11
ドーム状になった透明な蔦には、人が通れそうなくらいの穴が空いている。足下には砕けた残骸が、散らばっていた。
「これは……氷か」
「うん、ごめんね。床に散らばっているのを、片付けるから。そっちのは、時間が経ったら消えると思う……」
形を保っているものに、触れてみる。最初は硝子かと思ったけれど、違うことに気づいた。これは術で作り出された氷だ。
―― あいつだな
ジルベールの従兄の顔が、浮ぶ、ジルベールは水の適性はない。室内でこんなものを作って、一体何をしてるんだ。
「レイザード?」
「……」
拳を作ってからスナップを効かせて、手の甲で打つ。薄い直ぐにでも割れそうな氷は、びくともしない。逆にこっちが、ダメージを受けた。見た目は薄いが、魔力で強度を上げているようだ。
「レイザード、大丈夫? 痛めてない?」
「問題ない。ジルベール少し試したいことがある。良いか」
「かまわないよ」
許可を得てから、術を構築する。氷を生成して剣の形に、整えてから思い切り振った。
薄氷のような厚みと、剣の形を模したものが、ぶつかればどちらが壊れるか。普通に考えれば、前者だ。けど術を構築して作った剣にはヒビが入り、装飾品の様に華奢な氷の蔦は変わらずに存在している。
「これはお前の従兄の術か?」
「そうだよ。あいつが作った」
ガラス細工のような華奢なものだ。それがここまで強度をもつとは、相当レベルが高いように思える。
―― 隠しキャラか?
俺はモブではあるけれど、努力するモブだ。そこらのモブよりは、実力はある―― はずだ、多分だけど。一応、俺はそこらのモブよりは強いと仮定して、その俺が術で作りだしたものに傷が付いた。それもどう見ても、俺が作った方が強度が上に見えるのにである。
となるとモブじゃ無い可能性も出てくる。
まあジルベールと良く似た顔をしていて、モブですとか言われても、そっちの方が違和感あるからモブの線は薄いか。隠しキャラか又はサブキャラか。
「ユージスに、興味が湧いた?」
「あいつに? そうだな少しは、ある」
サブキャラならまだしも、隠しキャラだった場合が問題だ。そうなるとロイと関わる可能性が出てくる。
もし隠しキャラなら、イベントが発生するだろう。それ自体は良いんだが、あいつ微妙に性格が悪い。ロイは良い奴であるから、あいつと関わることで嫌な思いをするかもしれない。それが気がかりだ。萌えは摂取したい。素晴らしいイベントも見たい。だが主人公が傷つく展開は、望んでいないんだ。
「そっか、良かったらお茶を入れた後に、あいつのことを話すよ。ちょっと待ってて」
「ああ」
―― 気のせいか?
床に散らばった氷の残骸を片付けて、ジルベールが部屋を出ていく。なぜだが表情が悲しげに見えた。
―― やっぱり、あいつが何かしたのか……あれ?
気落ちしたような表情が、気になる。何かあったのかと考えていると、気になるものが見えた。従兄が作ったと言っていた氷の蔦が、壊れているところだ。断面に、引っかかりを覚える。
ドームのようになっている中に入って、内側から眺める。どう見ても内側から切り裂いたように見える。それも―― 風か?
一部壊れているところは、人が一人通れそうな大きさだ。それでその壊したのが、内側からで風の術を使ったように見える。
―― もしかしてジルベールが、閉じ込められてたのか?
えっ? こわっ
思わず声が、出そうになった。一体どういうシュチュエーションで、ジルベールを閉じ込めたんだ。あいつ危ない趣味でも、持ってるのか。
もしかしてジルベールを閉じ込めたあと、椅子に座って性格の悪い笑みを浮かべて鑑賞してたのか。何て危ない奴だ。俺はBLは大好きだが、そういうちょっと危ないのは求めてない。
もしかして閉じ込められてたから、店まで来れなかったのか。
なんてことだ。あいつが一人で現れたときに、様子を見に行くべきだった。まさか性格が悪いだけでなくて、危ない奴だなんて思わなかったから判断を間違えてしまった。
―― すまない、ジルベール
そりゃ切れたくもなし、気落ちもするよな。従兄が変態なんて、俺も嫌だ。ちょっと嫌いなんだろうな程度でしか考えてなかったのが悔やまれる。
―― 決めた
もしまたあいつが現れるようなことがあっても、ジルベールから遠ざけよう。実力に差があるから、守れるかは分からないが逃げる間の時間稼ぎくらいは出来るはずだ。俺は確かにモブだが、変態から友達を守るくらいできる。
―― とりあえず、戻ってくるまで待とう
あいつの話に付き合って、町を歩いている場合じゃなかったんだ。判断を悔やみながら、戻ってきたら謝る事に決めて椅子に座った。




