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「粗茶だが……」
「ありがとう」
テーブルに、安物のカップに入れた茶を置く。ジルベールの家で、茶を飲んだ時は、物凄く高そうなカップだったから差が酷くて少し恥ずかしく感じた。
見るからに安そうなテーブルに、座れればいいやと買った椅子
全体的に、庶民感が漂うのか俺の家である。
騎士Aを見送った後、店主に騒がしくした事を謝りに行った。店には他に客もいないし、店自体に破損もない。けれど一応、謝りに言ったんだ。
オッサンは、店の奥で調理をしていたらしく何かあったのかと言う顔をされる。話す事でもないかと、少し騒がしくしたからと言って店を出た。
そのあとジルベールと、一緒に店を離れたのだが物凄く気まずい。何と言っていいかが、分からない。助けてくれたことに礼を言えばいいのか。それともまた変な事に、巻き込んだことを謝ればいいのか。
いや素直に、礼をして謝ればいいんだろうけど……なんかジルベールが、なにか言いたげな顔をしてるから話が切り出しずらい。
沈黙が辛くなった俺は、しょうがなく俺の家に誘った。話してこないという事は、外では話し辛いことなんじゃないかと思ったからである
だがジルベールを家に入れてから、さっそく後悔した。俺とジルベールの家の差が酷すぎる。
俺の家は狭い。一人で住むには、まったく困らないが狭いんだ。それに比べて、ジルベールの家は広かった。一人暮らしだから、馬鹿でかい訳じゃない。でも広々として解放感があった。それに家具も内装も、なんか高そうに見えた記憶がある。
ジルベールが俺の家に、入るのは二回目だ。だから気にする必要はないんじゃないかとも思う。だがあの時は、騎士も王子もいて尚且つ緊迫した雰囲気だった。ゆっくり家の状態を、見てはいないだろう。尚且つ夜で、暗かった。
それにくらべて今はまだ陽も明るいし、露骨に格差が丸見えである。
そしてジルベールが、浮いている。こいつは軽薄そうに見えようが、服を着崩そうがどこか育ちの良さが透けて見える。そんなこいつが、ザッ庶民という感じの俺の家にいるから、物凄く浮いて見えるんだ。
まあ来てしまったものは、しょうがない。俺は諦めて、腹をくくった。
「レイザード」
さあここなら、誰もいない。何か言いたいことが、あるならはっきりと言え。そう言おうとした時だ。先に声をかけられる。
「なんだ」
「その……君は何を抱えているんだ?」
いったん目を伏せた後、珍しく言いよどむように言葉を発する。
「俺には、君が何を背負っているのか分からない。
けれどもし、少しでもレイザードの力になれるなら…… あんなことをしておいて、厚かましいとは思う。けど何か力になりたいんだ」
ああなんか俺が、暴走しているから何かあると思ったのか。すまないジルベール、ただのバクなんだ。
俺がただのモブだから、放置されている。はた迷惑なバクのせいなんだ。
心配させているようだから、それに関してはすまないと思っている。だが話せるわけがない。
頭の中で声がする。変な映像が、浮かぶんだ。そんなこと言ったら、確実に危ない人認定されてしまう。
本来なら攻略キャラたるジルベールは、モブの俺の面倒事に巻き込まれることはないはずだ。なのになんだかだと、巻き込んでしまっている。これ以上、変な事に巻き込むのは忍びない。
本当ならジルベールは、ロイと良い雰囲気になって眼福な光景を俺に召せてくれている筈だったというのに……世の中上手くいかないものである。
首を振ると、悲しそうな顔をされてしまう。あんまりない良心が、少し痛んできた。
「その巻き込んですまなった。あと礼を言っておく。あいつといて、不安だったんだ。けどお前が来てくれて、酷く安心した。だからありがとう」
今頃になって、まだ謝っても礼を言ってもいない事を思い出す。
なので口を開いたのだが、ジルベールは目を見開いて固まった。なんか前にも同じ光景を、見たきがする。あのときもたしか礼を、言ったんだったか。
どうやらこいつの中では、以前として俺は礼の一つもいえない失礼キャラのポジションをキープしているらしい。
失礼にも、程がある。いくら俺が無愛想だろうと、ほぼ表情が動かなかろうとも礼くらいはいえる。おれはそんな失礼な奴じゃないぞ。
色々と言ってやりたかったが、迷惑をかけたてまえ言う訳にもいかない
しょうがなくジルベールを放置して、自分でいれた茶を口に含む。
――本当に粗茶だった。
自分でいれたから、文句も言えない。言い訳をするなら、少し前までは美味い茶を飲んでいたんだ。ジルベールから貰った、上等な茶葉があったからな。けどなくなって、適当に買ってきたんだが見事に不味い。
不味い、不味いが吹き出すわけにもいかない。しょうがなく固まっているジルベールを、見ながら全て飲みつくす。
まったく何時まで固まっているのか。そろそろ、うごきだしてもいいだろうに。
そう思うが、ジルベールは俺を見たまま動かない。
いつまで立っても動き出さないジルベールの様子を観察しながら、しょうがなくしばらく待ち続けた。




