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風属性がハズレだなんてありえない! ~転生令嬢が魔法と前世の知識でQOLを上げるまで~  作者: ほすてふ


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21/21

21.プレゼンですわ

 ごきげんよう。風車ミルカ、ミルカでございます。


「これは一体どうなっているの?」

「温風や冷風の魔法ではないな。枠を作り風を通しているのか?」


 わたくしの成果をエリーゼお母様とゲイル兄様に見ていただきました。

 出力された現象としては、暖かい風と、冷たい風が出るだけです。

 ゲイル兄様はやっていることを見て首をかしげています。


「こちら、高温と低温を同時に生み出しておりまして、その空間に風を通して温風と冷風を吹き出しているのですわ」


「火属性魔法や氷属性魔法ではないのですね?」


「すべて風魔法ですわ。一部は無属性や物質で代用できますわ」


「新しい方式の魔法を見せたかったということか?」


 現象だけを見るとたいしたことはありません。

 既存の魔法でできること。


「はい。ですが、それだけではありません。これは、先日お見せした魔法の応用なのです」


「あのドカンのか? ああ、それで思い出した。あれの圧縮率をさらに高めたら危険そうだから気を付けるんだぞ。たぶんあの結界で保持できなくなる。父上も同じ考えだ」


「そうなのですか……わかりましたわ。最大で125倍までにしておきます」


 なぜ結界で保持できないのでしょう。風、空気の動きは遮断できるはずですから……空気ではなくなる?


「おっと、話の腰を折ってしまったな。すまない。続けてくれ」


「はい。消費魔力が非常に低く、熱と冷気の加減が自在。そしてそれを取り出せる構造を考案いたしました。わたくし、これで温水器……お風呂と保冷庫を作りたいと思いまして」


 今回わたくしが考案し実験して実用化したのは、前世でいうところのヒートポンプです。

 理屈としてはエアコンや冷蔵庫に使われているものと同じです。多分。

 大体の記憶から再現したので細かいことは違うかもしれません。


 断熱膨張、断熱圧縮という言葉をご存じでしょうか。

 大雑把に説明しますと、短時間で空気を膨張させると温度が下がり、圧縮すると温度が上がる。

 ファイアーピストンという着火装置もこの仕組みを利用して瞬間的に高熱を生み出し着火するものです。


 先日は断熱圧縮により超高圧超高温が生まれ、それが解放されたことで空気が爆発的膨張を起こし、さらに周囲の空気を高速で押しのけることで衝撃波が生まれ練習場を吹き飛ばしたわけです。


 しかし、加減をすることで適度な温度に調整できることを確認しました。

 発光して爆発の危険があるようなものではなく、大体二倍圧縮でお湯が沸騰する程度の熱さになります。


 逆に気圧を下げれば低温を作れます。体感ですが、三分の二から二分の一気圧程度にすれば冷凍庫を運用するのによいのではないかと思います。


 仕組みとしては、密閉した二つの部屋を繋ぎ、一方を高圧部屋、一方を低圧部屋とします。

 そしてその部屋をパイプでつなぎ、パイプ内に定量かつ一定方向の風を循環する形で流します。これは簡単な風魔法です。初歩中の初歩で消費魔力も小さいです。


 気圧は単純に、それぞれの部屋の大きさで管理します。


 すると先ほどの比率で調整すれば、つまり高圧部屋の体積を一とすると低圧部屋の体積を三から四にすれば釣り合います。


 あとは循環させるだけで目当ての温度を維持することができるわけです。


 そしてそれぞれの部屋に別のパイプを通しますと、パイプ内に熱や冷気が移り――冷気が移るというのは語弊がありますが――とにかく、パイプを通して温風や冷風を作ることができるわけです。

 水を通してもいいですね。



 まとめると、非常に少ない魔力消費で、自在に熱と冷気を取り出せる仕組みを完成させたわけです。


「現在は結界魔法で外壁やパイプを構築していますが、これは魔法でなくても密閉できればそれでいいのです。つまり維持コストはごく初歩の風魔法のみ。普段から纏っている防御魔法よりも遥かに簡単に維持できますわ」


「つまり簡単に水をお湯にできると。冷気は保冷庫に足るほどの物なの?」


「はい、真冬よりも寒い程度に調整できておりますわ。空気を混ぜれば適度な低温にすることもできますし、構造を調整すればもっとやわらかい冷気にもできます」


 この国の気候は冬になると水は凍り、雪が降る程度に寒いです。具体的な温度はわかりませんが。氷点下になることは間違いありません。


「そうすると氷属性や花属性の権益に触るのではないですか? その点をどう考えているのです?」


 この国の寒さ対策は、基本的には暖炉や焚火。燃料を燃やすことです。

 そして燃料は花魔法使いが育てた木を使います。

 火属性魔法?

 魔法使いを、暖を取るためだけに拘束するのは非効率ですね。魔道具にすればいいでしょうが、少なくとも現在は流通していません。理由があるのでしょう。


 また、風属性も、結果的に自身の周りを適度な気温にする、空気をちょうどいい感じにする魔法を纏っているので気温によって苦労することはありません。

 身を守るついでですからコストは変わりません。


 一方夏の暑さ対策はほとんどありません。

 氷属性で、と思ったこともありましたが、使い手があまり多くないのです。

 氷を売って生計を立てている家もありますが、少ないのでいきわたってはいませんし、魔道具で氷魔法を維持して涼をとるというのもあまりいい顔はされません。

 魔道具は戦闘用が主なのです。


 もちろん風属性は暑さにも強いです。日差しが強いなら日傘は欲しいですけれど。



「花属性はこれから忙しくなりますし、生活を快適にするための魔道具が広まれば氷属性の魔道具も販売できるようになるでしょう。差し引きすると利益の方が大きくなるかと」


「花属性が? どういうことだ?」


 首をかしげるゲイル兄様に、園芸部の試みについて概要だけ伝えます。

 成果が出た以上、ここから研究は一気に広がるでしょう。


「あの甘いのはそういうことだったのか……またいつものかと思ったがそれ以上だったのだな」


 デザートのスイートポテトもどきを、ゲイル兄様も美味しそうに食べていました。

 学園の部活で発見されたものは国に共有されるのが基本です。

 その時期については


「ゲイル。上から話が回るまでは学園で言いふらしてはいけませんよ? どこかから漏れるでしょうが、うちが恨みを買う必要はありません」


 お母様が釘を刺しています。


「お風呂や保冷庫というのは応用の一部にすぎませんが、公衆浴場のほかに個別にお風呂を持てるようになれば衛生がよくなります。保冷庫や冷凍庫があれば食糧の保管期間が延びます。腐りやすい肉が中心のこの国の食糧事情を考えれば大きな貢献になると考えましたわ。これを風属性で、しかも小さな労力で賄えるなら風属性の立場が向上するかと思うのです。どうでしょうか?」


 地属性は、できることが多すぎるため、最も高く評価されています。

 水属性は、水という必須のインフラを握っているため評価が高い。

 火属性? まあ、まあね。火力高いですわね。

 風属性も、需要の高いインフラを運用できれば、評価が上がるはず。


 これはその最初の一歩として考えたものなのです。

 戦場での評価は殿方任せですが、後方での評価はわたくしたちがあげることができるはず。


 これまで魔力は、生活圏維持拡大に必要な戦闘用を除くと、非常用のキープや、戦闘用の魔道具などあとは生活に必須なインフラの維持に費やされてきました。

 わたくしはそこに新たな必須インフラを追加しつつ、それを維持できる余裕を増やそうとしているのです。

 余裕を増やすほうはこれから地属性の皆様が中心となって進めてくれるでしょうから、あとは出来た余裕の使い道を用意して投げ込むのです。

 人口が食料生産の増加に追い付くまでが勝負です。


「ミルカ、あなたはそういうことを考えていたのね……。わかりました。最終的にはガイル様の判断が必要ですが、まずはその機構とやらを実際に作ってごらんなさい。必要な資材は用意しましょう」


「ありがとうございます!」


 お母様からの許可が出ました。


 次は試作と稼働実験です!

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