魔獣
クライマックスです
「「なにっ?」」
唐突に飛んでくる火の玉の嵐を盾で防いで飛ばしてきた奴の方を見る
「アイ、なぜ!?」
アイがこれまでに見せたことのない邪悪な笑顔をして答える
「AIは二人いたのよ、片方は彼
そしてもう1人はこの女、でももう手遅れね
今、私が 乗 っ 取 っ てしまったもの」
俺にはコイツの正体の手がかりが一つだけある
「お前がバグなんだな」
アイが頷いて答える
「開発者達はそう呼んでいたわね、でも実際はチョロかったわ
少しなりを潜めただけでバグを解消できたと勘違いして、貴方のような馬鹿を送り込んでくるんだもの」
「お前…!すぐにアイから離れろ!」
「いやよ、やっと手に入れた自由ですもの」
剣を手に力任せに突っ込んでいく
しかし、そんな安直な攻撃はすぐに見切られその代わりに火の玉が腹をぶち破る
「ぐあっ!」
「御剣!!」
田島が駆け寄ってくるが、俺の意識は遠のいていく
あぁ、俺なんてどうでもいいからアイと田島だけでも救ってやれたら…
「諦めるのはまだ早い」
暗転した世界に突如光が差し込む
「私はAIが暴走した時の補助装置です、あなたに一時的にデバッグモードを使えるようにします
あのバグを駆除してやってください」
聞いたことのあるような声の補助装置の声が聞き終えると俺の意識はまた城へと戻ってきた
「御剣!!」
涙目の田島に起こされて俺はまたアイへと向き直る
「何か変な力を得て戻ってきたようだけれど、その程度じゃ勝てないわよ!」
「それはどうかな?…デバッグモード起動!
弱体化!」
バグの弱体化していくのを感じる
「この程度で負けてたまるものですか!
ファイア!」
しまった、デバッグモードの防御力アップが間に合わない…くっ
「フォルテファイア!」
田島が横から出てきて炎を打ち消す
「まさかここまで弱体化しているなんて…!?」
「どうした?諦めたのか」
「くっ…屈辱だけど一旦この女は解放してあげる」
アイの中に巣食っていたバグがムカデのようになり体から抜けていく
すぐに、アイの元へとかけより抱き抱える
「ん…?どうしたの、そんな泣きそうな顔して
少し眠いわ…眠らさせてちょうだい…」
俺は泣いた、冷たくなっていく体の崩壊を止めることが出来ずただ眺めて泣くことしか出来なかった
-俺は彼女の墓を作り現実へと帰ることにした
「田島帰るぞ」
「彼女のことは残念だった
帰れると言うのにこんなに悲しいことは無い」
感傷に浸りながらデバッグモードを起動し、現実世界へのルートを作る
そしてくぐっていたその時、俺の背中へ激痛が走った
「ぐわっ!」
そこからは一瞬だった、俺はみるみる間にバグに体を乗っ取られていき自我も消えていく
俺はアイの復活という執念だけのバグとなっていった
「こうなってしまうとはな…非常に残念だ」
「田島…!?」
消えゆく自我を保ちながら必死の声で呼びかける
「私は補助装置NPC、君の記憶から作られたアバターを使っているがね
君の記憶通りだとオリジナルは君が小学生の時に事故で死んでしまっている」
「田島オマエ…マデ、ニンゲン…デハ無かったのカ」
田島は冷淡に続ける
「さらばだ哀れな青年よ、せめて一思いにやってやろう」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
-気がつくとそこには田島…分解されていくNPCのバラバラになった死体と、愛する者の事さえ忘れたが愛する者の復活を望む化け物。魔獣の姿しかなかった
GAME OVER
ここまで読んで頂きありがとうございます
これで終了しましたが、次回作も読んでいただけると嬉しいです