落ちていることに気が付く。

 そしてその紙を手に取ると、文字が書かれている。

 英語でも日本語でもない、全くもって知らない文字なのだが、何故か、読める。

 そこには。


『やっほー! 転移ご苦労さま! いやー、私も女神として従者を従えるようになる日が来るとは思ってなかったわ!

これで周りの女神共に自慢出来るってもんよ! その辺に関してはあなたに礼を言ってあげなくもないわよ?

まぁ、それはそれとして、その辺にリュックサックが落ちてると思うけど、それの中に色々……えっと、とりあえず食料とか武器やら何やら入ってるから、使うといいよ!

あ、多分このリュックサックの使い方知らないと思うから書いとくね! えーっと、あ、やば、紙におさまらないこれ……。とりあえず、リュックに手を突っ込んだら頭の中に入ってる物が浮かぶはずだからそこから選ん』


 ……と書かれていた。

 最後まで適当な自称女神である。


「と言うか、この紙切れによくこんな大量に書けたな……。いや、そもそも最初のくだり省いたら書けたよな……」


 呆れながら紙切れを見つめていると、紙切れが淡く光だし、そしてサラサラと光になって消えた。


「えっ、ちょっ……えぇ……」


 軽く困惑する俺。あの紙切れは実は魔道具的な何かだったのかもしれない。

 書いて特定の者まで届ける的な。郵便局泣かせの魔道具である。

 そして、中途半端に文字が途切れていた辺り、もしかしたら文字数制限とかがあるのだろうか。

 そうなら、まだ郵便屋さんは出番がありそうだ。

 そんなしょうもない事を考えつつ、消えた紙切れを思い返す。


「……まぁ、消えちゃったもんはしょうがない。とりあえず、リュックサックの中身を……?」


 と、不意にフッと影がさす。

 木漏れ日が心地いいくらいだったから晴れていたのだろうが……。雲が覆ったのだろうか。

 ふと、振り返って見上げる。


「……は、え?」


 そこに雲はなく、赤黒い色をした、大蛇が……。


「キシャーッ!!!」


「うぇぁっ?!!」


 大きく口を開け、奇声を上げながら食らいついてきた。

 いきなりの事でパニックになりそうな頭を懸命に働かせ、横っ飛びで回避する。

 受身など到底するわけなく、ゴロゴロと勢いそのまま転がる。


「痛た……。うぇっ、口に草入った……しかも手のひら擦りむいたし、って、なんじゃありゃ?!」


 大蛇は俺の後ろにあった木の幹に噛み付いた状態だった。

 そこで大蛇の大部分を見ることができたが、とてつもなくでかい。そしてよく見ると赤黒い鱗が脈を打つように怪しくうねっている。

 ……正直、気持ち悪い。蛇自体はどちらかと言えば好きな方ではあったが、これは流石に……。


「……え?」


 そんな事を考えているのも束の間。

 俺が居た後ろの木にそのまま噛み付いた大蛇だったが、あろう事か、バキバキと音を立てて木が噛み付いた方向に向かって倒れる。

 木の幹を見ると、ジュワっと音を立てて溶けているのが遠目でも分かる。

 ……えっと。


「シュルルルルル……」


「……は、はろー?」


 大蛇と目が合う俺。気まずさに手をあげ挨拶をする。

 ……いや、とりあえず。


「……逃げるが勝ちだ!!」


 大蛇に背を向け猛ダッシュした!




─・─・─・─






 そして現在。

 やはり多少強化された程度なのだろう、大蛇を巻くことが出来ずにただひたすらに森の中を走り続けている。

 体力自体は結構強化されたのか、息切れをする程度に収まっている。いや、それでもきついのに変わりはないが。


「待って、ぜー、ぜー、も、もう無理! 死ぬ! これ、絶対死ぬ!! はぁっ、 はぁっ」


 言いつつも走るのは止めない。

 しかし、このままでは確実にあの蛇の肥やしになってしまう。

 酸欠状態の頭をどうにか動かし、とりあえず、走りながら、リュックの中身を確認する事にした。


(確か、手を突っ込めばいいんだよな……!)


 リュックをいじったせいで走る速度が落ちたのか徐々に大蛇が近付いてくる。

 焦りつつもリュックに手を突っ込む。

 すると、頭の中に文字が浮かんでくる。

 その浮かんだ文字の中に、使えそうな物が……!


(こ、これだ!)


 頭の中でこれを選ぶと手の中に何かが収まる感覚が。

 そのまま掴み取り、突起物に指を当ててから。


「そぉーい!!」


「キシャッ?!」


 大分距離が縮まっていたのだろう。

 俺が投げたそれは放物線を描き大蛇の口へと入り……。


 ──瞬間。


 轟、という凄まじい音と共に勢いよく熱風が吹く。


「あづっ?!」


 俺は風と衝撃に押され勢いよく地面を転がる。運良く木には激突せずに地面に投げ出される。


「ゴホッゲホッ、いっつぅ……。これ、こんな威力あんのかよ、もっと距離置かないと普通に死ぬぞ……」


 辛うじて爆発からは逃れた俺は体が動くか確認し、爆発源を見る。

 ……と。


「……蛇、木っ端微塵じゃん……」


 見るも無惨な肉塊がそこにはあった。


「……このボタン式手榴弾、やべぇ」


 俺はこんな近距離で絶対に使わないと固く誓った。


「いや、離れててもこれは使いたくねぇ……」


 このオーバーキルすぎる現場を見るととてもまた使う気にはなれなかった。

 ともかく、蛇からの脅威は、これで去ったのだった。


長らく更新せずすみません。

あと一つのところも更新しなきゃ……。

あと一つの方をメインにやってますので、また気が向いた時に……更新します……<(_ _)>

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