8話 提出 ☆
エロ度★
いつになくぐっすりと眠れた。いつ以来だろうか。
今日はふたりとも休みだったことを思い出す。
ベッドを見ると寝てるはずのレンがいない。ゆっくりと起きてレンを探す。
水の流れる音。
レン「あれ。もう起きたの?早いね。おはよ」
トイレから出てくる。
レン「朝食は昨日の残りでも良いかな。それともパンにでもする?」
洗面所で手を洗う。
レン「じゃあ昨日の残りで軽く食べよ。ボクお腹空いちゃった」
宏一《ボクか。本当に可愛いな》
宏一「そうだ。今日一緒に役場に行かないか?」
レン「なにするの?」
宏一「離婚届を出してくるんだ」
レン「それでなんでボクも?」
宏一「俺ら男同士だから結婚なんてできないだろ?だから、離婚届は妻だった恵美とのものだけど、レンと付き合うためのものだと思ってくれたら。俺なりの決意表明だよ」
レン「なんか複雑だなぁ。コウイチさん。それでボクが喜ぶとでも?」
宏一《あれ?思ってたのと違う》
レン「ボクはね。つい先日までセフレだったんです。覚えてますか?ボクはその時に知ったんですけどね」
ちょっと語尾が強い。怒ってらっしゃる。
レン「独身だと聞いてたのに、奥さまがいらっしゃって。そりゃね。ああいうアプリで知り合うくらいだから偽名を使うだろうし、年齢とか色々変えるのはわかる。でも、奥さまがいるならいるって言ってくれたら。そしたら、セフレでもいいと思うじゃない。奪うなんて考えたくもないよ。人の家庭を壊さないように気を付けるのに」
レンの本音を聞けた。また俺は余計なことをしてしまったんだ。
レン「それでも結果、コウイチさんの家庭を壊しちゃったし、奥さま出て行ったその日に入れ替わりで泊めてもらっちゃったし。ボクもボクだけど。でも、大好きなコウイチさんに頼まれたのに断るなんて出来ないよ。それで離婚届を一緒に役場に行って、決意表明されるのは違うよ。ボクはそんなところまで望んでないから」
宏一「ごめんね。レン。レンのことをイチイチ傷つけて。本当にダメな男だ。俺は。俺の事を大事に思ってくれてる人を傷つけるだなんて。そうだね。でも、離婚届はこの後ひとりで行ってくるよ。そして、恵美にはメールで知らせて、アドレスも消すよ」
レン「アドレスとかはボクの知るところではないから好きにして。そうだな~。じゃあ、午後は一緒にご飯食べに行こ。何が食べたいか考えおいてね。どこでもいいよ」
明るくいつものやわらかい笑顔で話してくれた。
宏一「そうだ。レン。ちょっと玄関出てみて」
部屋を出る。
レン「ん?どうしたの?」
宏一「表札見て。これが俺の本名。日野宏一」
レン「コウイチさんって宏一なんだ」
離婚届で既に見ていて知っていたが、それとは別に表札を見て納得。順序が色々と違うがそれでもどことなく嬉しかった。
宏一「俺の自己紹介するよ。日野宏一32歳。会社員で開発営業部で働いてる。社名は」
レン「待って。さすがに社名まで言わなくていいよ。無理しないで」
宏一「良いよ別に。レンが俺とケンカして職場に乗り込んでくるのが頻繁にある予定があるなら言わないけどさ」
レン「そんな予定はありません!」
笑う。
宏一「でしょ。知っておいてくれたら嬉しいよ。社名は、カンパラって言ってね。大人のおもちゃを扱ってるんだ。その開発営業部にいるんだ。たまに外回りしてるけど、基本開発をやっててね。爆発的に売れるようなのじゃないけど、まだまだ成長の余地がある業界だと思うんだ。騙してて悪かったね」
小さく首を振る。
レン「質問。宏一さんからどうしてヒロにしたの?」
宏一「それはね。ニックネームなんだ。宏一の宏をカタカナにするとヒロシだろ。そのヒロシからシを外すとヒロ。徐々に変わって落ち着いたのがヒロってこと」
レン「そうなんだ。奥深いね」
宏一《そうか?まぁいいか》
宏一「あとは、趣味。趣味は、映画とかドラマかな。最近は、アニメを見るようになったかな。スマホで見ることが増えたよ。もうテレビでみようとしなくても見れて便利だよね。昔ながらの恋愛とか派手なアクションはもうお腹いっぱい。今は、近未来なAIや人型ロボットとかが好きかな。ネコ型ロボットじゃないよ」
時折親父ギャグが入る。本当に32歳なのだろうか。疑いの目を向けたくなる。
宏一「自分に置き換えて考えるのが最近は多いかな。そういうところだと、アニメは色々と考えさせられるのが多いね。異世界とか。俺くらいの年齢の人が好んで見てるのかなって。異世界に転生したらって、生まれ変わったらと同じだよね。あの頃の自分に戻ってやり直したいとか。そういうのをひっくるめての異世界転生だと思うんだ。って、アレ?何の話だっけ」
クスクス
レン「宏一さんがなんとなく分かるような気がしてきた。一種の哲学者なんだね」
宏一「哲学者?そんないいもんじゃ」
レン「哲学と聞くと大袈裟に聞こえるかもしれないけど、前にラジオで聞いたんだけど、哲学って生活の一部なんだって。だから突き詰めて考えようとするだけでも哲学なんだって。気づいてなくても宏一さんは哲学者なんだよ」
宏一「へぇラジオね。若いのに聞くんだね」
レン「ラジオに年齢は関係ないよ。ほら、ボクの仕事って夜くらいまであるでしょ。帰り道にラジオアプリでタイムフリーにして聞いてるんだ。ラジオって、思わない情報が入ってきて面白いんだよ。その番組は、敷居が低いから聞きやすくて好きなんだ。そこで、哲学者の先生が出ててね。敷居が高くなるかと思ったらすごく低くて。生活感のある番組で好きなんだ」
軽く頷く。
レン「どんな番組でも良いから聞いてみたら?」
時計を見る。
宏一「お昼になっちゃうから先に役所行ってくるわ」
レン「わかった。いってらっしゃい。いつもの待ち合わせ場所で良いかな」
指でオーケーサインをして家を出る。
レン「あのサインは結構おじさんだよね。でもいっか。そういうとこも可愛いし」
9話は、3日です。
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