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「さて、ここが森の入り口ね。初依頼、サクッと終わらせてやるわ」
王都から少し離れた森の入口で、私は依頼書をひらりと振った。
木漏れ日。穏やかな風。鳥の鳴き声。
……眠くなりそうなくらい平和だ。
手元の依頼書に書かれている内容は単純。森の浅瀬でとれる薬草の採取だ。
本来ならF~Eランク向け。普通なら、カゴを背負って和気藹々と薬草を摘むだけの平和な仕事。しかし、依頼内容の下には少し気になる追記がある。
依頼書へもう一度視線を落とすと、昨日の受付での会話が脳裏をよぎった。
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「お前さんにやってもらいたいのはこれだ。」
グスタフが受付の奥から取り出した一枚の書類を私に差し出した。
「薬草採取…?さっき骨のある依頼を回してやるって大見得切っといて、言ってることと全然違うじゃない!」
不満げに詰め寄る私に、グスタフはニヤリと冒険者らしい笑みを浮かべてこう言った。
「まぁ慌てるな、嬢ちゃん。表向きはただの薬草採取だが中身は少し厄介でな。森の入り口付近で、Cランク級の魔物の目撃情報が多発してんだよ。嬢ちゃんなら魔物が出ても薬草採取できるだろうし、可能なら魔物が現れる原因も調べてほしい。どうだ、骨があるだろう?」
「ふん、確かに面白そうな依頼ね。」
ただ薬草を摘むだけなら、正直少し退屈だと思っていたところだ。
私が依頼の手続きをしようとすると、グスタフの隣で聞いていたセリアが受付に座ったまま静かに問いかけた。
「ギルド長、この依頼をたった今入ったばかりの新人冒険者に回すのは不適切ではないですか?フレア様が強いからと無茶をさせるべきではありません。」
「俺は、こいつの強さだけを見込んで依頼してるわけじゃないぜ。こいつは、何か一つが飛び抜けてるタイプじゃねえ大抵のことを、大抵以上にこなせる。何があってもそれなりの対応ができるはずだ。新人どもが採取する前に逃げ帰っちまうから、薬草が足りてねえんだ。大々的な異変の調査には時間がかかる。最悪、薬草だけでも持って帰ってきてもらえりゃ俺らも助かるだろ。」
セリアは一瞬だけ言葉を詰まらせ、小さく息を吐いた。それから、まっすぐ私を見据える。
「フレア様、初依頼がこのような形になってしまい申し訳ありません。」
……大げさね。
「もし異変が分かったら即帰還―いえ、異変が分からずとも危なくなったら即帰還してください。今回は特例として違約金は設けませんので。お願いします。絶対に無理はしないでください」
セリアの表情は、冗談を言っている人間のものではなかった。
「ふふん。そんなに心配しなくても私は最強なんだから。さくっと解決してあげるわよ!」
「…絶対に油断はしないでくださいね」
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森の中を数分歩いたところで、前方の茂みが大きく揺れた。ガサガサ、と。
足を止め、意識を集中させる。前方だけでなく、左右、そして後方。
――四体。
「…囲まれてるわね」
次の瞬間、茂みの奥からオオカミ型の魔物が一斉に飛び出してきた。
――甘いのよ!
私は空間へ手を差し込み、そのまま銀の剣を引き抜いた。前方の一体をそのまま切り裂き、振り抜いた勢いで横から迫った二体も切り伏せる。背後から飛びかかってきた二体の牙をかわし、返す刀で喉元を断つ。一瞬で戦闘を終わらせ、襲ってきた魔物を観察する。
「……これが、Cランク相当のグレイウルフね。」
囲まれていたことには驚いたけど剣だけで十分だった。
まあ、初依頼にしては、悪くないじゃない。
空間魔術を展開し、剣を異空間に放り込む。木々の間から差し込む光に目を細めながら、私は意気揚々と森の中を進み始めた。
数時間後、魔物を切り伏せながら薬草を採取していると、森の奥から妙に濃い魔力を感じた。グレイウルフたちとは、明らかに格が違う。
「…変異種ってやつかしら」
たぶん魔物たちはあれに追い立てられたのだろう。
立ち上がり、魔力の方へ歩こうとしてふと立ち止まった。
――もし異変が分かったら即帰還
一瞬、セリアの言葉がよぎる。しかし、あの程度の魔物なら私の足元にも及ばないだろう。
放置しても被害が増えるだけだし、どうせ薬草採取にも飽きてきた頃だった。
私は迷いなく歩き出した。
「さっさと片づけるわよ!」
魔力を練り上げながら奥へと進む。
巨大な魔物がいる。次の瞬間。森の奥で、爆炎が弾けた。
轟音。熱風。揺れる木々。そして――静寂。
決着は、一瞬だった。
「……まあ、こんなものよね」
魔物は一歩も動くことなく消えていき、中心には魔石がころりと転がっていた。
完全に姿が消えるとさっきまでの落ち着かない気配は嘘みたいに消えた。
魔石を持ってギルドに帰ろうとして、私は自分のやらかしに気づいてしまった。
「あ」
「薬草、焼いてないわよね……?」




