表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/63

後悔、先に立たず...

キキ―――――ッ


 視界に迫る電車

『あれ、これって私死ぬの?』


 他人の顔色を伺って自分の思っていることを言葉にできなくて、嫌なことも嫌だと言えず、やりたいことも他人の目を気にしてやれなかった。変わりたいと思いつつ行動するのが怖くて流されるように生きてきた人生。

 仕事帰りの電車の中

この世にこれだけの人間がいて、みんな、自分の気持ちをどれだけ言えているんだろう。

このサラリーマンの人なんて仕事できそうな感じだし、ハッキリ自分のこと言えるんだろうな~

前に立っている男性を見ながら、今日あったことを思い出す...


 会社の先輩の工藤さん、いっつも自分の仕事を私に押し付けてくるのに、周りの人達は工藤さんのことを仕事ができる人だって思っているみたいで、工藤さんの周りにはいつも人が集まってきて賑やかで、モヤモヤするのと同じく人付き合いが苦手な私からすると羨ましい。

 そして今日は会社で大口な取引先との書類に大きなミスが発覚した。それは工藤さんが私に押し付けてきた書類が原因だった。私は書類に違和感があったから工藤さんに確認するように頼んでおいたものだった。でも工藤さんは確認しないで提出したみたい...でもそれが何故か私のミスで問題になったことにされてしまった。悔しかった、嫌がらせされようが周りと距離があろうと仕事だけはきちんとやろうと思っていたから。私はちゃんとやったのに!そう思っているのに、私のせいじゃないと、違うと言おうと思って口を開こうとするも、工藤さんや上司からの剣幕におされて何も言えず、他の同僚からも白い目で見られ、結局私のミスと言うことで責任問題にされてしまった。後日処分がくだるとのことで、今日は帰宅命令を受けてしまった。


 一人になって思い出しても、こんなときでも私は自分の想いを口に出すことができないのかと、自分に対して自分が許せなくて悔しかった。私のせいにされたことよりも自分の行動にモヤモヤした。

『もう、今日はとにかく家に帰って大好きなケーキ作りをして気分転換しよう!!ケーキ食べながら本を読んで元気だすぞ!』

私は無心にケーキや料理を作ったり、自分の思ったように生きる主人公が出てくる本を読むことだけがいまの私の人生の楽しみになっている。

 何のケーキを作ろうか考えていると・・・


「やめてください!この人痴漢です!」と女子高生がさっき私が見ていたサラリーマンの人の腕をつかんで大声を出している。

 そして電車が止まるなり降りて行き「誰か警察お願いします。この人痴漢です」と騒ぎになっていた。


 え?何となく見ちゃってたけど、さっきの人痴漢なんてしてなかったよね??

このままだとあの人濡れ衣着せられちゃう。えっと、どうしよう。降りて違うって言う?でも私にそんなこと言えるの?でもでも、このままだと、あの人今日の私と同じでしてもいないことをしたことにされちゃうんだよね。いまの私みたいに悔しい思いをしてしまう...

『そんなのダメー!』

そう思ったら足が震えるのを感じながら電車から一気に駆け降りて

「その人痴漢なんてしていません!私、前に座ってたので見てました!」

 自分でも信じられない行動をしてしまった。自分でもびっくりだ。


 それを聞いた女子高生はびっくりした顔をした後、私を睨みつけ「うるさいな!おばさんは引っ込んでてよ!」と両肩を勢いよく突き飛ばしてきた。

 震える足のせいで強く突き飛ばされた私の足はふんばることができずにホーム挟んで反対側の線路へと簡単に飛ばされてしまった。

 そこに運悪く入ってきた電車を視界にとらえた私は、走馬灯のように自分の人生を振り返り、今まで言いたいこと言葉にできなかった後悔と、人生最後に行動できたことが誇らしく思った。そして次の人生はもっと自由に生きたいと願いながら23年間の人生に幕を閉じた――――


読んでくださった方どうもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ