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episode17

「私の父はいわゆる道化師でね、いや、何も酒飲みとか賭博好きっていう遊び人というわけではないんだ、ただ本当に道化師みたいなことをしているんだ、人を笑わせるのが好きらしくハウスメイドっていうサーカス団?魔術師団?みたいなものをやっているんだよ」


移動の馬車、読書をしようとカバンからおもむろに本を取り出したシャーレの手を止めたのがアンダーソンの声だった

軍用の馬車といっても大きさは貴族が使うような馬車と差異は無い、しかし五人で乗るにはあまりにも狭い、そのため二手に別れようという話になった時アンダーソンは、男同士親交を深めようじゃないか、と言ったのだ

上官命令に逆らえるほどシャーレも子供ではなく、上司が楽しそうに喋るのを無視して本を読むほど空気の読めない男でもないのだ



「中でも父の手品の腕はお貴族様に呼び出されるほど優れていてな、父のおかげで慈善活動のようなことを数十年も続けれているらしい、わかりやすくいうと士官学校に私を通わせれるくらい凄腕なんだよ、父は私にもハウスメイドの後を継いで欲しかったらしいがあいにく手品もエンターテイナーの才能もなくてな、そうそう……」


マシンガントーク、まさしくそう例えるのが正しいほど息が続くアンダーソン、スバルとシャーレの目はすでに遠く、かれこれ三十分ほど続くこのアンダーソンの口撃に耐え続けているのだ


「ほら、私の妹で君たちと同じくらいの歳なんだ、名前はフェリシアで私と同じで手品の才能はないんだがエンターテイナーとして一番重要な人を笑顔にしたいという気持ちはすごく強いんだ」


「……妹さんは髪色が少尉と違ってオレンジなんですね」


身につけている黒いスーツがブカブカなせいで腕が裾から出ておらず、それに大きなシルクハットが頭からずり落ち片目が隠れているオレンジ色の髪の女の子が写った写真、大切にされているのか技術力が上がった今でもそこそこの値段がするカラーの写真、色褪せてはいるが大事にしているのが一眼でわかる綺麗な年季の入り方がしている


「亡くなった母の遺伝でな、私の初任給で買ってあげたシルクハットをいつまでも大事に使ってくれる良い娘なんだ、……本当に幸せになって欲しいよ」


「そうですね」


膝に手を置いて、会話を聞き続けるシャーレは会話に入るタイミングがわからずに時折うなづくだけで必死になっていた


(シャガールの知的好奇心をなくして説明欲求をフルにした感じで困る…)


自分の知らないことばかり喋る上司に対してシャーレは苛つきや面倒臭さは感じてはおらずどちらかというと困惑が勝っていた


「しかし兄馬鹿目線と言っても世界で一番可愛くてな、時々情けない声をあげて倒れていることがあるがそれもまた可愛くてな……」


本人も気づいていながい少し羨ましいのかもしれない、母は幼い頃に病死し父はその兄弟に殺され、いとこの名で呼び出された茶会に出席したら毒を盛られ他国に売られたシャーレにとって幸せな家庭というのは遠い遠い話

しかし伸ばした髪で隠れた尖った耳がピクピクと動いてるのが彼を語ってる


(……すでに割れた器を他人の器の外側についた雫で満たそうとする行為、いくら待てども器は満たされず、けれど割れ目に雫はいくらか残る……我ながら恥ずかしいな)



それから家族の話からいつの間にか恋人の話、結婚もまだなのに将来どこに住みたいとか子供ができたのなら年の近い子がいる場所で遊び相手を作れるようにしたいなど、しまいには二人にどういう女性がタイプでなんなら自分の知り合いの妹などどうかと勧める上司に律儀に二人は付き合ったのだった




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