4
「やあ」
「ジルベールは、どうしたんですか」
まるで見張っていたかのようなタイミングで、そっくりさんがまた現れた。店を締める頃にまた来ると、二人で帰っていたがぴったりすぎて疑わしく感じる。
「あいつは、用が出来てね。来れなくなったんだ」
「ジルベールに危害を加えたりは、されてないですよね?」
どうやら予想外の返しだったらしい。一度、大きく瞬きをした。
あいつはジルベールは、もし約束を違えることになったら自分で言いに来る。意外に義理堅いし、きっちり約束も守る奴だ。どう見ても嫌っているだろう相手に、伝言を頼んで終わりなんてしないだろう。
そうなるとジルベールが、此処にいないのはあいつの意思ではないということになる。
「そんなことは、しないよ。大事な従弟だからね」
―― どうするか
嘘かどうかの見極めはできない。ジルベールがこいつを嫌っているのは、なんなく分かったけれどそれだけだ。どういう関係性なのかまでは、予想しか出来ない。
ただ一つ分かっているのは、力尽く口を割らせるってことは不可能ってことだ。俺は何時こいつが術の構築をしたのか、まったく気づかなかった。だからもしその手段をとれば、確実に負ける。
「……そうですか。失礼しました」
―― 考えすぎか
仲がどうであれ親戚ではあるらしいし、そこまで心配する必要も無いだろう。
「すいません」
「おっ、どうした」
手短に話とやらを聞いてからまた戻ってくることに決めて、隣で店を開いているおっちゃんに声をかける。
「あのジルベールが、来たら……見た目はこの人を若くしたような……」
「ああ、良く来る兄ちゃんか。なんだ伝言でもあるのか」
名前を言ってから誰だと返されそうだなと思って、そっくりさんに視線を向ける。それで直ぐ分かったらしい。意図を察してくれて、聞き返してくれる。
―― そんなに良く来てないけどな
市場に用があるらしいジルベールが、ついでに店に来ることがある。新鮮な野菜が多いから買いに来ると言っていたから、そのついでなんだろう。けど通り道だから、無言で通り過ぎるのは気まずいらしい。通る度に声をかけてくる。それをよく来るのだと、勘違いされたようだ。
「無理は、しなくて良いと」
「分かった」
そっくりさんの事が、苦手らしいのは分かる。だから律儀に店に来たら、こいつに会うことになるかもしれない。律儀に約束を、守らなくていい。けどあいつの性格を考えて、遅れてでも来るかもしれない。だから無理をするなという意味を含めた。
とくに理由を尋ねることもせずに、頷き返してくれたおっちゃんに頭を下げる。
「お待たせしました」
「君を待ってる時間も楽しいから、構わないよ」
売上をしっかりと鞄にしまってから、そっくりさんに声をかける。ジルベールとこいつが、鉢合わせたら可哀想だからさっさと移動をすることにした。
一応、待たせたことを謝ると、歯の浮きそうなというか鳥肌が立つことを言われて思わず腕を擦った。




