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内戦

今回も読んでいただきありがとうございます!

 



 公園での戦闘は、周りへの被害が大きいと判断して私と羽崎はある場所。つまりここ、河川敷へと移動した。

 河川敷はかなりの広さをもち、周りには特に建物がないので、戦闘にはもって来いだった。

 空はもう真っ暗になって、時刻は午後七時。

 しかしながら、河川敷付近にある照明によって、私たちのいる場所はそれなりに明るい。

 風がとても強く吹いている。

 それにより木々や草花が横に靡(なび)いている。


 私は、ポケットにしまってまだ装着させていない疾風の欠片(チップ)を左手の甲にかざす。

 すると、しっかりと皮膚と一体化して、全身に力がみなぎってきた。

 これで戦闘の準備が整った。


 私は羽崎に声をかける。



「準備はいいわね?」


「あぁ。戦闘開始だ!」



「行くわよ!」



 私は先制攻撃として、少し手加減して火の玉を撃つ。

 しかし、羽崎はいとも簡単にジャンプして交わした。



「っと。手加減してる場合か?どうしても意見通したいんだろ?」


「あんたは、これすらも避けられないんじゃないかって、手加減してあげたのよ」


「へぇ〜、大口叩くじゃん。流石選ばれし者(エンペラー)」


「ごちゃごちゃ抜かしてんじゃないわよ!」



 私は連続で火の玉を撃ち続ける。

 しかし軽い身のこなしの羽崎には、掠りもしない。



「ちょこまか逃げてても勝てないわよ?」



 ずっと逃げ回っている羽崎は息を切らし、その場に留まった。

 それを隙と見て、私は羽崎の周りに火の壁をつくり、逃げ道を塞いだ。



「これで逃げ道は塞がれたわね」


「よ〜いしょっ、と」


「なっ……」



 しかし羽崎は、大きく飛んで炎の壁を乗り越えた。

 そして、ストンと着地する。



「甘い、甘すぎる」


「うるさい!」



 私は、羽崎に向かって火炎放射を撃つ。

 しかし火炎放射は、強い向かい風によって羽崎のところまで届かない。



「どうしたんだ?届いてないけど」


「だから、うるさいって言ってるでしょ!」



 私は、向かい風を追い風に変えた。

 場合によっては風が日を消してしまうのではないかと心配したが、強い火の威力はそれを上回った。

 どうやら、疾風の欠片(チップ)も使い道は十分に上手く使えば役に立つみたいだ。


 追い風に変わり、火炎放射はすごい勢いで羽崎に襲いかかる。

 それを羽崎は横に走って、避けようとする。



「甘いのはどっちかしらね?」



 私は疾風の欠片(チップ)を駆使して、風の向きを羽崎の方に向け、火炎放射の向きを変えた。

 再び羽崎に火が襲いかかる。



「鬼ごっこもお終(しま)いよ!」



 このまま決着がつくと思った。

 しかし甘かった。


 羽崎が逃げ回っていた理由を知り、私は焦りを隠せない。



「まさか……」



 羽崎は雷狼の欠片(チップ)の持ち主。

 強い電気を得るため羽崎は、逃げ回って時間を稼いでいたのだ。


 羽崎は、右手を空に向ける。

 そして思いっきり地面に向かって振り下ろす。



「『ズドーン!』」



 と轟音がなり、地面は抉れた。

 その跡地には電流が通っている。

 電撃が地面にぶつかった衝撃で突風が起こり、火炎放射を消した。

 彼は電撃を利用して、火炎放射を打ち消したのだ。



「これで形勢逆転だな」


「くっ……」



 彼は電気を得る方法として、雷を選択した。

 しかし雷を起こすまでにはそれなりの時間がかかるようで、その為に彼は必死に逃げ回っていたのだ。

 今こうして雷から電気を得て、相当な力を得た羽崎の電撃は当たれば、致命的なダメージを負ってしまう。



「さぁ、反撃開始だ!」



 羽崎は、電撃を連続で放(はな)ってくる。

 私と羽崎の間にはそれなりの距離があり、電撃が届くまでの間に何とか回避できるのだが、これ以上間を詰められると避けることすら出来なくなる。



「手加減するのは、ここまでだ」


「さっきの言葉、そのまま返させて貰うわ!」



 正直、かなりのピンチ。

 今ので手加減しているとすれば、本気で来られたら全く太刀打ちができない。

 何か手段がないと負けてしまう。



「終わりにしよう」


「っ!」



 羽崎は再び右手を空にかざす。

 さっきの電撃を喰らえば、致命的ダメージでは済まない。

 つまり即死級の威力だ。



「『滅殺の霹靂(へきれき)!』」



 羽崎が腕を振り下ろした瞬間、二度目の轟音が夜間の静かな河川敷に響き渡る。

 落ちた場所からは煙が立ち上り、同時に砂埃も起きている。



「終わったな……」



 そう安堵した羽崎に、火の粉が降り注ぐ。



「うっ……」


「油断大敵って言葉、知ってるかしら?」


「なっ……」



 まだ私は負けていなかった。

 羽崎が腕を振り下ろしてから『滅殺の霹靂(へきれき)』が来るまでには、ほんの僅かな時間差がある。

 その時間差を利用して私は、近くに一瞬で突風を起こし、自分の身体を飛ばした。

『滅殺の霹靂(へきれき)』が地面に落ちたことによる衝撃で少し傷を負ったが、致命的ダメージを喰らわずに済んだ。



「これで終われば、選ばれし者(エンペラー)の名が泣くわ」


「うっ……」



 羽崎は、両手を膝に起き息を切らした。

 額からは汗が零れ落ちる。



「それだけの大技を二度も撃てば、流石に体力も消耗するわよ。形勢逆転ね」



 私はふふっと笑みを漏らす。

 その時だった。



「『ポタッ』」



 私の頭の上に何かが落ちた感触があった。

 その直後に、水の粒が周辺に降り注ぐ。

 雨だ。



「あんたの仕業ね」



 羽崎は体勢を戻し立ち上がった後に、こちらに笑顔を見せる。

 羽崎が起こした雷は、ただでさえ不安定な天候を悪化させた。

 その結果、今激しい雨が降っているのだ。

 しかしこれは偶然ではなく、羽崎の計算。

 最初からこれを視野に入れて雷を起こしていたのだ。

 二度も『滅殺の霹靂(へきれき)』を放つことによる身体への体力的ダメージを負ったとしても、この雨があれば羽崎自身が有利に立てると分かっていたのだ。


 なぜ雨を降らしたか。なぜ羽崎が有利になるのか。

 それは欠片(チップ)の種類を考えれば、一瞬で分かる。

 私は蒼炎、羽崎は雷狼。

 火は水に相性が悪く、電気は相性がいい。

 つまり、圧倒的優位に立ったのは羽崎である。



「ふぅ……。降るのが遅ければ、トドメを刺されてたな」


「一手先を突く戦術の上手さは流石ね」


「そりゃどうも。まぁ、とにかくこれで終わりだ。大人しく降参したらどうだ?」



 羽崎は私にダメージを受けずに済む機会を与えてくれた。

 しかしそれを受け入れれば、一発逆転の可能性をゼロにしてしまうのだ。

 もちろん、丁重にお断りする。



「あいにく、根性だけはあるのよ。諦めるわけないわよ」


「そっか……。じゃあ終わりにしようか」



 羽崎は再び右手を上げる。が、今回は空に向かってではない。

 流石に三度目を撃つのは無理のようだ。

 しかし雨が降っている今、電撃の威力は倍増。

 直接撃つだけでも十分な威力がある。



「終わりだ!」



 羽崎は電撃を放った。



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