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会話を終わらせようとしても、上手くかわされる。立ち去ろうにも、上手くいかない。
親しくないどころか少し前にあったばかりの他人と、中身のない会話をする。まるで主人公とキャラのイベントが見たいのに、突如として発生した脇カプを見せられているような苦痛を感じる。一体俺が、何をしたというのか。
これが完全に無関係なら、お構いなしに立ち去れるのだが一応ジルベールの親戚だから少し躊躇してしまう。
―― 面倒だな
人混みに紛れておいていくことも出来るが、初めて来たと言っていたから迷子になっても困る。いや俺は困らないが、間接的にジルベールが迷惑を被りそうな気がする。
こいつを見ていたあの嫌そうな表情から、察するに良い感情は持ってないだろう。そんな奴のせいで、嫌な目に合うのも哀れだ。
「それでジルベールが……」
「……そうですか」
町を案内しろと言った割には、離すのはジルベールのことばかりだ。いや違うな、なんとなしに俺の事も探ろうとしている気がする。
―― そういうことか
意図の読めない問いに答え続けて、やっとこいつが何を考えているか気づいた。
理由が分かれば、簡単なことだ。こいつはジルベールが、心配で確かめに来たんだ。
今まで友達がいなかったジルベールは、俺と友達になれたとき嬉しかったのだろう。それできっと従兄のこいつにも、手紙を書いた。初めて、友達が出来たって。
届いた手紙に、こいつは気が気じゃなかったはずだ。今まで一人とも友達のいなかった年下の従弟に友達が出来た。こいつが言うには二種類の適性持ちで、金持ちで、真性ボッチだ。何処の馬の骨とも分からない相手に、利用されているんじゃないか。また希有な二種の適性に、群がって来たんじゃないかって案じたに違いない。
だからさっきから、わざとジルベールを悪く言う。そして俺を試すような言動をする。
それで望の答えが、返ってきたらこういうつもりなんだろう。『君はジルベールに、相応しくない』って。
「大丈夫ですよ」
「うん?」
勝手に勘違いして、試されている。正直なところ、良い気分ではない。だが他国からジルベールを、心配してきたのだから安心させてやろうと口を開く。
「俺はジルベールにたかるつもりも、利用するつもりもないので」
「どうしたんだい、いきなり」
意図的だろうに、俺が返せば不思議そうな表情を作っている。だが面倒なのでそのまま話すことにした。ジルベールのことが心配で来たのなら、問題ないってことを伝えれば安心するだろう。というか鬱陶しいから、さっさと帰ってほしい。いくらジルベール似の美形だからと言って、単体の男なんてどうでもいい。
「さっきも言いましたけど欲しいものがあれば、自分で稼いで買います。あと確かに二種類の適性は珍しいですけど、適性云々の前に俺にとってはあいつがジルベールであることが重要なので。どうでもいいです」
すごく長く喋った気がする。明日になったら普段仕事をしていない顔の筋肉が、悲鳴を上げるんじゃないだろうか。
「俺のような奴が、ジルベールの近くにいることが心配なんでしょう?」
「……」
何も返してこない。表情からは何も読み取れないけれど、元々コミュニケーション能力は低いから無駄な努力はしない。
「でもさっきも言った通り、俺はジルベール利用するつもりはないです。それにそのうちジルベールには、沢山友達ができますよ。あいつには良いところが、沢山あります。その良さに気づいて、取り巻きじゃなくて対等な友達になろうって思う人もきっとでてくる。出会える」
「君にとって、ジルベールは友達?」
―― あー
絶対、明日は顔面筋肉痛だ。帰ったら、氷を作って冷やそう。そうしよう。
探るような目つきになったジルベールの従兄の真意は考えずに、自分の筋肉のことを考える。
「俺はそう思っていますけど。貴方に何か知らせを、送ってきましたか? もしかして初めて友達が出来たからって喜んでいました? けどさっきも言った通り、そのうち俺の事は気にしなくなると思いますよ。たくさん良い友達ができて、俺はその中に埋もれて見えなくなる」
なんだろうか、痛い。具体的にどこかというわけでは、ないけれどじわじわと痛みが、広がっていく。きっとアレだな、顔面の筋肉が、もう限界だって訴えているんだろう。すまない顔面の筋肉よ。全てジルベールの従兄のせいだ。
「だから心配しなくても、大丈夫ですよ」
「……君はそれでも、構わない?」
―― 別に、元に戻るだけだ
友達が一人出来て、ボッチを卒業して、それがまたボッチになるだけだ。特に気にすることでもない。
しいて言うなら友達が出来たと、喜んでいたヴァルに知られないように誤魔化すのを苦労しそうなことくらいだ。もの凄く喜んでくれていたから、またボッチに戻たときに悟らせないようにしないといけない。
それにしても、なぜそんなことを聞いてくるんだ。こいつにとっては、俺のようなモブよりちゃんとした友達が出来た方がいいはずだ。モブの俺とは違って、身元のはっきりしてる、そう例えばロイとか。きっと主人公なら、こいつも友達の素性を心配しなくても大丈夫なはずだ。
「……どうか、しましたか」
「いや……久しぶりに、あいつに同情したよ」
これだけ頑張って、喋ったんだ。これで解放されるだろう。これでも無理なら、もう強行突破をしよう。そう考えていたら、なぜか乾いた笑い声と溜息をつかれた。




