第5章 穴
ここが”巨人のへそ”と呼ばれるくぼみ・・・。
あの山から見た時はその正体も分からなかったけど。
ここまで近くに来れば分かる。
もの凄く巨大な穴がそこにはあった。
下は見えないほど深い。
その穴の端には大きな螺旋階段が見える。
どうもこれで下へ下がれるみたい。
もっとも私は降りるつもりは無い。
次の目的地”巨人のてのひら”である高原が見える。
ちょっと高台になってるのね。
「ヨーコ様・・・」
怯えながらフェアが来る。
一体どうしたのかしら・・・?
フェアが指さしている。
そこには・・・人間のような生き物がいた。
他のヒューマノイドかしら・・・?
いや・・・。
それはとても生き物とは言えなかった。
肉が崩れ落ちて目がある所には目が見えなかった。
なんというのか・・・。
私達の世界にもこういう化け物はいる。
ゾンビという生きる屍という存在。
それと似たような存在なんでしょうね・・・。
それがじりじりとこっちに近づいて来ている。
フェアは怖がって私にしがみついている。
こういう彼女を見るのは始めてだわ。
それにしても・・・。
出来る事なら触りたくない。
何か・・・武器になるような物は無いのかしら。
ふと・・・。
その生きる屍の口が開く。
「くぁああああ!!」
なっ・・・!!
突然力が抜ける。
私は地面に倒れる。
フェアも地面に横たわってるのが見える。
何・・・?
意識はある。
別に痺れてる訳でも無い。
単に力が抜け落ちた・・・そんな感じ。
さっきの叫び声の力・・・?
たぶんそうだわ。
それぐらいしか原因が無い。
そんな力を持ってるなんて・・・。
じりじりと近づいて来ている。
くっ・・・どうすれば・・・!?
・・・?
突然。
そいつは私達から離れて行った。
どういう事・・・?
徐々に力が戻って来る。
あのまま何か攻撃してくると思ってたのに・・・。
「あれ?ユニコは?」
そう。
側にいたはずのユニコの姿が見えない。
「あっ!ヨーコ様!!あそこに!!」
穴の方を指さす。
そこには・・・。
力が抜けてぐったりとしたユニコを運ぶ生きる屍達の姿が見える。
まずい!!
「追いかけなきゃ!!」




