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Bet the wing!  作者: 宮村灯衣
第一章 雛カラス
9/10

実地試験五日目

分割 後編の一部です

「あのですね、遥斗さん」


「あ、どうした?」


「ここ、絶好ポイントなんですよね。ここにいて遥斗さんと直斗さん検挙率№1になったんですよね?」


「ん? あぁ。検挙率、№1な。あくまで。ようは俺たちの実力が高かったわけで。検挙数№1じゃないんだよ」


 ……つまり、ここなら不意打ちできるので捕まえやすいというわけですか。


「だからもう四日も何もないんですか……」


「悪かったな。走り回ってたほうがよかったかもしれない。病弱だって聞いてたからな。あ、水分だけは取っとけよ」


 失礼な! アルビノとはいえ病弱じゃないぞ! たぶん。

 そうこうのんびり話しながらも目は下を見下ろし続ける。


「平和ですねぇ……」


「だな……」


 試験受けてる身としては困るくらいに平和だ。


「そいえば遥斗さん、俺たちと白鴉の連中って具体的に何が違うんですか?」


「は? 授業で習わなかったのか?」


「習ってません」


 鴉に二年遅れる形で創設された集団ってことくらいしか知らない。


「白鴉は、大卒の優秀な人間のみで構成されたエリート集団だ。うちみたいな烏合の衆とは違って、元犯罪者なんざいない。試験もたぶんうちより何倍か難しいだろ。たしか、バトラーになるためには……木刀一本で手練れの大男を一撃で倒す、だったか。ブレインのほうは一流大学を卒業、かつ難関な筆記試験に合格。うちはそう考えるとかなり甘いな」


 エリート、集団……。まさにそれだ。俺試験っていう試験、入学試験しか受けてないぞ。まぁ、ほかの試験とか受ける余裕ないけどな。金的に。


「ちなみにうちと仲が悪い最終的な原因は総隊長同士……月宮アランと月宮レックスの仲が悪いことだ」


「え、白鴉の総隊長、月宮……? まさか兄弟!?」


「そう、兄弟。月宮兄弟、だ。兄弟仲悪いらしいが」


 それが仲悪い原因って、えー。


「あと個人的には全体的に白鴉の連中はエリートぶってて気に食わない」


「だからって突っかかってくのはどうかと思いますよ」


「うるさい」


 唐突に首根っこをつかまれた。


「ちょっと、ばるどざん……。ぐび、じまっでるんでずが……」


「すぐ離す。下りてすぐ右な。売人。職質するときはネックウォーマー外すこと。ちなみに目立つから帽子は絶対に脱ぐなよ」


 頭に血が行かずなにやらボーっとして、きた。

 遥斗さんは、何を、言っているの、だろう……。


「じゃ、いってこい」


 手を、離された。そこはもう空中であがいても遅い。

 必死で手をかくがまぁ、ここは漫画の世界じゃないわけで。


「は、遥斗さぁぁぁあああん!?」


「早く止まらないと骨折すんぞー」


 鬼だ。悪魔だ。


「Promote!!」


 叫んでビルに手を当てる。やばい間に合うかこれ。

 減速は必死でしているがスピードは全然緩んでいない。冷や汗が背中を伝う。


「あぁもう。Flick!!」


 足も使って本当に無理やり減速して、着地。


「普通、もう少し報告したり詳しく教えてくれたりするもんじゃねぇの? マジ悪魔か……」


 日陰に入ったのでネックウォーマーを外し、腰のベルトに挟む。帽子は……かすかにそのままにしとけとか言われた気がするからそのままにしとこう。


「右、だったか」


 右に曲がると上からも見えていた、さびれたというより荒廃した商店街に出る。よく見れば、確かに人が立っていた。

 あれが、売人……?


「職質……できるかな」


 息を吸って一歩踏み出す。大丈夫、授業通りにやればいいだけだ。


「鴉の菅野といいます。ちょっと職質、いいですか?」


「…………はい」


 手帳を見せれば、青ざめた顔で成人してなさそうな青年はうなずいた。


「名前は?」


「……昆野、忠政」


 昆野、ね。手帳にメモする。


「年は?」


「十七」


「学校は?」


「やめた……」


 やめた、と。路地生まれの子や親がいない子は学校にすら行けない、文字すら知らない子ばかりなのに……。贅沢なヤツだ。


「じゃあ無職か。とりあえず、手荷物検査、いいか?」


「い、嫌。だめ、無理、ヤダ! に、任意なんでしょ? 強制できないよね、じゃ」


 あせったようにかばんを握り締め去ろうとする。


「ちょ、待て!」


 態度は、確実なのに! どうすればいいんだ!? このままいってもいいのか? どうすれば!?

 次々と案が浮かんでは消えていく。何が正解なのかもわからない。あぁ、もう、本当に、どうすれば!?


「蓮、お前もまだまだだな」


「え?」


 黒い影が俺の前を通る。逃げ出した昆野青年に触れたかと思うと……ねじ伏せた。


「しょ、傷害罪、傷害罪だぞ! つ、罪なき一般人に暴力を、振るうなんて!」


「罪なき一般人? どこのどいつのことだ、そりゃ?」


 影は、遥斗さんだった。青年をねじ伏せるその姿が、記憶の中の鴉とかぶる。


「おい、ボーっとするな、シロ坊! 手伝え!」


「だーかーらー、シロ坊じゃないです、蓮です!」


 目をこすり、遥斗さんに駆け寄った。

 青年を組み敷いた遥斗さんは何かを手に持っている。粉薬のようなものが入った小袋を。……覚せい剤、か。


「シロ坊、これ検査。ちなみに、掏ったのは内緒な。バレたら始末書じゃすまないから」


 一瞬で掏れるなんて手先器用なんだなーとか思いながら、投げられた覚せい剤を受け取り、袋をくわえて簡易キットを取り出す。


「昆野。この液体三種類入れて藍青色になったら、覚せい剤だからな」


 袋を開け、ゆっくりと一種類ずつ液体を入れていく。

 最後の一種類を入れると瞬時に色が藍青色に変化した。


「はいこの通り、色変化したんで覚せい剤ですね」


 ちらりと遥斗さんを見ると遥斗さんはポケットから手錠を取り出した。


「十四時十八分、覚せい剤所持の現行犯で逮捕だ」


 手錠をかけられ、昆野青年はうなだれる。


「署までご同行願いましょうか?」


 一人目の、逮捕だ。

今回は短いっすね


次話もよろしくです

次話は現在改稿中です しばらくお待ちください

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