番外編:今日も異世界は平和です。
ユリアがやってきました。
「みこと、これから私と二人きりでデートしよう。美味しいパスタのお店を見つけたんだ」
毎日のようにこうして家にやって来るのはアインスさん。
何気にこの人は次期国王様になる方なんだけど、忙しい筈なのに大丈夫なのかな?カフェでの働きぶりを見る限り本当に何でもできる人なんだろうけど。
「兄さん、美琴は私の婚約者なの。デートも行かないし、もういい加減諦めたらどうです?」
「我が弟よ、今日も可愛いな。私とお前は兄弟なのだから、みことが私とデートしてもおかしくないだろう」
「いやいや何ですかそれ、おかしいです。美琴は私だけの美琴だよ」
そう言ってベリアルさんは私を抱きしめた。私だけの美琴...嬉しい。
毎日こんなやりとりをしている。でもアインスさんは私のことよりも、本当はベリアルさんに会い来ているんじゃないかって思うの。
あれから世界が平和になって三ヶ月程たった。ベリアルさんもアインスさんのことを許したみたいで、お互いに自分達の過去のことを話してわだかまりは解消できたみたい。いまではすごく仲のいい兄弟なの。
だから今までの時間を取り戻すかのようにアインスさんはベリアルさんに会いに来ている気がするんだよね。兄弟愛、羨ましい。
「それなら、またここで働かせてよ」
「それは前にも断ったはずだ」
するとアインスさんはアリスちゃんに姿を変えた。
「みことお姉ちゃん、お願い。私またお姉ちゃんと一緒に働きたいの、ダメ?」
「はわわっ、アリスちゃん、やっぱり可愛い」
「美琴、見た目はアリスでも中身はアインスだから。兄さん、アリスの姿になって美琴のこと惑わせるのやめてくれ」
それはわかってるけど、アリスちゃんの可愛さは特別っていうか・・・
「ベリアルお兄ちゃん怖いよ~、みことおねえちゃん、ぎゅってして」
あまりの可愛さに私はアリスちゃんをぎゅってしようとする。
「はい、美琴ストップ!」
寸でのところでベリアルさんに止められた。
「ちっ、後もう少しだったのに」
「ちっじゃないから!それに、美琴も気を付けて、ぎゅってしたら浮気だからね、許さないから」
「ひっ」
ベリアルさん怒ってらっしゃる。笑顔で目だけ笑ってないの怖い。
独占欲が意外にも強いベリアルさんとのお付き合いも順調で、10ヶ月後には結婚式を挙げる予定。それの準備と、将来的にベリアルさんはアインスさんのサポートをするべくお城で働くことになる。それもあって色々と忙しい日々だったりする。
ちなみにウエディングドレスはデザインから縫製まで全てベリアルさんが手掛けてくれている。サイズを測られた時は恥ずかしかったけど、でも愛する人が作ってくれたウエディングドレスを着て結婚式を上げられるなんて私って幸せ者、ふふっ。
「ごきげんよう。美琴はこちらにいらっしゃるかしら?」
私が物思いにふけっていると突然聞いたことのある声が聞こえてきた。
「きゃー、ユリアだ!」
お互いに抱き合う
「美琴!やっと会えましたわっ」
「何で?すごいびっくりしたんだけど」
「ふふっ美琴のこと驚かせたくて、会いたかったですわ」
「驚いたよ、私もユリアに会えて嬉しいっ来てくれてありがとう」
「にゃー」
「にゃー?ジルの鳴き声がしましたけど」
「あ、ジルね、いまはライオンじゃなくて、この小さなリスがそうなの」
「あらまあ、モフモフは出来ませんがリスの姿も可愛いですわね」
「にゃーん」
「ライオンの姿もかっこよかったけど、リスのジルも可愛いくて素敵よ」
「にゃにゃ」
突然の再会に驚いた。何でもあれからすぐにレピアス国に来る計画を立てていたみたい。オリュゾン国王様もいままでユリアに寂しい思いをさせていたのもあってダメとは言えなかったみたい。
何にしてもまたユリアに会えるなんて嬉しい。
「ユリア元気だった?」
「見ての通り元気ですわよって美琴、あちらの子は?」
ユリアはアリスちゃんの姿に気が付いた。
「あ、この子?は――」
「まぁ可愛らしい子、あなたお名前は?」
説明しようとするけれど、ユリアは聞かずにアリスちゃんの近くに行って話し掛けている。
「...アリス」
アインスさん、何で普通に返事してるの?
「あ、ユリア、その子――」
「アリスちゃんって言いますの?可愛いっ」
ってまた説明しようとする間もなくユリアがアリスちゃんのことをぎゅってしてしまった。
アリスちゃんの顔がユリアの胸に押しつぶれている。
ってそうじゃなくて!
「こんな可愛い子が近くにいるなんて羨ましいですわ、アリスちゃん、私ユリアよ、よろしくね」
「ユリアお姉ちゃん?」
「お姉ちゃんだなんて、何ていい子なの、可愛くていい子だなんて」
ユリアはアリスちゃんをぎゅうぎゅう抱きしめている。
あぁお姉ちゃん呼び、私だけのものだったのに何だかショック。
「美琴、ショック受けてるみたいだけど、あれあのままでいいの?私としては面白いけど...あーいいな、二人がくっつけば美琴に付きまとう邪魔者が二人一気にいなくなる」
「ベリアルさん面白いって...」
ショックを受けている場合じゃなかった。
「アインスさんっ!ふざけるのはダメです」
「あぁ、みこと焼きもちか?それならそうと言ってくれれば」
「違います。ユリアは私の大切な親友です。傷つけるようなことしてほしくないだけです」
「ははっ、わかったよ」
そう軽く笑うとアリスちゃんからアインスさんの姿へと戻った。
毎回、不思議なのは洋服もその身体に合ったものに一緒に変化しているのはどうなっているんだう。裸になられても困るから助かるけど、今度聞いてみよう。
アリスちゃんを抱きしめていたユリアは、今度は180センチはあろうアインスさんに包まれるように抱きしめられる形になっていた。
「やはり女性に抱きしめられるより、抱きしめる方がしっくりくるな。いい抱き心地だ」
「...」
ユリアはびっくりして言葉にできずにハクハクと口を開けている。
「ユリア大丈夫?」
「はっ美琴、アリスちゃんが、お、男の方になりましたわよ」
「えっとだから、説明しようとしてたんだけど...その人はアインスさんでベリアルさんのお兄さんなの」
ユリアはアインスの顔をじっと見つめた。
「まあ、胡散臭いベリアル様のお兄様ですか...」
ユリアが冷静になったのはいいんだけど、抱きしめられたままでいいのかな?
「わっはっはっ胡散臭い王子ね、そりゃ間違いない」
「あら、あなた話がわかるのですね、気が合いそうですわ」
「そう?ユリア、君の抱き心地はとてもいいけど私はみことが一番好きなんだ、だからごめんね」
ん?ユリアが振られたみたいな話になってるけど...
「そうなんですのね!私も美琴が一番大好きなんですの、それなのにあの胡散臭い王子と恋仲になってしまって、美琴が幸せなら仕方ないですけど、私が幸せにしてあげたかったですわ」
あ、ユリア全然気にしてない。私のこと大好きって嬉しいけど、なんかズレてない?
「ユリア、わかってくれるか?そうなんだよ、みことは素晴らしい女性で私の過ちを許してくれた、そして強くて温かくて癒されるんだ」
「わかりますとも、私も美琴に助けてもらいましたから、美琴に出会えたから私は満たされることができましたの」
「ユリアもか、ユリア良ければこれから私と美味しいパスタを食べながらみことについて語り合わないかい?」
「素晴らしい提案ですわ、ぜひご一緒いたします」
二人は話が合ったみたいで仲良くパスタを食べに行くみたい。
「ユリア、私に会いに来てくれたんだよね?私との話は?」
「美琴、ごめんなさい、また明日参りますわ。いまはアインス様と美琴についての愛を語り合わなければならないので」
「あ、そうなんだ」
「みこと、私もまた明日来るからな、では」
そう言って本当に二人はここを出て行ってしまった。
「ベリアルさん、私にはよくわからないのですが?何で私がここにいるのにアインスさんと私について愛を語る必要が?私と語ってくれればいいのに、何この敗北感」
「まあまあ、親友を兄さんに取られて寂しいってところかな?美琴にはほら私がいるから元気だして」
ベリアルさんがぎゅってしてくれた。
それは嬉しいけど、でも親友とのは別って言うか、なんか寂しい。
「やっぱり美琴の近くにいると楽しめるわね、また面白いことになってる」
「私はプレディーネがいればそれでいい...」
「バカップルがまた来た」
「ベリアルさんそんなはっきりと」
「バカップルとはひどいわね」
「はいはい、今日はスフレチーズケーキよ、食べるんでしょ?」
「やっぱり美琴はよくわかっているわ、大好き」
もう、面白がって。
でもユリアとアインスさんが仲良くなるのはいいことだよね。寂しいけど、ユリアまた明日来てくれるって言ってたし今日は我慢。
「ほら、美琴は私とお茶するよ。それとも何?私とじゃ不満?」
ベリアルさんに顔を覗かれて、綺麗な顔が目の前に。
私にはこんなにも素敵な人がいるのに欲張りになったよね。でも良くも悪くも自分の気持ちが素直に出せるようになった自分のことを前よりも好きだなって思う。気持ちを押し殺しているよりよっぽどいい。
「ううん、ベリアルさんとのお茶嬉しいです。チーズケーキ一緒に食べましょ。ベリアルさん大好き」
「私も美琴が大好きだよ」
その後、私とベリアルさんも二人で甘い時間を過ごした。
そして次の日。
「美琴、昨日はごめんなさいね」
「ユリア、うん、せっかく会えたのにすぐにアインスさんと出かけちゃって寂しかった...」
「やだ、美琴がすごく可愛い」
私はぎゅうぎゅうにユリアに抱きしめられた。
「それでね、美琴、話があるんだけど」
「ユリア、それは私から話そう」
「?」
「みこと、私とユリアは結婚することになった」
「へ?」
いま結婚って言った?
「美琴、アインス様と私が結婚すれば、私は美琴と義姉妹になれるのよ、それって素敵じゃない?昨日アインス様と話し合って決めたのよ」
「ユリアと私が姉妹...」
「そうだ、みことがベリアルと結婚するのなら私とユリアが結婚して、家族ぐるみの付き合いをすれば、私もユリアもみことと一緒にいることが出来るからな」
えっと、私のことを理由に結婚するなんてそれってどうなの?
「ユリア、そんなことで結婚相手を決めていいの?」
「そんなことじゃないわ。それに私、アインス様みたいな男性は嫌いじゃないの、顔も中身もいい線いっているわ」
いや、まあベリアルさんのお兄さんだし顔はいいのは認めるし、仕事もできるし、第一王子だし、あれ?ユリアにとってすごくいい相手、なのかもしれない。
「うーん、ユリアがそれで幸せなら、いいのかな...?」
「私幸せですわよ?だってこれで美琴の近くにずっといられるんですもの」
だから理由がそこなのが...
「うん私もそれは嬉しいけど...ベリアルさん、これっていいんですかね?」
「いいんじゃない?二人がそれでいいって言ってるんだし、似た者同士って感じで」
こんな自由なのもありなのかもしれない。
「そっか...そうなんだ、ユリアは私のお義姉さんになるんだね、それは素直に嬉しいっ」
リリーといい、ユリアといい、周りの結婚が急に決まって素直に嬉しいし、みんなが幸せなら私も嬉しいし、色々な幸せの形があるんだよね。
たまにこうしてびっくりすることが起きるけれど、色んな人がいて色んな考えや価値観がある、全部が理解できるわけじゃないけど、違うからこそ新しい発見があるんだよね。辛い事があっても最後に笑えるなら人はまた成長できるから。
私の人生を変えるきっかけをくれたこの世界は今日も平和です。みんなの幸せを今日も祈ってます。
これにて書きたかった話は書き終わりました。
最後までお付き合いいただいた方、大変ありがとうございました。
次は短編小説を上げられたらと思っていますので、お時間ある方はまたよろしくお願いいたします。




