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「あのレイザード……」
「なんだ」
遠慮がちに名前を呼ばれて、腕を掴んだままな事に気づく。俺が前を歩いていたから、歩きづらかったのだろう。
「すまない」
「ごめん」
ほぼ同時に出ていた言葉が、被る。
―― なんでジルベールが、謝っているんだ?
特に謝られる理由が、思い当たらない。なぜかジルベールも、少し首を傾げている。
「なにを、謝っている」
「えっ、従兄が迷惑かけたから……俺のせいでもあるし。本当にごめん。色々と巻き込んでしまって」
従兄がいないからか、もう怒っている様子も無い。地面を陥没させて何かに、切れているらしい時の怖さもなかった。何時ものような覇気がなくて、少しだけ気がかりだ。やっぱりあいつに、何かされたのだろうか。
「確かにお前の従兄に腹立たしさは感じたが、お前が何かしたわけじゃ無いだろう。謝る必要はない」
「ありがとう……君は優しいね」
従兄は従兄、ジルベールはジルベール、血が繋がっていようと別の人間だ。あいつのことで、ジルベールが謝る必要は全くない。だというのに、まだ気に病んでいるようだ。
「喉が渇いた。美味い茶を入れてくれ」
「かまわないけど……」
いきなり脈絡のない事を言ったからか、不思議そうな顔をしている。
いくら気にするなと言われても、気にするのが目に見えていた。だから美味しいお茶を入れることで、チャラにするという意味なんだが唐突すぎて伝わらなかったようだ。
「今までで、一番美味い茶だぞ」
「……わかった。ありがとう」
念を押すと、通じたみたいだ。表情が柔らかくなった。
それにしてもジルベールは、本当にコミュ力が高いな。俺のような奴とも、意思疎通がとれている。
「あっ……」
「どうした?」
ジルベールの家に向かおうとすると、何かを思い出したように一言発して動きを止める。そのあと変わっていく表情で、家に行くのを躊躇しているのが分かった。
「俺を家に入れたくないなら、俺の家でも良いぞ」
「えっ、そんなことはないよ! ないんだけど……」
即座に否定してくる割には、言いよどんで声が小さくなっていく。
別にジルベールの家でなければ、駄目なわけじゃない。ただ単に俺の家より良い茶葉が、あるだろうという下心があるだけだ。茶なら俺の家でも飲めるし、入れるのがジルベールなら俺が入れるより確実に美味いから問題ない。そもそも茶云々は、ジルベールが気にしているから言った。ただの口実だ。
「ちょっと散らかっているから、お茶を入れるのは片付けてからでもいいかな」
「ああ、かまわない」
少しだけ目を伏せてから、直ぐに戻す。何か悩んでいるようにも見えたけれど、大丈夫だろうか。
「どうぞ」
「ああ」
何度か来たジルベールの家に、やってきた。相変わらず広くて俺の家とは、大違いだ。
玄関を入りビングに通されたとき、何かに光が反射して眩しく感じる。一体何かと思ったら、透明な蔦のようなものがドーム状になっているのが見えた。




