ウィルとスク(再生)
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ベリーが訪れる少し前
俺は無音の扉にノックをし
ウィル「あの…服を買いに行きませんか?」
ヴィッターさんから前に聞いたことがある。
女性の服は武装だと…これから先、スクの身の安全のことを考えるならば俺の財布が空になろうとも、買うべきだと思った。
返事がない…
ウィル「スク!?」少し強めにノックする
やはり返事がない
ウィル「スク!入ります!」
ベットに寝ているスクが目に入る。俺は近づき
そっと肩を叩く
ウィル「スク…大丈夫ですか?」
微かに顔がこちらを向き、何かを伝えようとしえる
耳を口に近づける
スクは俺の顔を手で掴み
唇を奪う。
と、同時に魔力が持っていかれる!?
まるで排水溝に流れる水のように魔力が吸われていく…だが嫌な気はしない。あの日、スクに再開して以来。
俺の半分くらいを貪った時だろうか
スクが離し
スク「昨日無理をしすぎた。すまない」
まだほおけてるのだろう、ぽやぽやした口調で続けて喋る。
スク「早く回復せねばならない。ギルドの連中が60階層に入ってしまう前に、
ダンジョンにいる同胞たちを、新しく作った空間に移動させなければ。」
無理にベッドから出ようとし、すっかりやせ細った手足は枝のようで
スクを立たせることも、支えることも出来なかった。
俺はスクを支え、静かにベッドへ戻した。
ウィル「スク、急ぐことはありません。俺が領主になって土地を確保します」
俺はスクの剣であり盾でありたい。
スクは無理だろうと言いたげな顔をした。
だが、俺には考えがあった。
ウィル「他に何か必要なことはありますか?」
スク「そうだな…魔力をくれないか?」
ウィル「いくらでもどうぞっ!」
スク「ありがとう。ウィル」
スク「手を出してくれ。2時間ほどかけて頂くとしよう。」
ウィル「今日は予定がありませんから。沢山吸ってくださいね」
スク「ありがとう」ふわっと笑みを浮かべ、手を差し出す。
スクの手はやせ細っていて、骨が浮き、もう消えてしまいそうなほどの手を取り
静かにスクは眠りにつく
彼女は眠りについて尚、魔力を操作している…
ストローからゆっくりとちまちまジュースを飲むように、少しずつ。
俺はそれがじれったかった…いや、くすぐったかった…
俺は余ってる魔力を使って魔力塊を片手で生成する事にした。これでもっとスクの回復を早められるはずだ。
時も、呼吸も、全てが静かに流れていく
ベットに眠るスクはいつ見ても美しく、彫刻のように老いを感じさせない。黒の髪は宝石のボルツを思わせ、スクがいる空間が美術品のように感じ、魅入ってしまう。
伸びた爪ですら愛おしく感じるのだ。
これが原初のサキュバスの力というやつか?
どれほどの時間が経っただろうか
俺はいつの間にか寝ていた。
魔力供給が途切れていないか、スクの様子と魔力に集中して確かめる。
本当にスクは凄い…俺が寝ていていも魔力の放出を止めさせないようにゆっくりと吸っていた。
自然と漏れ出すような、それくらい少量だ。
だが、回復している様子はない…
かつての艶や生気に迫力さえ感じたオーラは見る影もなく、感じられないほどだ。
どれだけの無理を重ねたのだろうか。
予測が正しければ
クレイブに水に引き込まれまいと抵抗し、
失った半身を再生させながらクレイブと戦闘したに違いない。
クレイブの目に突き刺さっていた大量の魔力を孕んだ杖が何よりの証拠だ。
そして残り少ない魔力で何とか生き延びていたのだろう。
俺は作っていた魔力塊をスクの口に充てる
俺は目を見開いた…当てた瞬間だ…消えたのだ
1時間ほどかけて圧縮した魔力塊が…魔力の総量にして俺の3分の1と言ったところか。
それほどスクの魔力は枯渇しているのだ。
51階層で再開した時の比ではないほどに…
無理もない、再生途中の体を引きずって
ヴァンパイアと戦い、部下にあい、俺を家に送り届けたのだから。
足りるわけが無い。おそらく本人の生命すらも魔力に変えたはずだ。
俺が不甲斐ないばかりに!!!
もっと魔力が必要だっ!!俺はスクの両手を両手で繋ぎありったけの魔力を送り込むことにした
俺は見ていられなかった。
また失うのでは無いかと、せっかく灯った光が消えてしまいそうで怖かった。
早く元気なスクに戻って欲しい!!!そして俺と…また冒険に行きたい…魔法を教えて欲しいっ!!
俺は全ての魔力を注ぎ込むことを決め、意識を魔力に集中する。
コンコンコン
部屋にノックの音が響く。
出なければ
スクの手を離しても大丈夫だろうか…
そっと手をゆっくり慎重に離す。息が荒くなる様子も、血色がこれ以上悪くなることもないようだ。
扉からベッドは死角になっいるからスクはこのままで大丈夫だろう。
俺は万が一に備え短剣を腰に据え
扉を開ける
見慣れた赤い髪にボブの騎士、ベーリが居た。
ちょうどいいところに来た。
ウィル「ベリーさん?お久しぶりです」
体でベッドが見えないよう、ベリーに立ち塞がるようにして立つ。
ベリー「久しぶりね。あんたお姉様にお願いする内容決めたの?」
ウィル「…決めました。」
ウィル「俺は!領主になります」これで、魔族の皆さんが過ごせる場所を確保出来る。
ベリーは予想してたかのようにあっさりと続ける
ベリー「希望はある?」
ウィル「辺境がいいです」見つかるとまずいから
ベリー「辺境!?なんでわざわざ?」
…なんと答えたものか…
ウィル「やりたいことを叶えるためです」
ベリーは疑う余地も無さそうだ。
ベリー「わかったわ。そう伝えとくわ」
脳内にスクが話しかけてくる。
私も出よう。いずれ王の前に出ることになるのだから…
ウィル「それと…紹介したい人がいるんだ」
ベリーは何かに驚いている。
ベリー「ま、魔族?」
腰に吸えていた剣に手を伸ばしたベリーを見て俺は防護をベリーと俺の間に貼る。
ベリーの表情はまるで強敵に出会った時と同じ表情をしている
いろいろな憶測がベリーの頭で飛んでいるようだ。
ウィル「ベリーさん。大丈夫です。この方は僕の師匠です」
彼女は剣にかけていた手を後ろから来た師匠に差し出す。
ベリー「この国の盾、ベリー・シド・ルー。ベリーと呼んでください。」ベリーは確か高貴な身分だったはずだが、ここまでかしこまるのは見たことがない。緊張しているようだった。
師匠は俺の魔力で回復したのだろうか
先程より明るい声で
スク「私は、らいやー…すまない、名はこれだけだベリーさん、ウィルがお世話になった。」
スクが差し出した手を取る。
ベリー「らいやーさん、ウィルさんはとても強い方です。今後も是非お力をお借りしたいのですが、許可を頂けませんか?」
聞いていないぞ!?
らいやー「それは、領主としてか?それとも、ウィルとしてか?」
スクは少し心配なようだった。
ベリー「恐らくどちらともになると思いますわ。この国は情勢的に見れば不利な方ですので…戦ごとも避けれませんの…」
らいやー「意思決定はウィルにある。私にはない。」
ベリー「分かりましたわ。では、私はこれにて失礼致しますわ」
!?俺の答えは聞かないのか!?
ウィル「ベリー!また会おう!」
ベリー「嫌よ〜」手をヒラヒラと振りながら帰って行った。
スク「彼女がいちばん知りたかった事は、私が敵かどうかみたいだ。ウィルは拒否権などはないらしいぞ。」
ウィル「一体どこでそんな会話を!?」
スク「先程聞いていただろう」
スクはヨタヨタとベッドに戻り、倒れ込むようにして寝転んだ
スク「恐らく最北端の土地を譲渡されるだろう。爵位は男爵だろうな。おめでとう、ウィル男爵」
ウィル「それは…強いのですか?」
スク「まあまあ弱いな。私と同胞の為にいろいろと迷惑をかけるな」
ウィル「俺が決めたことです!」
スク「そうか。ありがとう。私は寝る。明日には自由に動ける。」
スクはそう言い残し寝息を立て始めた。
俺も手をつなぎ勝手に魔力を渡しながら一日を終えることにした。
次回も楽しみに!




