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幕間 2

ここまでが第二部、王都救出作戦です。

クルトたちの逃避行はまだまだ続きます!!よろしくお願いします。

王城 地下牢


「艦隊司令官まで登り詰めたはずが、最後をこんな場所で迎えることになろうとはな」


「司令、あの場は出過ぎた真似をしてしまい申し訳ございませんでした」


「部下の命を思っての事だろう。艦長の考えは正しい。わしも少なからず冷静さを欠いていた。あの場で徹底抗戦をしたとしても犬死にしかならぬというのにな…」


「いえ、誰よりも陛下のご無事を信じていた閣下の指揮が無ければ、我々はアングレットで海の藻屑となっていたでしょう。それにずっと馬鹿にされてきた海軍が陸軍に一矢報いることが出来たのです」


「一矢報いた…か。そう考えるとここで最後を迎えるのも悪くない気分になるわい。だが、貴官を含めた部下の助命嘆願は何としても成功させねばならん」


「司令にだけ責を負わせる訳にはまいりません。私の命も交渉材料に入れて頂きたく…」


「貴官はまだ若い、未来があるのだ。決してこのような所で死んではならん」


「司令のお気持ち、大変うれしく存じます。しかしながら、王城を襲撃した艦の長が無罪放免となるのは難しいでしょう。恐らく閣下と私であれば、この地下牢にいる部下の命と釣り合いは取れると思います」


「…貴官には最後まで面倒をかけるな…」


「これは自分で臨んだことです。それに私の両親は既に他界しており、独り身の男です。私が死んで悲しむ者など、王都でよく通っていた酒場の看板娘くらいでしょう」


ヘイルダム艦長が珍しく肩を竦めて冗談を言う。そのすぐ後にコツコツと入口から複数の足音が近づいてきた。その足音の主達は司令と艦長が入れられている房の前で止まった。


「ペタス艦隊司令長官閣下とヘイルダムの艦長、宰相閣下がお呼びです。宰相執務室までお連れします」

「拒否権はないのであろう?」


「拒否された場合は閣下よりこの地下牢にいる全ての海軍将兵を即決裁判の上、公開処刑を行う様に仰せつかっております」


「ゲオルグめ…抜け目のない事よ。分かった、宰相閣下の許まで案内を頼む」


「了解しました。お連れしろ!」


リーダーと思しき陸軍兵の指示でペタス司令、ヘイルダム艦長は王城の外へと連れられる。

宰相執務室は王都の中心街に建つ宰相府の最上階にあり、王城からは歩いて10分程の位置にあった。

宰相府は立派な白壁の3階建ての建物で、王城には及ばないがフェルゼルシアの観光名所の1つとして国内外問わず有名であった。


ー宰相執務室前ー

地下牢から20分程度の時間を要して宰相執務室前に到着した。

先導する陸軍兵が執務室の扉をノックする。

「宰相閣下、ペタス艦隊司令長官閣下及びヘイルダム艦長をお連れしました」


「入れ」


ゲオルグ宰相の返答の後、陸軍兵は扉を開けてペタス司令と艦長を執務室へ入れた。


「ペタス艦隊司令、ヘイルダム艦長、単刀直入に言う。我々政府軍に入ってくれないか」


「…断れば部下を含めて全員殺すと?」


「これからのフェルゼルシアの為、不穏分子はこの革命で一掃しなければならないのでな」


「一つお聞きしても宜しいでしょうか?」


「何だね艦長」


「なぜ閣下がこのクーデターを起こしたかお聞きしたいのです」


「クーデターではなく革命と言ってくれたまえ。まあ良い、話してやろう。発端は財務局からの密告書が私の執務室に届いた事だ。その密告書の内容は大まかに言うと王室関連費に不透明な資金の流れがあるというものだった。

王室関連費は財務局ではなく王室が直接管理・集計し、財務局に提出していた。この密告書が届くまで、財務局が王室関連費に関与することは歴代国王によって固く禁じれれていた。王室関連費を探ろうとした者は汚職の罪を着せられ

て処刑され、処刑は本人に留まらず家族や親族にまで及んだ場合もあったという。この革命を起こす前にこの件のウラは取れている。国王クリストフは連邦から多額の資金を受け取っていた!」


「陛下が連邦から…資金を…」


「その話が事実とするならば、陛下は罪のない役人を保身の為に粛清したことに…」


「卿らが驚くのも無理はない。連邦は国王クリストフに資金を渡す代わりに中立を保ち、帝国との関係性を維持することを要求していたらしい」


「中立はともかく何故帝国との関係を…」


「帝国との関係性は現状、デルタポイント問題やアングレットの国境付近でのいざこざなどがあり良好な関係性とは言えないのでは?」


「連邦は帝国と戦争中だ。現在は互いに接している国境線沿いで戦っているが前線は膠着している。2国とも膠着状態を打開する為に目を付けている国がある。それが我が国フェルゼルシアだ。連邦は我が国が中立であり続ける限り2正面作戦を強いられることなく

帝国よりも劣っている軍備で何とか前線を維持していけるだろう。帝国は軍の規模こそ連邦に勝っているが険しい山々が連なる国境沿いで思ったような部隊展開が出来ていない。その為、アングレットにちょっかいをかけてきているがカルステン将軍の指揮とアングレット要塞の

前には手も足も出ずに最近は小規模な戦闘も減ってきている。この状況が続けば、連邦は国を挙げて開発している爆撃機などという新兵器の開発を間に合わせることが出来る」


「それならば連邦は我が国を味方につけて戦っても良いのではありませんか?なぜ我が国が中立であることにこだわるのでしょう」


「艦長、それは連邦が我が国の戦闘力を評価していないからだろう。現状帝国の小競り合い程度であれば何とか出来るが、帝国が総力を挙げて攻めてきたら我が国の戦力だけではいかんともしがたい。帝国は逆に我が国を必要以上に警戒し、本格的に手を出そうとしないが連邦の味方になれば話が変わって

一気に攻めてくるだろう。だから中立の維持が重要という訳だ」


「なるほど…連邦としては金を払ってでもフェルゼルシアには中立でいて欲しいということなんですね」


「このままではフェルゼルシアは実質連邦の傀儡と成り下がり、良いように利用された後に捨てられるか併合される未来しかない!そう確信し私は行動に移したというわけだ」


「…」


「改めて問う、我々政府軍に入る意思はあるか?」


「…分かりました。私のような老兵で良ければ参加しましょう」


「司令が決められたのであれば私もお供致します」


「ありがとう。その言葉が聞けて嬉しい。そうだ、卿らに紹介したい者がいる。あの者を連れてこい」


宰相閣下が近くにいた陸軍兵にそう言うと陸軍兵は一度執務室から退出する。

少ししてからドアをノックする音が聞こえる。


「入りたまえ」


「…失礼致します」


入ってきた者を見てペタス司令と艦長は驚きを隠せなかった。


「貴官は…!」


「近衛士官…」


ゲオルグ宰相率いるクーデター軍はこの日自らを政府軍と名乗り、国王の死とアングレット・王都の平定を王国全土に宣言した。

政府軍はこの宣言の直後、平定が終わっていない王国の西に位置する各領地へ本格的な侵攻を開始した。


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