幕間 3
ここまでがアンホルト港での戦いでした。そろそろ逃避行ばかりではなく反撃の狼煙を上げたいところです!!
ここから王国の僻地、クルトとミアが生まれたイエール領に向かいます。
分かりやすいイメージとしてはアングレットは名古屋、王都は東京、アンホルトが仙台、そして今から青森の先っちょに行くイメージです。 フェルゼルシアはデンマークがモチーフなので、もっと実際の距離感は短いです。
私がクルトと初めて会ったのは5歳の頃。
両親が亡くなり身寄りがなかったところを私の家族が引き取り、クルトは私の家にやってきた。
当時のクルトは心を閉ざし、誰とも話そうとはしなかった。
人見知りだった私もクルトに話しかける事すらできずに数か月が経った。
しかし食事も喉を通らなかったのか日に日に弱っていくクルトの姿に耐えられずに私から声をかけた。
「どうしてご飯を食べないの?」
クルトは一瞬驚いたような表情でこちらを見たが、直ぐに顔を背けて再び部屋の隅で膝を抱えて俯いてしまった。
人と話すことが苦手な私はこういう場合、直ぐにその場を立ち去るのだが今回は何故か無意識に足は前へと進んでいた。
クルトの腕を引っ張り家の外へと向かう。
「僕のことは放っておいてよ!」
初めて聞いたクルトの声。私の手を振り払おうとしているが衰弱している為か、その抵抗に力は無かった。
私は家近くの森を抜けたところにある丘へとクルトを連れていき・・・。
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「……中尉」
「ミア中尉、起きろ」
唐突に聞こえた声で徐々に意識が覚醒していき、目を開けると視界には木目調の天井が飛び込んできた。
「・・・ここは」
起き上がろうとするが身体が言うことを聞かない。
「無事で何よりだ。ミア中尉」
「・・・宰相閣下」
「話は聞いていたが随分と手ひどくやられたものだな」
「ッ!」
宰相の言葉でここに来るまでの出来事を思い出し、全身に激しい痛みを感じた。
「その様子では前線復帰は難しそうだな」
「こ、この程度の怪我、直ぐに治ります!だからどうか前線にいさせて下さい!ッ!」
痛みをこらえて言葉を絞り出したが、はなから聞く気が無いのか宰相は踵を返し陸軍将校に耳打ちすると護衛を引き連れて部屋を出て行った。
残った陸軍将校は咳払いした後、私にこう告げた。
「ミア中尉、貴官を王都警備部隊隊長に任命する。いち早く任務に就けるよう養生しろ。以上だ」
これは隊長とは名ばかりの事実上後方への転属通知だった。
「待ってください!そんな・・・王都にいたらクルトは・・・」
アンホルトで会った際にクルトと一緒にいたローネ少尉ともう一人、見知らぬ少女の顔が頭に浮かぶ。
本来なら私がクルトと一緒に戦うべきなのに・・・。
旧王国派の連中に騙されてるに違いない。そうでなければクルトは・・・。
気がつけば陸軍将校はいなくなっており、病室には私一人が残された。
クルトを助けに行くにしても先ずはこの怪我を治さないと。
私は何とか上体を起こすとまだ動く左腕で懐から常に携帯している鎮痛剤を取り出す。
「!・・・ハァハァ」
待っていてねクルト。必ず迎えに行くから。
鎮痛剤を打つと痛みが幾分か弱まり、意識が朦朧としてきた。
私は再び眠りへと就く。幸せだったあの頃の回想にふけるために。




