68・日時計の塔
ガングレーナの竜巻を纏わせた拳が、アルガスの腹に打ち込まれる!
すべてを引き裂く風の猛威が、炸裂。
「これは、もう……」
血しぶきが舞い、思わず目を逸らすジゼロジゼロ。
「ちゃう!!」
アルガスは、己の左足を腹に挟み込み、それを犠牲にすることで致命傷を防いでいた。
「そこまでするかい!!」
「ああああああああああっ!!」
アルガスが見せた裂帛の気合と共に、散弾のように琥珀が飛び散った。
「ぐうううううっ!?」
風で防いだガングレーナだが、それでも勢いは殺しきれない!
大量の散弾を浴びてそのまま東屋のようになっている窓から吹っ飛ばされている。
「ハアッハアッ……」
アルガスもまた無事ではない。
左足は千切れてしまい、代わりに琥珀で作った足を無理やり繋げている。
雷の精霊は、心配してアルガスのそばをうろちょろしている。
今が、チャンスだ!
ジゼロジゼロに目配せする。
明らかにガングレーナを心配している様子だが、彼女は【国宝】。
そこは信じるしかない。
その意図も込めて、視線を向ける。
「!」
彼女にも意図が伝わり、ゼフィーの方へ走り出す。
俺は隙を作るべく、バナナの木を生やしながらアルガスに近づいていく。
ゼフィーが埋まる柱はこれでもう見えない。
ジゼロジゼロの【ドリル】なら、ゼフィーを救えるはずだ。
「……何を企んでいるのかな……?」
アルガスは接近する俺に気づき、琥珀を周囲に滞留させた。
「さぁな。あんたと俺の精霊観はだいぶ違うらしいしな」
これ以上は下手に近づけないが、ならば話をして時間を稼ぐ。
「らしいね……君には彼女の声は聞こえていないようだ。日時計の塔にいながら……」
「日時計の塔……?」
「そんなことも知らないのかい……ここは、天に最も近い塔……あらゆる精霊と近いところ……精霊との交信のために作られたもの……」
「そうなのか……」
灯台もいらない湖の上に、わざわざ塔を建てたのはそのためか……!
太陽に近いのは火、湖中だが陸でもあり、風にさらされ、雷にも近く、日時計に見立てることで時も表しているのかもしれない。
なるほど、この塔の役割が見えてきた。
ならば、アルガスがここに陣取ったのは――
「ソウヨソウヨ! オシャベリスルトコロ!」
「だけど……君には聞こえなかった。彼女の悲痛な叫びが……」
「……彼女というのは、【精霊琥珀】の中の精霊だな?」
「当たり前だろう……」
「なら――」
ずっと気になっていた。
外れ大迷宮は、精霊たちが作ったダンジョンだった。
そこには、火と風の砂漠、水と土の湿原、水と火の温泉、光と闇か、もしくは時空に関係する宇宙と、それぞれの精霊の影響を感じさせた。
精霊不在の属性は雷だった。
だから、雷の精霊がアルガスについているのは、理由はともかく、無い話ではない。
しかし――
「その精霊は何の精霊だ?」
「さぁ?」
「!?」
ばかな。
アルガスでも知らないだと!?
「そんなわけがない! だってお前には雷の精霊がついているじゃないか!!」
「シラナイソンナコ」
「は?」
雷の精霊も、知らない?
「ヨクワカラナイケド、セイレイナノハマチガイナイシ、アルガスガスキニシタライイ」
「重要なのは……彼女が助けを求めているということだけだ……」
待て。
待て。待て。
おかしい。
何かが、おかしい。
「だから……彼女の解放の邪魔はさせない!」
「しまっ……!?」
気を取られていたのは、俺の方だった!!
ゼフィーを助け出そうとしていたジゼロジゼロにアルガスは気づいていたのだ!!
アルガスの声に合わせるように、ゼフィーを包んでいた琥珀が、ジゼロジゼロに襲い掛かった――




