宣言
窓から覗いた景色は断じて希望に満ちたものではなかった。
美しい街並みだった王都は今では見る影も無く、
大半の建物は戦闘により破壊され、至る所から黒煙が立ち上っている。
歴代の国王が根城としてきた海沿いに佇む王城も例外なく戦火に晒され、
城壁は所々崩れ、銃撃で無数の穴が開き、破壊された大砲が無造作にうち捨てられていた。
その王城の中庭にはこれから行われる式典の為、
革命軍の要人や陸軍の兵士、王都の住民が集められていた。
「ミア中尉、怪我の具合は大丈夫なのか?」
「・・・お気遣い感謝します宰相閣下。しかしこの程度の怪我は近衛にとって・・・ッ!」
ゲオルグ宰相の問いかけに問題ないことをアピールすべく
両腕を軽く回そうとしたが、痛みを堪えきれず声が出てしまった。
副団長の剣撃を右肩に受けてからまだ数日しか経っていない。
痛み止めで誤魔化しているが流石に右腕を動かすのは難しいようだ。
「あの傷が短期間で治るわけがなかろう。やはり中尉は病院に戻った方が」
「待って下さい!本当に大丈夫です。右腕を使わなくてもご覧の通り」
私は左手で剣を握ると宰相に問題がないことをアピールすべく素振りをしてみせた。
ここで病院に戻るなんて冗談じゃない。
クルトは海軍の連中にそそのかされて戦わされているに決まっている。
だから一刻も早く私がクルトを助けてあげないと。
その為には最前線にいないと。
「もういい分かった。既に陸軍司令には話をつけてある。中尉の要望通り、この式典終了後には前線に再配属になるだろう」
「あ、ありがとうございます!。必ずや閣下のご期待にお応えしてみせます」
「全く・・・中尉が前線に出ずとももうじきこの戦いは終わる。おとなしく療養していれば良いものを・・・」
「?」
「何でもない。私は式典会場に向かう。ミア中尉はここから歴史的瞬間を見ていればよい」
ゲオルグ宰相は肩を竦めると迎えにきた護衛を引き連れて部屋を出ていった。
「歴史的瞬間・・・ね」
これから行われる式典ではフェルゼルシア王国に代わる新たな国家の樹立宣言が行われる。
私たち革命軍は既に王国の7割を手中に収め、残るは北方のイエール自治領と
王都の西方に位置する王族直轄地イルリゼットのみ。
主だった対抗勢力もなく、ゲオルグ宰相が言っていた通りもうすぐこの戦いは終わると思う。
このままだとクルトは王国海軍の残党となり、戦闘で死ぬか捕虜となって処刑されるか・・・。
絶対にさせない!。
誰よりも早くクルトを見つけて今度こそ。




