やっとケーキが作れる
れっつクッキングな話です。書いていてケーキが食べたくなりました。
今回はちょっと長めです。
ベリアルさんが薬師の仕事をしてる中、私は二階にある台所を借りてケーキを作る。
そして、やっぱり台所も可愛かった。カフェカーテンのかかった小窓、可愛い小瓶に入ったたくさんの調味料にスパイス。調理器具も可愛らしいデザイン。もうそれだけで料理をするのが楽しくなっちゃうような調理部屋だった。
不安があった生活環境は元の世界とほぼ同じで料理も普通にできそうで安心した。
ジルは料理に興味があるのか肩から降りて調理台の上に乗ってじっと見ていた。
「出来上がったらジルも一緒にケーキ食べる?」
「にゃー」
ジルは普通の猫じゃなさそうだし食べても大丈夫かな。
食材も新鮮だし、色々揃っていて何でも作れそう。
プレジールをそのまま味わいたいし、新鮮なフルーツも沢山あるから、今は時間のかからないロールケーキを作ろうかな。
鉄板にクッキングシートを敷いておいて、そこにバター、卵、砂糖、小麦粉を混ぜたものを流し込みオーブンで焼いて生地を作る。焼いている間に小さく切ったフルーツと泡立てた生クリームを用意しておく。焼きあがった生地のほんのり甘いいい香り。粗熱が取れたらクリームを塗って、フルーツを散らして端から巻いていけば出来上がり。
「うん、美味しそう」
「にゃん」
出来上がったロールケーキを見てジルも何だか嬉しそう。
冷蔵庫で冷やしている間に、時間のかかるタルトの生地と、パンを作る為にプレジールで天然酵母も作っておく。後はサラダに、これは鶏肉かな、ハーブも色々あったから、香草焼きの下準備もして、食べる前に焼くだけにしておく。あとはスープかなと思っていると、先程ベリアルさんが作ってくれてスープがまだお鍋に残っているのに気が付いた。
蓋を開けて中を開けると、ジルがプレジールの切った残りが入った器を〝にゃーにゃー〟と器用に鼻先で、お鍋に入れてと言わんばかりに押してきた。
「これ入れるの?」
「にゃーん」
やっぱりそうみたい。ジルの言う通り入れてみて、一口食べてみると
「あれ、美味しくなった」
あの味がこんなに、美味しくなるってすごいな。
ってジルもよくわかったねっと、頭を撫でると気持ちよさそうにしている。可愛い。
あとは、デザートにプリンも作っておこう。プリンアラモードもいいなー。いつもは一人暮らしの自分の為だけに料理をするだけだったから、誰かの為にって思うとすごく楽しくて、ワクワクして色々作りたくなっちゃう。
さて、そろそろロールケーキも冷えた頃かな。
「ベリアルさん、ロールケーキが出来たのでお茶にしませんか?」
お店の方に声を掛けると、男性と会話をしていた。
「あ、お客様がいらっしゃってたんですね。ごめんなさい」
「大丈夫よ。それより早くケーキ食べましょ!すごく楽しみ」
「ベリアル様、こちらの方は?」
男性はこちらを見て聞いてくる。
「あ、私、佐伯美琴と申します。こっちはジルです。今日からここで働かせてもらうことになりました。よろしくお願いします」
定位置と化した私の肩の上にいるジルも紹介した。
「そうでしたか、私はゼファイルと申します。こちらこそよろしくお願いします。美琴さん、ジルさん」
「はい、じゃあみんなでお茶にしましょう。みこちゃん、隣の部屋に用意してもらってもいいかしら?」
「はい、すぐ用意しますね」
一階は薬師のお仕事部屋、カウンターと、奥に小さなテーブル席もある。となりにはカフェが開けそうな広さの部屋にカウンターキッチンがある。四人掛けのテーブル席にお茶の準備をしていく。
ロールケーキを切り分け、ポットに淹れた紅茶をカップへと注ぐ。紅茶の香りがふわっっと立つ。ジルの分もお皿に取り分けてテーブルに置くと、軽やかに肩から降りて席に着いた。
「どうぞ」
「美味しそう~いただきます」
「では、いただきます」
「にゃー」
二人+ジルが、ロールケーキを食べるのを見守る...緊張する。
「美味しい~うん最高~」
「確かにこれは、美味しいな...」
「にゃーん」
よかった~
みんなの口に合ったみたいで安心して私も一口。
美味しぃ~やっぱりプレジール入れたからなのか、いつも作るのより美味しい。
「みこちゃん、これってプレジールを使ったの?」
「はい、そうなんです。色々なフルーツと合わせて使いましたが合いますよね~」
ぶっほっごほっごほごほ・・・
前に座るゼファイルさんが急にむせて、咳き込んでしまった。慌ててナプキンを手渡す。
「ゼファイルさん大丈夫ですか?お水いります?」
まだ話せないので、左手を前に出して、大丈夫だと伝えるゼファイルさん。
しぱらくして、ようやく話せるようになると慌てて
「あの、ベリアル様、いまプレジールっておっしゃいましたか?」
「そうよ~」
答えながら笑うベリアルさん。
私は残っているプレジールを持ってきてゼファイルさんに渡す。
「本物...って、ベリアル様。私も一緒にお茶に誘ったのはそういうことですか」
「あら何のことかしら、すごく美味しいんだからいいじゃない」
「全く、昔からあなたって方は...これは一体どうしたらいいのか...ベリアル様詳しい話聞かせてもらいますからね」
「ふふっ、まあなるようになるでしょ。きっといい風が吹くわよ」
「はぁ~だといいのですが、荒れないといいですね」
ん?何の話だろう。二人の会話の意味がよくわからなくて不思議そうな顔をしていたら
「みこちゃんがここに来てくれてよかったわ~甘すぎないし、すっごく私好みの味だもの、こんなケーキ作れちゃうなんてすごいわ」
「私もこのケーキすごく好きです、とても優しい気持ちになれる。美琴さんの人柄のせいですかね」
突然ケーキを褒められて、びっくりした。いままで人に褒めてもらうことなんてなかったからどう受け止めていいのかわからない。
「えっ、そんな、趣味で作っていたものなので、そんな、すごいだなんて...」
私がそう言うと、ベリアルさんが悲しそうな顔をした。
あ、私またやっちゃった。嬉しいって思ったのに素直に言えなくて空気悪くしちゃった。どうしよう。
ちょっと行動できたからって、そんな簡単に変われるわけないよね。
私は俯いた。
そしてベリアルさんが頭に手を置いて撫でてくれる。
「みこちゃん、ケーキすごく美味しくて、毎日でも食べられるわ、すごく丁寧に作ってあるのもわかるし、ゼファイルの言うようにみこちゃんの人柄が出てると思う。作る人によって同じに作ってもやっぱり違うのよ、みこちゃんが私に美味しく食べて欲しいって思ってくれた気持ちちゃんと感じるわ、それに――」
ベリアルさんが私のケーキについて色々と力説し始めた、嬉しいのと恥ずかしいのと感情がごっちゃになって私は顔を真っ赤になった顔を上げてベリアルさんの顔を見た。
「あわわっ、も、もうわかりました。ごめんなさい、もう大丈夫です」
「ふふっちゃんと賞賛は素直に受け取ってね」
「そうですよ。本当に美味しいんですから、もっと自信を持っていいと思いますよ」
二人の顔を交互に見て、優しい笑みに胸がきゅんとした。ちょっと泣きそうなのを飲み込んで私はとびきりの笑顔で答えた。
「...私、お二人に美味しいって言ってもらえてすごく嬉しいです。ありがとうございます」
「はい、よくできました」
そして、ベリアルさんは笑顔で頭を撫でてくれた。
「にゃー」
「ジルもありがとう」
そして、ゼファイルさんは王家の分家の家系で、宰相兼、ベリアルさんの従者なんだそう。父親が優秀な宰相だったこともあって幼少期から手伝いをしていて、ベリアルさんとも20年以上の付き合いだって話してくれた。だからお互いのことをよく知っていて気心が知れているんだ、主従と言うより兄弟のような関係なのかもしれないな。
ベリアルさんとゼファイルさんがたくさん食べてくれてロールケーキは完食してしまった。そして、ゼファイルさんはプレジールについて調べるからとお城に帰っていった。
またケーキを食べさせてくださいね、絶対ですよ。と、ちょっと怖いくらいに念を押して約束もした。うん、本当に気に入ってもらえたようで嬉しいです。
続きを読んでいただきありがとうございます。




