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ハッピーエンディング

《ボスモンスター『マッドネスマダムマリオネット』を撃破しました。報酬としてスキルポイントが2ポイント追加されました》

《ボスモンスター『マッドネスマダムマリオネット』を初撃破しました。報酬としてアイテムを配布しました》

《ボスモンスター『マッドネスマダムマリオネット』を初見撃破しました。報酬としてアイテムを配布しました》

《ボスモンスター『マッドネスマダムマリオネット』をソロ撃破しました。報酬としてアイテムを配布しました》

《種族レベルが上がりました。任意のステータスに2ポイント追加してください》

《職業レベルが上がりました。スキルポイントが2ポイント追加されました》

《スキル【操糸術】のレベルが10になりました。新たな技【スクウィーズ】を覚えました》

《スキル【死霊魔術】のレベルが5になりました。新たな魔術【魂契約(ソウルコネクト)】を覚えました》

《従魔『アシュリー』の種族レベルが上がりました》

《従魔『アシュリー』の種族レベルが規定値になりました。進化が可能です》

《称号『ボスを倒す者』を取得しました》

《称号『早い者勝ち』を取得しました》

《称号『一見必殺』を取得しました》

《称号『一人で倒せるもん』を取得しました》


「!?」


 最初のメッセージが頭に響き、マダムを確実に倒せたという確証を得たから、すぐにアシュリーを直しに行こうとしたのだけれど、続くメッセージの量に驚き、気付くと身体が動かなくなっているからさらに驚いている。


(何で動かないのよ。こっちは急いでいるのに!)


 口に出せないまま愚痴を吐いていると、レイピアから眩い光が輝きだした。

 何事かと思いアシュリーから視線を光に向けると、そこには貴族の格好をした男性と今まで戦っていたマリオネット達と同じ容姿、服装をした女性と二人の子供が現れていた。

 男女は共に手を取り見つめ合い、子供達は二人で手を繋ぎ、男女のことをじっと見ている。


『本当に、本当に、旦那様なの?』

『本物だよ。永く、待たせて悪かったねシルビア』

『ああ、やっと、やっとお会いすることが出来ました。ですが何故もっと早くに現れてくれなかったのです。それに私が過ちを犯してしまった頃にはもう旦那様の魂はこの世になかったはずです。だからあの器のみの人形を地下に封じたのです』


 どうしよう。早く行きたいのにムービーが始まってしまった。


『僕は死後、シルビアに会いにこの屋敷へ来たのだが、そのとき既に君は狂っていた。弱い僕はそれを見ていられず、天に昇ると称して逃げたのだ。だが天にいる間後悔しかなく、何とか君を呪いの道から戻したく精霊様に懇願したのだ。それが叶いここへ戻ってきたのだが、何の因果か自分のレイピアに我が魂が封じ込まれてしまったのだ。それから数年、そこにあった人形に乗り移る術を覚えたが、レイピアから遠く離れることは出来ず、何故かレイピアはあの部屋から出ることが出来なかったのだ。だから会いたくても会えなかった』

『ではどうして今私の前にいるのです』

『それは彼女が呪縛から解き放ち、ここまで連れてきてくれたからだ』

(えっ! 私!?)

『彼女は僕をここに連れてくるだけで無く、愛する子供達も解放し、あまつさえシルビアの心に直接僕を届けてくれた。だから僕は子供達の力も借りて、君を狂気から救うことが出来たんだよ』

『あぁ、ああ、そうだった、そうだったのね。愛しいオリバー、オリビア、貴方達こんな身体に縛り付けてしまってごめんなさい、こんな母親でごめんなさい』

『謝らないでください、母様。僕達は解放されたのですから』

『いまはみんないっしょでオリビアはうれしいよ! だから泣かないでおかあさま』

『そうね、そうよね。オリバー、オリビア、旦那様。私を救ってくださりありがとうございます。そして、綺麗なお嬢さん、私達家族を狂気という呪いから解放してくれて本当にありがとう……』

『礼を言うよ。救ってくれてありがとう』

『ありがとうございました』

『おねえちゃんありがとう!』


 口々にお礼を述べた婦人達は、皆泣き笑いの表情を浮かべながら天に昇るように光となって消えていった。と思ったら最後に婦人の声が聞こえた。


『貴方には同族のよしみで、特別な物をプレゼントするわ。上手く役立ててね……』

「えっ?」


《サブシナリオダンジョン『呪いの人形屋敷』を踏破しました。報酬としてスキルポイントが2ポイント追加されました》

《サブシナリオ『狂気の人形婦人』をクリアしました。報酬としてスキルポイントが5ポイント追加されました》

《サブシナリオ『狂気の人形婦人』の隠し要素をクリアしてハッピーエンディングを成し遂げました。報酬としてサブシナリオダンジョン『呪いの人形屋敷』がホームになりました》

《称号『初めてのダンジョン攻略』を取得しました》

《称号『幸せが一番』を取得しました》

《称号『夢のマイホーム』を取得しました》


 婦人が何か言い終えると、またもや多くのメッセージが入った。

 色々な事が起きたみたいだけど、そんなことよりアシュリーを助けないとならない。

 やっと動かせるようになったから、すぐにアシュリーのパーツを集め、頭が取れないように気をつけてアシュリーの身体を持ち上げる。幸いムービー中はHPの減少が止まっていたから、まだ助けることが出来るはずだ。


「アシュリー! 待ってて、必ず救ってみせるから! それまで絶対諦めちゃダメよ!」

「……」


 意識があるのか無いのかわからないけど、HPが残っているから生きていると信じて、急いで地下の研究室へ向かった。


~~~~~~~~


「先ずはHPの減少を止めないと。そのためにはアシュリーの核である魔石をどうにかしないと」


 研究室にたどり着いた私は、すぐに机にアシュリーを乗せると改めて彼女の状態を観察した。

 両腕は肩から両足は太ももの半ばから無くなっている。顔は左半分が無くなり残っている部分もボロボロだ。身体は他の部位と比べるとまだ保っている方だが、それでも至る所に切り傷が残り、ヒビ割れも多い。そしてここからは見えないが、中にある魔石、核も損傷しているだろう。


 兎に角、一番に直さないといけないのは核だ。魔石の扱いは【錬金】でしかしたこと無いが、ヒールによる回復もあまり効かなくなっている今、そんなことで悩んでいる時間は無い。


「少し我慢してね」


 アシュリーの核は露出していないから、当たりを付けて胸部の木材を慎重に削っていく。不幸中の幸いなのはボロボロとこぼれるように削れるので、突き刺したり力を込めなくても何とか核を見つけられたことだ。


 元になっているのが極小の闇魔石だからか酷く小さく見える。その核に大きなヒビが入っている。

 それを確認して自分の出来ることを思い返し、今使える力を選んでいく。


「よし。これでやってみよう」


 先ずはサイズアップさせた闇魔石を小さく砕き、核のヒビ割れているところを埋めるようにさらさらと掛け、そのまま【魔力操作】込みの合成と変形でヒビが埋まるように祈りながら魔力を流した。


「直れ直れ直れ直れ」


 すると次第にヒビ割れていたところを砕いた魔石が塞いでいき、一つの魔石に変わっていくのが見て取れた。だがここで終わりじゃない。

 さらに核に魔石をまぶし続け、球体になるように魔力の流れを意識して合成をかけ続ける。元が一つの魔石だから、このまま核を取り込み一つとなりアシュリーのための新たな心臓になれ、と念じながら全力で、だけど繊細に私の魔力を流し合成を……、終えた。


「これ以上は込められない……。それなら! アシュリー大丈夫なの! 返事して!」


 見た目は合成が成功していて、綺麗な一つの魔石になっている。HPも半分ほどで止まっていて減少はしていない。一命は取り留めたと思うけど、本当にアシュリーの意識に問題は無いのかと不安しかない。


 すると、とても小さなだけど間違えようのない意思が私に届いた。


「……」

「アシュリー! あぁ本当に、本当に良かったわぁ」

「……」

「本当に心配したんだから。もうあんな無茶は……、いや説教は後ね。先にあなたの身体を治してしまいましょう」

「……!」


 どうやらアシュリーもそうして欲しいようだ。そういうことなら早速始めてしまおう。


 腕はちょうど昨日作った魔法人形の腕があるからそれを使って、ってこれなにかしら? 知らないアイテムがいくつかあるわね。糸と人形の素材一式、可愛い顔のドール二体に、これはドレス? メイド服まであるわね。これって婦人からのプレゼント、よね……。


 いやいや、有難いけど今は置いておこう。アシュリー優先だ。

 えっと、魔法人形の腕を置いて、素材の中にあった人形の脚に魔力を込めてこちらも魔法人形の脚に変えておく。

 アシュリーの頭は、前面、顔に当たる部分を削り、素材から目だけがない頭を取り出し、アシュリーの残っている部分に合うように後ろ側を変形させていく。端から見れば頭をそのまま使えば、こんな面倒な事せずにすむと思われるかもしれないが、私はなるべく“アシュリー”を残したいのだ。


《スキル【木工】のレベルが5になりました。新たな技術【切り出し】【接合】を覚えました》


 すると【木工】のレベルが上がって新しい技術を覚えたけど、今はそれどころじゃないから後で確認することにした。


 アシュリーとそれぞれのパーツを正しく並べ、繋ぎ部分とヒビのあるところに接着剤代わりの木片と砕いた魔石を混ぜた物を塗っておく。これは【錬金】で変形すると魔石でも木材でも若干の流動性を持つことが今までの加工でわかっているから、試しに接着剤として使ってみることにしたのだ。

 次に素材の中から、顔に使うパーツを取り出す。紫がかった黒い眼を選び、眉毛や睫毛、髪の毛も黒を選んで綺麗に整える。

 最後に全体に魔力を流し、私の願いが叶うように言葉にする。


「どの素材もパーツもこれからはアシュリーの手となり脚となり顔となり、アシュリーのために使われる。これからは皆が一つになり、アシュリーになりなさい。……合成」


 MPの減りなど気にもせず、ひたすらに魔力を込めて合成を行う。

 ただでさえパーツ作りでMPが少ないが、底を尽きても無理矢理込める。


 そんなことをしたからだろうか、不意に立ち眩みのように力が抜け、そのまま床に倒れ……、る前に誰かが優しく支えてくれた。誰かとは、一人しかいない。


「あぁ、アシュリー! 良かったわ。それよりももう立ち上がって平気なの? 全力を尽くしたつもりだし正直自信もあるけど、体は大丈夫なの?」

「ええ、何の問題もございません。大変動きやすくなっています」

「えっ!?」

「ですがクリスティーナ様。無茶はおやめください。魔力が尽きてまで込め続けるなど、今のようにお体に障ります。今後はお気をつけください」

「あなた……アシュリー、よね?」

「はい。クリスティーナ様に創っていただいたドールのアシュリーです」

「でも何というか、確かにアシュリーだとは私もわかっているんだけど、今までの雰囲気と比べて大きくなったというか、子供っぽさがなくなったというか」


 私の中にあるアシュリーは、もっとこう、そう、子供っぽい感じだった。突然抱きついてきたり、嬉しい感情が表に出てたり、そんな素直な子供だったはず。

 だけど今のアシュリーは、その口調も合わさり随分と大人っぽくなってしまった。

 いや、悪いことじゃないのだけれど、久しぶりにあった近所の子犬が知らぬ間に立派な体格になった時のような、もう少しそのままでも良かったなぁというような、兎に角複雑な気持ちだ。


「それは……! 少し前の私が子供過ぎただけです! 私は違います!」

「そうなの。その反応にちょっと安心したわ」


 この感じ、間違いなくアシュリーだ。良かったわ、一足飛びで成長しきってなくて。


「ごほん! こうなったのはおそらく核が成長したから、私の自我も成長出来たんだと思います」

「なるほど、核が影響してたのね。所で今更だけど何でちゃんと喋れているの。何となくはわかるけど」

「多分想像通りかと。頭部にちゃんとした口、発声器官が付いたことで話せるようになりました」

「やっぱりそうなのね。ふふ、アシュリーとお話しできて嬉しいわ」

「! 私の方こそ、この素晴らしい体にしていただき、ありがとうございます」

「ふふふ」


 言葉では何とか抑えているが、雰囲気からはこんなにも嬉しさが溢れている。こんなにも喜んでくれるのなら、私の苦労も報われるし私まで嬉しくなる。

 こんないい結果になるなら、体の一つや二つ壊れたって私が直して……。いや、それはダメだ。しっかり言っておかないと。


「所でアシュリー」

「はい。何でしょうか?」

「あの時使ったのって【かばう】だよね。私、使って欲しくないって言わなかったっけ」

「そ、それは……。でも、そのおかげでクリスティーナ様はやられずにすんだし、勝てたではないですか!」

「むっ。そうだったかもしれないけど、私はあの時ダークウォールを使って防ごうとも考えていたわ」

「いーや、あの顔は絶対諦めてました! 今二人とも生きているのは私のおかげです!」

「はぁ、わかったわ。確かに二人ともこうして楽しく話せているのはアシュリーのおかげよ。それは感謝してるわ。でもあんな自分を犠牲にして私を助けるようなことは今後して欲しくないの。やるなら二人が確実に生き延びるときだけにして欲しいわ。まぁ、結果二人とも何とかなったのだから、今回は許してあげるわ。でも今言ったことは守って欲しいの」


 あんな思いを二度としないためにも、私ももっと冷静に判断して、もっと力をつけなければならないわね。


「むぅ、わかりました。今度からはそうします。でもやっぱり私がああしないとダメだったと思います」

「はぁ、昨日まではもっと可愛げがあったのに、今のアシュリーは少し生意気になってしまったわ」


 折角素直にしてくれれば、褒めてあげても良かったのだけれど。これが反抗期というやつなのだろうか。


「~~! そんなこというなら私も言わせていただきます! クリスティーナ様こそさっき無茶して倒れそうになってたじゃないですか! 見ていてとてもヒヤヒヤしました!」

「なっ! そんなこと言うのね。私が一生懸命想いを込めてたと言うのに……」

「えっ? でもでも、あんなに魔力を使ってたから、クリスティーナ様が倒れてしまわないか心配で、そしたら本当に倒れてしまったし。だから……」

「あなたの想いは十分に伝わったわ。心配してくれてありがとう。でもね、アシュリーのその想いと同じだけ私も心配したの。だから両成敗と言うことで、これからは互いに無茶しないように話し合っていきましょう。ちゃんと話せる口が出来たのだからね」

「クリスティーナ様……。わかりました。これからは心配されないように、もっとしっかりするように努力いたします!」

「うーん。少し違う気もするけど、まぁ、いいわ」


 強くなればその分心配ごとが減るかもしれない。それに何かあれば私もフォローすれば今回のように何とかなるだろう。だからこれからもアシュリーと共に歩んでいこう。


「アシュリー。これからもよろしくね」

「……はい! よろしくお願いします、クリスティーナ様!」


名前:クリスティーナ

種族:マリオネット Lv11→12

職業:マリオネット Lv11→12


生命力 10

筋力  17→19

知力  15

精神力  8

器用  20

俊敏  20


スキル 残りSP8→19


短剣術Lv15→17 操糸術Lv9→11

光魔法Lv10 闇魔法Lv10 死霊魔術Lv4→5

木工Lv4→5 錬金Lv5→7

魔力操作Lv5→7 糸操りLv3→5

識別Lv12→13 鑑定Lv12→13 解体Lv12→13

状態異常耐性Lv10



名前:アシュリー

種族:ドール Lv8→10


生命力 13→14

筋力  11→12

知力  10→11

精神力 13→14

器用  15

俊敏  12


スキル

短剣術Lv9→12 かばうLv1→2

状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv6

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