episode24
目の前の存在と何を話したかほとんど覚えていない
けれど胃液が全部ひっくり返ったような防ぐことのできない気持ち悪さと人の嫌な部分を煮詰めたような生々しさを感じさせる嫌悪感、けれどその憎悪の全てを向けられても納得してしまう慈愛に近しい感情がぐるぐると僕の中を巡る
『まだ理解できなくてもいいよ、そして理解できないままでもいい、だけど忘れないでほしい、私たちは……』
目の前の存在に親近感のような、安心感のようなものが魂の底から沸々と湧き出てくる
–––表裏一体なんだから
ーー
汗が肌着を湿らすその不快感がシャーレの目を覚ました
清潔感のあるベッドの上、傍に置かれた汗を拭き体を冷やすためのタオルにそれを冷やすための水が入ったバケツ、右腕は動かせなように固定されていて傷を癒すための鼻の奥を突くようなツンとする匂いがした
「あら生きていたのね」
声のした方向を見ると水の代わりを持っているティアが目に入った
シャーレが起きたのを確認したシャーレは脈や体温を測って正常なのを確認してから隣の丸椅子に座って果物を剥き始めた
「あんたの看病して揚げたんだから感謝してよね」
「ありがとう」
シャーレは自分の治療をしてくれたティアにお礼を口にした
なんてことない一言だったのだがティアは驚き果物を剥いていた手が止まった
「……あんたって感謝ができるのね」
「……?当たり前だろ、……––ッ!?」
シャーレが自分の服が着替えさせられていることに気づく、そしてようやくティアに色々見られたことに気づいた、身体中に走る古傷に尖った耳、そして胸に刻まれた生まれを表す紋章、一つは自分の恥部、後の二つはシャーレにとって自分が自分であることを示す数少ないもの、不可抗力とはいえ見られて気分のいいものでなくシャーレにとって他人を信用できなくなったきっかけでもあるため鼓動が早まり一気に顔色が悪くなる、それを見たティアは呆れた顔する
「言っとくけどあんたがトンチンカンな耳してるとか胸に変な刺青入れてるとか言いふらさないわよ、あんたが踏み込んでこないのに無理やりこっちから聞き出すこともしないわ、良い女は聞き上手なのよ」
ティアの言葉に憑き物が落ちたような表情になる、シャーレは初めて血筋や契約、仕事を挟んだ人間関係ではなく個人を信用できると思えたのだ、軽くなった心、それに少し浮かれているシャーレにティアは机の上に置いていた結晶を手渡した
紫の結晶、しかしシャーレもティアも見たことのない物だった、石にしては随分綺麗でしかし宝石ではないガラス玉程度の大きさの不恰好な結晶はひどくシャーレを魅了した
「これ、有翼種の子供があんたに渡して欲しいって、昔森で拾った宝物らしいわ、大切にしなさい、……聞いてるの?」
まるでこちらが覗けば結晶の中から見られているような感覚がするそれにシャーレが見入っていると無視されたティアが呆れたような顔をする
「……あ、あぁ、あの混血の子か、ありがとう……」
手を伸ばして受け取ろうと無意識に右手を伸ばすシャーレ
それをティアが太ももを叩いて怒る、そしてその口にさっき切ったばっかりの果物を突っ込む
「右腕動かすな馬鹿!あんた一歩間違えれば二度と本のページを捲りながら珈琲を楽しめない体になってたのよ?肩に一発右手の肘の上に一発、極め付けは狙撃銃のが掠めたせいで右腕が微風で靡くようになっちゃって、私めっちゃ焦ったんだからね!」
「––ッ!?……悪い」
勢いよく捲し立てるティアにシャーレは謝ることしかできなかった
その後ティアはシャーレに現在の状況を説明を始めた
シャーレが気を失った後、無事に人質に取られていた有翼種の子供達は無事に全員を保護することに成功、有翼種全体は難民として盟約よりエリーシェ王国は受け入れ仕事と最低限の住居を与えて自立できるまでの生活を援助する意思を見せた
それから六時間後、オルガ王国がエリーシェ王国に宣戦布告と同時に侵略を開始、複数の地点で戦闘が始まり、そして一番近しい場所で言えばキッシェ平野からオルガ王国兵が進軍を開始、現在ララル平原にて交戦中
アンダーソン以下四名の活躍によりウルガ大森林からの進軍を防ぐことに成功したためララル平原にてエリーシェ王国兵が挟み撃ちを喰らう最悪の未来を防ぐことに成功した
しかしアンダーソンの機転によって宣戦布告前に開戦を知ることができていたエリーシェ王国だったがやはりオルガ王国の方に利はあり数時間の準備で迎え撃つことが難しく劣勢を強いられているらしい
「僕の怪我が治ったら戦地に行くのか……」
すでにアカシアの家の生徒たちも戦場に向かっているらしくスバルら一班らもシャーレの怪我が治ったらすぐに戦場に向かう、そう聞いたシャーレはなんとも言えない感情に襲われた




