君は元気がいいね
クラーチャは森からあまり出ないらしい。
蝶々妖精はあまり生まれの森から出ないものらしい。
出たくないの?
そう聞くとクラーチャは笑った。
「ボノ、貴方は村をでたいのかしら」
「え、うーん。どうかな、町っていうのを見てみたい気はするけど。村には、帰りたいかも」
「そうよね、他の場所を見てみるのは良いけど、結局故郷には帰るのよ。私達にとってこの森はボノの村と同じよ」
「ああ、なんかボク変なこと聞いちゃったみたいだね」
「うーん、私はボノのその考え方のほうがちょっと変わってると思うわ」
そうだろうか。
あ、そうなのかも。
村の男の子も女の子も、ある程度大きな子は皆町に憧れる。
町でないと食べられない美味しいもの、綺麗な服、格好の良い仕事。
そんなものに憧れて、皆大きくなったら町にでて、そういう物に囲まれたいと思うみたいだ。
なるほど、ちゃんと考えてみれば、クラーチャの言うとおりボクの方が変わっているのかも。
「そうだねクラーチャ。皆は町に住みたいんだね。そうじゃないボクは、すっごくではないけどちょっと変かも」
「ボノはちょっと変わってるけど、それが変でいけないとか、おかしいってことじゃないからね」
「ん? ボクは別にそこまでは思ってないけれど」
「思うようになってからじゃ遅いから、今言うの。私ボノが自分はおかしいからダメだとか、変人だから一人で居るべきとか考えるの嫌なの」
「嫌なのかぁ」
「嫌よ。好きな人が私の余計な一言で自分を嫌いになっちゃったりしたら、泣いちゃう」
ああ、クラーチャの声が震えてる。
彼女は何時も明るいけれど、時々こんな風に泣き虫になる。
それはボクの事を心配した時だったり、ボクが風邪を引いて森にこれない時や。
ボクがクラーチャのところに顔をださなくて、彼女をボクが嫌いになったと不安になった時とか。
クラーチャは普段からは想像できないくらい、泣き虫になる。
今もヒックヒックとしゃくり声を上げながら彼女は、震えているんだと思う。
自分の怖い考えに震えるクラーチャを慰めようと、彼女を見ようと顔の向きを変える。
肩の上にのる小さな妖精をギリギリ見つめると、やっぱり彼女は泣いていた。
小さくても、森の木漏れ日を受けてキラキラ光る、綺麗な涙を拭いもせずに。
胸が痛いと言うように、胸のまんなかを両手で抑えて泣いている。
「大丈夫。クラーチャがボクを好きって言ってくれるなら、ボクは自分を嫌いになったりしないと思うよ」
「ほんとう?」
「うん。ボクも君が好きだもの。好きな人が好きなものは、好きにならないかな」
ボクの言葉に、クラーチャは潤んだ瞳で見上げるクラーチャは言った。
「ボノはまだ知らないのね。好きな人の好きなものが好きになるとは限らないのよ」
「そうなの?」
なんだか解らない、そんな一言だった。
ボクはお母さんの好きな森のきのこが好きだし、お父さんの好きな畑の小麦も大好きだよ。
お母さんもお父さんもボクは好きだから、好きなものも同じなんだと思ってた。
でもクラーチャはそうじゃないっていう。
「ボノは、私が森ネズミが好きっていったら好きになれる?」
「……ダメかも。あいつら父さんの畑を荒らすんだ。ぜんぜん好きになれないよ」
「ね、ボノは私が好きだけど、森ネズミは嫌い。好きの好きが好きは絶対じゃないの」
「うーん。そうなのかな。ところで、クラーチャは森ネズミなんかのどこが良いのさ」
「あら、あの子達は私達のいう事は良く聞いてくれるのよ。飛ぶのもいいけど、森ネズミの背中に乗って遊ぶのも楽しいのよ」
「ふーん」
森ネズミの良いところを言う頃には、クラーチャも涙を拭いて。
パッと明るい顔に戻った。
ボクはクラーチャが森ネズミを好きなのが引っかかってたけど。
君が元気になってよかったよ。