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8話
女がむつを見て、にやっと笑った。小バカにされたような笑みに、むっとしたむつはぶんっと日本刀を振り上げて、女の顎下辺りに、先が触れるか触れないかの位置でぴったりと止めた。女は顎を反らして、見下すような目付きでむつを見ている。向けられた日本刀は鞘に納められたままだから、大して気にしていないようだ。
少しの間、むつと女は睨み合ったままだった。だが、女は鬱陶しいと言わんばかりに、日本刀を手で払いのけた。
むつは払い除けられたからと言って怒るでも詫びるでもなく、すっと日本刀を持ち直した。左の腰の辺りで鞘を軽く握って持っている。右手はいつでも抜けるようにと、柄に添えられている。だが、腰を低くして構えるような事はしていない。ただ、そこに立っている。
先に動いたのは女だった。ぶんっと振り上げたバットで、正面からむつを狙うつもりなのだろう。むつも避けずに降り下ろされるバットの先をじっと見ている。
颯介と狛犬は、むつが動こうともしないのに気付いて、あっと声をあげていた。




