流砂の下
毎週とか言ったけど投稿しちゃいます。
不規則ですいません。
水上都市ラグーンまでの道のりには、図書館都市国家ニーへを経由する必要がある。
その奥がデザアル共和国となっており、多民族国家である。そして、その隣国がハーナー宗主国、今回の目的地だ。
逃避行の末にトゥルシャナが選んだのは、あえて流砂に呑まれることだった。これは、ヌァザの提案でもあった。
流砂があると言うことは、下にある程度の地下空間が存在しており、そこに入ってしまえば追っ手も死んだと思って来ることはない。
そして何より、戻れない可能性の高い場所にわざわざ来ることはない。
トゥルシャナの魔奏があれば、その点は安心だ。
「そして何より、音で構造を把握できるから、地下空間の迷路状の構造を辿ってもいけるとそう考えたわけですか……はあ、まあいいですけどね」
「正直に言えばな。ぺっ、だが、これで一蓮托生と言ってもいいだろう、ぺっ」
口に砂が入ったらしく、ヌァザはひっきりなしに地面に唾を吐き出す。
「シャナ様、髪に砂が付いてますよ?」
パタパタと背負われたまま、トゥルシャナの髪を払うと、エルシャダはにこっと笑った。
「そりゃ流砂を抜けてきましたしそうなるのが当然ですよ」
そう言ったジギシャは、ようやく降ろしてもらった地面にどっかと座り込むと、ため息をついた。
「まさか、地下空間が安全だって思ったってことはないんでしょ?」
「そうですね。……きますよ、向こうから」
「全く……ここからどうやって脱出できるって言うんです」
落ちている岩の陰で息を潜めながら、その魔物が行きすぎるのを待つ。その間に、トゥルシャナは情報の整理を始めた。
まず、行き先はハーナー宗主国。そこはハーナー教を一大宗教としているパム族が住んでいる。
彼らは頭部と手のみがあり、その下からは揺らめくように暖色系の靄が出ている。それぞれ純人の平均的な身長ほどのところで浮遊している。
宗教上の理由で女性はヴェールと口元を覆う薄い布、男性は口元を覆う厚手の布を着用しており、その手先の器用さも相まって、ハーナー宗主国は精密な魔導機械を製作している。
そして、その寿命は人に比べてだいぶ長く、トゥルシャナたちの百五十歳を目安としたものの四倍はあるという。
主な宗教は一神教のハーナー教で、その宗教を進行していずとも入国はできるが、聖地には立ち入りできない。
「ラグーンは一応、貿易都市ですし問題はなさそうですね」
「シャナ様、何かわかりましたか?」
「あ、いえ、情報を整理していただけですよ」
「ふーん……脚、早く欲しいなあ」
そんな場に似合わないほのぼのした会話に、呆れを滲ませながらヌァザが目頭を揉んだ。
「お前らは緊張感というものはないのか……」
「でもほら、シャナ様がいますから!」
「大蠍ですし……狩っちゃいます?隠れましたけど、あれくらいなら素手でぱぱーんといけますけど」
「まあ、私もいけなくはないな。よし、やるか」
「ジギシャ、あの人強いの?」
「軍神メドーアが乗り移っていると思えるほどには、ですね……」
トゥルシャナが隠れていたところからスッと出て行き、そのまま拳を振り抜いた。
そのまま蠍は吹っ飛んでいく。しかし、そこで追い討ちのようにヌァザが剣を構えて、その腹で打ち返し、振り抜いた勢いと飛んできた勢いを加えて、甲羅を割り砕きながら地面に叩きつけた。
「うわぁ、ただの純人なのに、村の若衆くらいすごいね」
「恐るべきは、その腕力をうまく運用できる頭もあることなんですけどねってぇ!?」
飛んできた甲羅の大きな破片を、エルシャダがその細腕で受け止める。
「すいませんでした!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよー、シャナ様!」
「そうですか!ありがとうございます、エル!」
「えっへへへ」
照れたように笑うが、実際この集団の中で一番腕力がないのはきっと自分だとジギシャは気が遠くなるような思いだ。
ジギシャも純人にしては弱いわけではない。だが、実際アルトハの者と比べると非常にその腕力は心もとないと言っていい。
「こりゃあ、俺は交渉ごとの方を担当すべきでしょうね……」
実際、二人の目標が復讐をすることならば、その復讐を遂げるためには他国の協力が肝要となる。そして、そのためには国の中枢深くまで食い込むことも幾分必要だ。
ヌァザは力と兵士の運用には優れているが、上に媚びることをしない。と言うより、その性格上できないのだ。
そして、アルトハの若長は物腰は柔らかいが、交渉ごとにおける駆け引きには向いていない。もう一人の少女は論外だ。
つらつらと考えていると、うまそうな匂いに腹がきゅうっと鳴った。
「ジギシャ、飯だぞ!」
「今行きます!」
ジギシャは勢いよく立ち上がった。




