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Case 07:It's name "Saber Shark"

 ??「フフッ…またお会いしましたね。西のマーメイド、小砂川優香さん…。今日こそはお互い、白黒はっきりつけさせて頂きますよ!まぁ、あなたと大会あるたびにトップの座を奪ったり奪われたりの繰り返し…。そろそろ、私も未来のことを見据えて、きっぱりとあなたへ引導を渡してやらねばならないのです!!」






 優香「ぐぬぬぬぬ…っ…!! 奈美さん!!…それはこっちの台詞じゃないですか!? あなたこそ、徹底的に鍛えた私の前で生き恥を晒すことになっても知りませんからね!!」





 奈美「…フッ面白いですね。まぁこうしてお互い、口先だけで争っていても仕方ありませんね。勝負はしっかりと、試合の結果で見せて頂きましょうか…。」











 プール施設の通路で優香がこう言い合っていたのを聞いた隆太。もちろん、相手の女子である、奈美とやらの氏素性については全く知らない。しかし一発で察知したのは、二人の間にはとてつもないライバル意識があるということ。





 お互い目を血走らせながら、電撃のような目線をバチバチと光らせ、試合への意気込みと、ただならぬ因縁を覗わせていた。








 まだ試合開始まで間がある。隆太は、思い切って優香に、先ほどの相手のことを尋ねた。すると彼女は、普段の明るい表情から一転。窓の外を見つめながら、彼にこう話した…。








 「水島奈美(みなしま・なみ)…。東北でも一、二を争う女子水泳選手。彼女と私は、小学生の頃から常にライバルでした…。小学生時代、私は水泳競技の場に出るようになってまもなくの頃、彼女の圧倒的な泳ぎに圧倒されて…。最初は、その美しさとたぐいまれな技術に惚れ込んでいましたが、やがて私自身も彼女を追う立場になって以来、私達は常に、ライバルとして競う運命を背負いました。」





 「…彼女の泳ぎ方には独特の特徴があるのです。遠泳競技では特に顕著ですが、序盤はあえて、他の選手に若干のリードを許します。しかし、他の者達が力の消耗を見せる頃、奈美さんは温存しておいた体力を発揮して、皆に食らいついていくのです。その様子はさながら、サメが獲物を捕食するべく飛びついていくかのように獰猛であることから、いつしか彼女には”サーベルシャーク”というあだ名がつけられていました。」








 隆太「そ、そんな選手がいたのですか…。凄いって言うか、怖いっていうか…。でも、優香さんは奈美さんに勝ったことはあるのでしょう?それなのに、どうして決着がついていないとか…?」








 優香「ええ、それはね…。確かに、あらゆる水泳大会ではお互い、勝ったり負けたりで、勝率は五分五分でしょうね。決着がついていないというのは、お互いが目指す姿である、オリンピック選手としてデビューすること。しかし、あのサーベル…いや、奈美さんでも私でも、そこへ至る道は非常に険しく、まだ技術も力も及ばないのです。今回の大会でも、成績次第ではオリンピック選手への道を獲得できる可能性もあるんですよ。それだけに、お互いが負けられないという意識を燃やしていますし、私も私で、彼女がいるからこそ、闘志を奮い立たせるよい糧になっているのですよ。」








 隆太「そ、、、そうだったんですか…。優香さん!頑張って!!きっと優香さんなら、そんな鮫女やっつけられますって!」








 …優香は改めて目線を隆太に戻し…








 「だといいですけどね…。彼女、福島の高校に進学してから、小学校、中学校の時代とは比較にならないほど実力をあげたのよ。無論、私だってそれなりに対抗するための練習は積んで来たわ!後は真っ向から立ち向かうだけです!小野君!あなただって、男子だからって安心していられませんよ。奈美さんは、水泳が上手い人なら男女問わずライバル意識を燃やすんです。いずれあなたも、男子の部で名声をあげるようになれば、彼女から一騎打ちの申し込みが、届くかもしれませんよ…」








 …少し背筋に寒気を感じたが、優香と奈美の戦い、隆太は黙って見守る他ないと思い、競技が始まる時間、観覧席にそれとなく立ち寄って試合の行方を見つめることにした。














 女子400m個人種目のスタートとなった。今回の試合は東北でも名うての選手ばかりが集っているらしい。当然ながら、優香にとってのライバルとなるのは、奈美だけではないはず。





 すると、あろうことか飛び込み台の上に並んだのは、第1レーンに優香、第5レーンに奈美…。組み合わせ抽選の結果とはいえ、文字通り直接対決である…。








 「優香さん…頑張って…!!」








 隆太は拳を固め、スタートの合図と同時にプールに飛び込む彼女達を見つめた。








 確かにどの選手も早い。優香達は上級生であるとは言っても、その華麗な泳ぎ、スピード、気迫…。どれをとっても、中学時代の大会とはレベルが違い過ぎた。この後に控えている自分の競技も、ことによっては優香達に嘲笑される結果になりかねない…と思ってはみたが、ここで逃げ腰になるのも男らしくない。後は…自分の泳ぎを信じるのみ…。








 1ターン目でこそ奈美は微妙に出遅れ感があった。しかし、これが先ほど優香から聞いた、サーベルシャークの”作戦”なのだろうか…?





 反面、優香は若干なれども他の選手を引き離し、トップを泳ぎ続けていた。





 だが隆太は気づいていなかった。その時、奈美は優香の息が乱れる瞬間を狙っていることを…。











 4ターン目でそれは起きた。





 優香は、全力で泳いできたため、どうしても身体の動きにわずかな乱れが見られるようになった。











 すると、ここぞとばかりに奈美は猛チャージを仕掛けて来た。他の選手など眼中になく、目指すは、優香というターゲットただ一つを確実に仕留めようとする、獰猛な鮫のごとく襲い掛かる…。








 優香「くっ!!やっぱりそうきましたか…!この辺で食い付いてくることぐらい予測済みです!!」





 優香は残された体力を振り絞り、奈美を引き離しにかかる。…しかし、すでに限界近いパワーを出し切った優香は、奈美の追い上げをなかなか振り切れない…。








 最後のキックターンを経て、後はフィニッシュを一直線に目指すのみ…。優香は思ったように手足が動かせていない。奈美の執拗なチャージが、心理的にも大きなプレッシャーになっていたこともあって…。











 隆太は、思わず声を上げて優香を応援した。





 「頑張れぇーーーっ!!優香さぁーーーん!!ゴールはすぐだーーー!!振り切れーーー!!振り切るんだーーー!!」











 そして両者ともにフィニッシュ!! …隆太の目には、お互いほぼ同時のゴールに見えたが、電光掲示板には、無情にも0.87秒の差で、奈美に軍配が上がった。











 「そ、、、そんな…。絶対、優香さんが勝てるって見えてたのに…。何で…!?」

















 結局、優香は今回、大会での成績としては非常に良好なものを修めたが、奈美との戦いには敗れ、無念の銀メダルを持ち帰ることになった…。











 プールから引き上げてきた優香は、奈美と今回の試合について何やら話し合っていた。








 奈美「ま、ちょっと際どかったとはいいましても、やはり実力では、私の方が勝っていることは証明されましたね。しかし、あなたも相当な力を付けていることが、これでよぉ~くわかりました。帰ったらさらに精進しなければ、次に私の勝利はありませんね。優香さん、あなたもなかなかの泳ぎでしたよ。このまま成長を続ければ、オリンピック出場もお互いに夢ではないでしょう。」








 優香「…そ、、、そうですね…。はぁ…。悔しいですが、あなたの勝ちですね。なかなか縮まらないあなたとの差は、一体何だというのでしょうね…。やはり、心理戦のようなものもあるのでしょうね。」








 奈美「まぁ、精神的な面を鍛錬するのも、勝負には大きな意味がありますよ。私は水泳以外にも、大会直前にはお寺で座禅を組んだり、テンションの上がる音楽を脳内でリピートしたり…、心を勝利への確信に染める訓練も、ぬかりはなかったですわ。」








 優香「…つまり、バカ真面目な練習を繰り返している私が、あなたとの微妙な距離を縮められないのはその辺に違いがあるとでも…」








 奈美「そうは言っていませんよ。あなたにはあなたなりの、練習のポリシーがあることでしょう。私がそうしているからと言って、それがあなたにも適しているとは限りません。まぁあえて物申すなら、ガチガチな練習の仕方だけでは、上達へ遠回りになってしまうでしょう…とでも?」








 優香「…くぅっ…!!悔しいっ!!ずっとずっと戦ってきた私とあなたで、どうして何かが壁になって…」








 奈美「まぁまぁそう興奮しないで…。あちらで優香さんをじっくりと眺めている男子もいらっしゃることですから…」








 優香「えっ…!?」








 …物陰で二人の会話を聞いていた隆太は、彼女達に感づかれてしまった。これはまずかっただろうか…と一瞬思ったが、ここはあえて優香への労いの言葉をかけにきた…とでも言い訳しようと思った。








 「優香さん!素晴らしい泳ぎでしたね!…まぁ、僅差で2位というのは、確かに残念かもしれませんが…。で、、、でも、お二人とも女子の部では全クラスでもトップレベルじゃないですか!!すごいですよ!!」








 奈美「どなたですかこの子は?もしかして、優香さんの彼氏ですか?」








 …優香は、つい見栄を張ってしまい、口から出まかせに…。








 「え、ええ…。彼氏も彼氏。年下ですがもう私達は水泳を通して知り合った以上、お互いに世界で戦える逸材になるべく練習に励んで来て、時にデートもあれば個人レッスンもあるような仲ですわ。」








 奈美「・・・・・・・。。。そ、、、そうです…か…。彼氏ですか…」








 隆太「わわっ…!!ちょ…ちょっと…!!なにを言ってーーー」





 優香「---あ、そうそう。彼はこう見えても、中学時代は県大会でトップクラスの成績を何度も叩き出している男子のエースなの。下手をすると、奈美さんの地位だっていずれは脅かす存在になるかと思いますわ。何せ彼もまた、愛する人のために水泳を極めることが一番の任務ですからね…」








 奈美は、目を白黒させつつ、隆太にこう言った。








 「ま、まぁその実力とやらは、実際の試合を見てみればわかることですわ。それよりも優香さん!あなた、私に隠れてこっそりとこんなかわいい彼氏を作るとか…!!」





 優香「あーはいはい。そういう話は試合の後で好きなだけどうぞ。さ、小野君、そろそろ男子の部の競技スタートですよ。思う存分戦ってきてちょうだい!!」








 隆太「は、、、はいっ…!!い、行って来ます…」














 隆太はプールへ移動し、優香と奈美は観客席へと移動した。奈美も、優香にそこまで言われた以上、彼の実力をこの目で確かめる必要があると強く感じていた。





 そして、試合が始まるまでの間に、優香は彼の生い立ちやこれまでのエピソードなどをさらっと話した。すると奈美は、先ほどまでの強気な表情が一転…。何か、突然に彼女の心が、黒い雲にでも覆われたかのように…。











 優香はその心情を察することはできなかったが、間もなく、隆太達の競技が始まる。流石に黄色い声で応援する…なんてことはできないので、瞳で彼の動きを見守り、心で応援の言葉を絶叫することにした。




 男子400m自由形。隆太は第7レーンに立った。スタートの合図と共にプールに飛び込む彼は、中学時代とはガラリと違う雰囲気に戸惑いつつも、力の限り泳いだ。その姿はさながら、小さなイルカにも似たような凛々しさと可愛らしさを漂わせていた。









 隆太もなかなかの実力を発揮した。優香や奈美が見ている分には、正直、隆太の泳ぎはどこか力任せで、脳筋タイプな泳法である点は否めないものがあった。しかし、明らかに何かが違う…。





 隆太は、男子の部でも猛者と呼ばれる選手と並び、互角の泳ぎを見せた。隆太は小柄で、お世辞にも筋骨隆々とは言えない体つきだが、驚くべきはその持久力だった。他の選手がターンを経る度にペースダウンしていく中、隆太はほとんどそれが見られず、泳ぎのスタイルも整然とした状態を保っている。








 「みんなが見てる…!!みんなが応援してる…!!僕は、、、僕は、、、絶対に負けられないっ!!」








 …実は隆太は、試合の前日、恋仲である涼子からこんなことを聞いていた。








 「試合で勝つような人は、周りの人や雰囲気におどおどしないからだよ。隆太くんだって、初めての舞台だからって緊張する必要なんてないわ。むしろここぞとばかりに泳ぎまくって、他の選手を蹴散らしていくぐらいの肉食意識が必要だわよ!そう!あなたは恋愛では草食系だろうけど、試合では肉食系に変身するべき!ライバル選手なんて食っちゃえ!!」








 「うぉぉぉぉ・・・・・・・!! 食ってやるんだ…!! どりゃぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・!!!!」








 普段は誰にも見せないような、隆太の底力。それは、他者を圧倒…というには今一歩ではあったものの、試合の主導権を握るには十分であった。

















 優香は、隆太はやはりただ者ではないことを改めて知った。そして、隣に座っている奈美にも、彼の実力を現実に見せつけることで、一種のプレッシャーを与えてやりたかった。











 結果、隆太はその回の競技を1位でフィニッシュした。タイムでこそ、大会新記録というわけではなかったが、奈美に負けず劣らず。表彰台に立った隆太は、高校で初めての大会でありながら、金メダルの栄誉を勝ち取った。











 …そして、閉会式も終わり、ホールで待っていた優香のもとへ隆太がやってきた。








 優香「やったね!でも、これで満足しちゃダメよ。これはあくまでも通過点であって、これからは試合もハイレベルなものになっていくから、常に本気でいかせてもらうつもりでね!」





 奈美「小野君とやら…恐れ入ったわ…。やっぱり、これが、愛の力ってものなのかしら…。。。」











 その場に俯いた奈美。一体どうしたのかと隆太が尋ねると、奈美は、涙ながらにこう語った…。











 「わ…私は、、、彼氏、いない…。いや、今までに何度も付き合った相手はいたわ…。だけど、私には何かが足りなくて…すぐに別れてばかりだった。…その度に私は孤独に塞がって、水泳にも身が入らなかった…。今までは、恋人がいたら水泳の練習の邪魔になるって思いこんでて、こっちから別れたこともあったけど…、私って、どうしても相手を”許す”ことが、できなかった…。完璧なものばかりを求めすぎて…、私は、誰を好きになったり好かれたりしても、気持ちが噛み合わなければすぐにケンカしちゃってた…。」





 「逆に、私のことを理解してもらうことも、できなかった…。来る日も来る日も部活だ練習だの繰り返しで、デートの誘いもほとんど断らなきゃならなかったし、メールもLINEも、返事することもできないことも多かった。俺の事を無視するのかよ!!って怒られたことも数知れないわ…。だから、私は水泳をすることの目的を必死に伝えたんだけど…、それのために人と付き合えないなら、カレカノでいる意味も必要もないって言われちゃって…。」








 「私は…、たとえ水泳が達者でも、恋愛は未熟者…。恋愛も青春の一部だから、私だって大切な相手を一人見つけてみたかった…。けれど、私の性格では、どうすれば心から手を結べるか、わからなかった…ううっ…。。。」











 思わぬ奈美の涙に驚いた優香と隆太。





 肩で風を切るような歴戦の勇士、ことに”サーベルシャーク”という異名すら持つ奈美にも、意外な弱点があるのだと知った。











 優香「奈美さん…。そんなに思い詰めないで…。恋愛なんて、偶然のチャンスが巡って来るのを待つしかないようなものですよ。私だって、高1までは彼氏どころか、異性の友達すらまともにいない状態でしたよ…。でも、小野君が水泳部に入って来て、色々な話を交わすうちに心が打ち解け合ってきて…。まぁ流石にさっき話したことはちょっとオーバーでしたが、彼とは、良い仲を続けさせてもらっていますよ。奈美さん。あなただって、水泳でオリンピック出場を目指すという夢があるなら、それと同時に、良いお友達を作りなさいな…。いつまでも一匹狼…というか、一匹鮫を気取っていても仕方ないでしょう…?」











 …奈美は、ガクっとその場に跪き、両手を顔にあてて泣き出してしまったが、隆太は、奈美の手を握ってこう話した。








 「あ、、、あの…奈美さん。実は僕だって、失恋に終わった恋もあるんですし、実際それでとても苦しい気持ちもしました。だけど、その…、目標を持って頑張っていれば、思わぬ出会いもあることがわかりましたし、自分の心も自然に変わっていくのだと思います。」








 奈美は、隆太の手を握り返し、瞳に涙を溜めて…








 「ありがとう。小野君。ま、私の恋愛ってホントにわがままだから、自分勝手な理想を描いてばっかりで、じゃあ自分はどうなんだって言われれば、そんなこと言えるような大人物でもない…。私は、水泳が人生最大のパートナーだと思ってたから、自分よりも弱い相手を、心のどこかで見下していたんだわ…。何だか今日は、その辺をじっくりと教わったように思うわ。ありがとう。」








 隆太「あ、、、その、、、いいえ僕は何も…」








 奈美「それはそうと…、小野君は相当な泳力の持ち主ですね。本当に感服いたしましたよ。これはぜひ、いずれ機会があったらあなたと私、どちらが真の実力者であるか、非公式なれど立証させてみる必要がありそうですね。」








 奈美の視線が妙に鋭かった。それは、いつか一対一の対決を申し込まれたことと同義だった。








 隆太は、奈美とも仲良くなりたい気持ちはあったが、この日が初対面だし、福島の高校に在学している彼女には、青森にいる以上なかなか会えるはずもない。それに、変に女性との繋がりを増やすと、優香や涼子、場合によっては友加里の気持ちを害する可能性もある。





 ちょっとした下心がなかったとも言えないのだが、隆太はあえて、奈美との距離を開けたままにしておいた。





 何せ”サーベルシャーク”だから、隆太は食われてしまうかもしれない…から…。














 …と、それはジョークとして、優香にもちょっと気があり、本気で好きな涼子がいて、さらに、願わくば恋仲を復活させたいと内心思っている友加里…。





 自分が何と気の多い人間なのか…ということを、少し反省すべきだと思ったが、逆に考えれば、ずっと「自分はモテない」と思い込んでいたことがウソのようだった。





 されど、異性との関係に悩みはつきもの。これからの人付き合いに課題を感じた。














 大会はこうして恙なく閉幕した。隆太は1年生ながらも好成績を修めたため、次に試合の場となるのは、さらに規模の大きな大会になる可能性もある。そうなると練習もハードになりそうだが、屈することなく、困難に立ち向かわねばならないだろう。











 この日は遅くなるため、隆太は姉の流美に送迎を依頼していた。辺りが暗くなる頃、流美の車が会場に到着して、隆太と優香達はこの場で別れた。











 車の中で隆太は、競技で勝利したことはもちろん、この日経験した内容を事細かに流美に話した。テンション高く話を止めない隆太に対し、流美は若干呆れ顔でもあったが、弟の活躍に内心とても嬉しかったことに間違いはない。








 流美「ま、今日のことは、あきら君や愛莉ちゃんにも教えてあげなよ。あと、涼子さんにもちゃんとメダル見せてあげるのよ。」





 隆太「わかってるよ!もうすぐ夏休みに入るから、みんなでまた、涼子さんの家に集まってワイワイやろうって計画してるんだ。メダルは、その時のサプライズとして…」





 流美「うん。そうだね。…ところで、今日、友加里ちゃんからはがき届いてたよ。ごめん私思わず先に読んじゃったけど、夏休みはほとんどこっちで過ごすから、また会おうね…って書いてあったよ。」





 隆太「お、お姉ちゃん!!何で弟のはがき読んじゃうんだよぉ…!!…ってか、はがきじゃしょうがないんだろうけど…。。。」











 流美はクスっと笑ったが、続けて、表情をキリっとさせてこう話した。








 「ねぇ隆太?友加里ちゃんとは今まで、メールひとつさえもできないでいたんでしょう?きっと彼女、淋しがってるはずだわ。隆太?今でもちゃんと”友達”なんでしょう?…だったら、愛莉ちゃんやあきら君と会わせるのもいいけど、二人きりの時間も作ってあげたらどうかな…?」








 「えっ…!?…それって、、、どんな…??」








 「うん。友加里ちゃんが帰ってきたら、あなた達だけになれる時間を作ってあげるから、彼女からつもる話を聞いてあげてね。もちろん、辛い話ばかりじゃないと思うの。きっと、一番好きだった隆太に、一番先に話したいことがあるんじゃないかって思ってね。あっ!二人きりだからといって、やらしぃことするんじゃないぞーーー!!わかってんのかー?隆太ぁ?」








 「し…しないっての…。。。そんな…こと…」











 「でも、友加里はあの日以来全然音沙汰ないんだよなぁ…。学校厳しいからって言われてはいたけれど、そこまで大変なんだとは…」











 「…って、えっ…!?お姉ちゃん…!?!? こ、、、この、いま流れてる音楽って、もしかして…!?!?」








 「うん。お察しの通りだね。だからこそ、二人きりの時間を作ってあげようって思ったのよ。偶然、あたしの彼氏の愛希(まなき)に勧められたCDあったんだけど…それがまさか…ね。ーーー」








 「ーーーでも、彼女の成長っていうか素質っていうか、すごいものがあったんだって改めて思ったわ~」











 隆太は一瞬、目と耳を疑ったが、確信はした。 友加里は、自分の想像を超えて成長したのだということを…。










-つづく-

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