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プロローグ
パーティは、うまくいっていた。
笑い声が聞こえる。名刺交換をしている人がいる。共通の話題を見つけて盛り上がっているグループがいる。
リリナは会場の端に立って、全体を見渡した。
隅で一人グラスを持っていた男性に気づいて、さりげなく近くの女性に声をかけた。事前のアンケートで、共通の趣味があることを知っていた。
しばらくして、二人が笑っていた。
リリナは次の場所へ移動した。
料理が足りなくなりそうなテーブルに補充を手配して、押してきたプログラムを自然な形で軌道修正して、固まっている参加者に一言かけた。
誰も気づいていない。
そういう仕事だ。
参加者たちが帰り際に言う。
「楽しかったです」
「また参加したいと思います」
「いい出会いがありました」
リリナは笑顔で見送った。
パーティが終わって、片付けをして、事務所へ戻る。
ドアを閉めると、さっきまでの音が耳の奥にだけ残った。
甘い匂いも、油の匂いも、まだわずかに残っている。
暗い部屋に、一人で立つ。
スマートフォンが鳴った。明日のシフトの確認メールだった。
リリナは画面を閉じて、鞄を持った。
また来週も、同じことをする。
そのはずだった――昨日までは。




