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108・天敵たるドラゴン

「ぐあああああああああああああああああ!!!」


 炎天君の自己犠牲により、タイクーンはズタズタになっていた。

 この世界に本来存在しないドリルへは、ドラゴンの鱗も適応しておらず、耐えられないのだろう。

 爬虫類人たちも俺とゴーレムで押し返している。

 これなら、と思った瞬間、タイクーンが穴を壊さんばかりに身をよじる。


「この程度で、死んでたまるかァーーーーーーー!!」


 タイクーンが強引に翼を広げて飛び出した。

 体の部位が引きちぎれるのもお構いなしだ。

 翼も穴だらけで飛ぶことは出来ず、ジャンプするだけだすぐ床に落ち、地震のような地響きを上げた。

 穴だらけの体から大量の血を噴き出すが、その地の色は赤ではなく青だった。

 もう、こいつはドラゴンではないのだ……。


「ぐるるるるるる……」


 喉を鳴らしたタイクーンは、生き残りの爬虫類人たちへ視線を向けた。

 そして――


「があああああああああう!!!」

「ぎゃあああああああ!!!」

「あぎゃああああああああああ!!!」


 爬虫類人たちに食らいついた。

 その歯に突き刺されたトカゲ男が、絶望して呻く。


「な、なぜ……」

「肉が足りん」

「あなたも、所詮は……ドラゴンか……」

()()()()()()()()()

 異界では共食いなんて、日常茶飯事なんだよ」

「な……」


 ぐしゃっ、と嫌な音が響き、爬虫類人たちは咀嚼されてしまった。


「ひどすぎますわ……」


 ジゼロジゼロが顔面を蒼白にしてつぶやくが、全く同感だ。

 異界は「人が人として住めない世界」だと言うが、それが痛いほど伝わって来た。

 こいつらは、セカンダールとも地球とも根底から違う。

 決して価値観を共有できない、異界。


「ふぅ……これでよし」


 タイクーンの体の穴が、ふさがっていく。

 回復とはおそらく概念の異なるもの。

 おそらくあれは、部位の補充だ。


「さて、それじゃあ君たちを殺すとしよう。

 尊い犠牲に、報いるためにもね」


 タイクーンの全身に苔が生えて来る。

 それが奴の体を伝わって、床に広がっていく。

 その苔が触れた炎天君の遺体が、ボロボロと崩れて行く。


「なっ!?」

「わしの【竜才】は【地衣界ちいかい】。生き物を分解するかわいい苔ちゃんたちだ。

 ドリルでもなんでも使えばいい。そんなのじゃこいつらは止められないけどね」


 苔は、炎天君の巨体をあっという間に分解して苔むした小山にしてしまった。

 あんなもの、食らったら終わりだ。


「させるか!!」


 俺は床パネルを操作し、それを縦に並べて壁を作る。

 これで少しは――


「悪いね……わしの苔は精霊の術をハックできるんだよ。

 何しろたっぷり異界律を染み込ませてあるからねえ!!」

「あっ!?」

 

 奴の言葉通り、苔の触れたパネルが勝手に左右に分かれ、道を作ってしまう。

 これでは、防ぎようがない。


「かかかかかかかか!!

 存分に絶望するといいよ。

 こっちはドラゴンさえいなければもう怖いものはないんだから!」

「くそっ……!!」


 あれじゃ、【生】を叩きこむことも出来ない。

 触れている間に、周りから分解されてしまう。

 打つ手がない……!


「ほーぅお、そうかい。

 そんじゃあ、良かったな!!」


 ごうっ、と炎が巻き起こり、苔を焼き払う。

 火炎放射器ですら追いつかないであろう、凄まじい火力だ。

 もはやナパーム弾の域だ。


「な、ななな、なああっ!? わしの苔が!?

 誰だあっ!!??」


 炎は天井から噴き出していた。

 天井が割れ、そこから黒い竜が首を出していた!

 そして、その声は――


「フォース!!」

「ああ、待たせたな!!

 ドラゴンならここにいるぜ!!」

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