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進み出したら一気に動き出す

 そのあと、私はベリーのショートケーキを作った。甘酸っぱい色々なベリーは甘さ控えめにしたホイップクリームとよく合って、ベリアルさんもすごく喜んでくれた。もちろんマリーも、甘党のゼファイルさん、ジルも美味しそうに食べてくれた。


 そして、マリーと一緒にひたすらパンを作った。パン作りもマリーと二人で作れるようになったおかげで、一度に焼ける数も増えたから、早くたくさんの人に食べさせてあげられそうで嬉しい。

 ただ酵母は何故か私が作ったものでないと効果が出なかった。でも大事に育てれば一ヶ月位持たせることもできるから、こまめに作っておけば問題ないかな。

 


 こうして一週間もする頃には王宮で働く人全員に食べてもらうことができた。そして今度はマリー主体で王宮の料理人達がたくさんのパンを作ることにもなって、ゼファイルさんがこちらに取りに来てくれていたパンも王宮から街のみんなに運んでもらえることになったりして、協力してくれる人が増えたおかげでこの国の人達にはもうじき全員にパンが行き渡る。


 配るとき多少のいざこざはあったみたいだけれど、それほど大きな問題にはならずに配ることができた様でベリアルさんも安心していた。

 元々、レピアス国の人達は穏やかな人が多いいみたい、田舎な国だからだってベリアルさんが言っていた。

 田舎な環境が私にも合っていたのかもしれない。満員電車に乗って、人の多い都会を歩いて会社にいくだけで私は疲れていたから。


 そして、いまでは効果よりも美味しいから食べたいって言ってくれる人がいるほどの人気のパンになっていたりする。時間に余裕ができた私は、作ったパンをリリーを通して欲しい人に売ったりしている。



 こうして、軌道に乗った癒しのパンはこのレピアス国の人達を救うことができた。



「みこちゃん、ちょっといいかしら」

 私がいつものようにケーキを作っているとベリアルさんに声を掛けられた。

「いま丁度、作り終わったところなので大丈夫ですよ、どうかしました?」

 私は二階の共有のリビングへと向かった。ジルはベッドの方に行ってしまった。いつもだったら一緒にいるのにどうしたんだろう。


「みこちゃん、ここに座って」

 ベリアルさんは私にソファーへ座るように促す。言われた通り座った私の前にベリアルさんが跪いた。

「ベ、ベリアルさん、そんな跪くとかやめてくださいよ」

 焦る私を余所にベリアルさんは真剣な顔になって、はっと息を吞む。

「みこちゃん」

 ベリアルさんの両手が私の両手を包み込む。

 私はびっくりして声が出ない。

「みこちゃん、本当にどうもありがとう。あなたのおかげでこのレピアス国の人々を救うことができた。この一年間、どうにかして闇に囚われてしまった人達を助けようと私なりにやってきたけれど、思うようにはいかなくて、正直心が折れそうになったこともあったの、それでも必死にやってきたときに、あなたが現れた。みこちゃんは自分の過去を後悔して、そんな自分を変えたいって頑張っている姿を私に見せてくれた。いきなりこんな知らない世界に呼ばれたのに、みんなのことを助けたいって言ってくれて、私が後ろ向きになっても、みこちゃんは前向きにたくさん考えてくれて、本当にみんなを救ってくれた。そのおかげで、私がしてきたことが報われたの。諦めないでよかった、いままでやってきたことは間違っていなかったって、そう思えたのも全部あなたのおかげよ。本当に本当にどうもありがとう」


 ベリアルさんは両手に頭を付けて涙を流していた。一年もの間、助けたい思いと、なかなかうまくいかない現実の狭間で闘い続けてきたんだ、すごくすごく辛かっただろうし、みんなが元に戻ったのはすごく嬉しいのもわかる。

 ベリアルさんの感情がすごく私にも伝わってきて、思わずもらい泣きしてしまう。


「ぐすっ、ベリアルさん、お疲れさまでした。私は自分ができることを、やりたいことをしてきただけですよ。ベリアルさんがいままで頑張ってきたからいまがあるんだと思います。ベリアルさんがみんなを助けたいって気持ちが私にすごく伝わってきたから、私にも何かできたら...って思ったし、頑張ろうって思えたんです。ベリアルさんの思いが強かったから...意思の強さって大切なんだってよくわかりました」


 そう素直に思ったことを伝えると、突然ベリアルさんに抱きしめられた。

 びっくりして固まってしまった。えっと、こ、こ、これはどうしたら...


 私が焦っていると、ベリアルさんが小さく泣いていることに気付いて冷静になることができて、私は背中に手を回して、ベリアルさんの心が癒されますように。そう思いながら優しくベリアルさんの背中を撫でた。

 ベリアルさんの体温を感じて、安心して私の方が癒された気がする。


「みこちゃん、ありがとう。ごめんなさいね泣くなんてね。でもちゃんと伝えておきたかったの、聞いてくれてありがとう」

 しばらくして身体を離したベリアルさんは、泣いた後のスッキリとした笑顔を見せてくれた。


 距離ゼロでドキドキしてしまったけれど、ベリアルさんは全く気にしてないみたい、でも泣いてスッキリできたみたいで、いつものベリアルさんに戻れたみたいで安心した。



「さーてと、でもまだまだやることはたくさんあるわ。この国はみんなが元に戻っても、まだ世界には辛い思いをしている人がいる。これからはきっとこの国の王子として外交も必要となってくる。私も腹を括らなくちゃいけないのよね」


 そうだ闇の影響は世界になんだ。この国だけで終わる話じゃないんだ...。

 でもそうなるともう私にできることってあまりないような気がする。ベリアルさんと一緒にいられなくなる日もそう遠くないのかもしれない...


「もうみこちゃん、聞いてる?」

「はい?」

「だから、これからも一緒に協力してほしいって話よ。私にはみこちゃんが必要なの、だからこれからもお願いね」

 必要って...どういう、世界を救うために決まってるじゃないの。抱きしめられたからって何を考えているのよ私。

「ゼファイルにも頑張ってもらわなきゃ」

 ほら、必要ってゼファイルさんと同じじゃない。


 でもまだ一緒にいられるんだ、よかった~

「みこちゃん?」

「あ、はいもちろんです。私にできることがあれば協力しますね」

「みこちゃんのことは私が守るからね」

「え?何のことですか?」

「何でもないわ、今日のケーキは何かしらね、楽しみだわ」

 用意しますねと言って台所に向かった。



「この国が救われたいま、また兄が何をしてくるかわからないからね、みこちゃんのことは私が守るってみせる」


ようやく国の人達は癒されました。(あっという間にでしたがw)

ベリアルさんひとまずお疲れさまです。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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