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錬金で武器作り

 木曜日。

 木曜日は遅くまで講義が入っているので、帰ってきて夜の諸々を済ませて寝る支度が終わったら、もういい時間になっていた。

 今からMESOを始めてもあまり長くは出来ないから、今日は生産でもしてログアウトしようと思う。何にせよログインをしなければ、アシュリーの無事を確認するために。


「おはよう、アシュリー」

「……」


 ログインした私に気付いたアシュリーは、昨日と違って抱きつくことはせずホッとしたような仕草をするだけに留まった。


 さて、宣言通り【木工】や【錬金】をしに地下へ行こう。それで時間があるようだったらレベル上げだ。

 最近レベル的にこの屋敷じゃ足りなくなってきたから、そろそろボスに挑むつもりだ。そのための武器やアイテムを作るのが今日の目的だ。ただこの屋敷、広い割りには本当にアイテムが少ないから余り期待は出来ない。



「早速始めましょうか」


 実験室にやって来た。今回は【錬金】をメインに物作りをしてみるつもりだ。と言うのも【木工】は木材から何かを削り出すなりして作るしかないが、【錬金】は【魔力操作】を使って色々出来そうな気がするからだ。


 机に向かって【錬金】を始める。今からやるのはレシピを元にしないオリジナルの方だ。

 魔樹の木材と魔石を参考に人形の腕に魔力を込めるとどうなるか。試してみる価値はあるだろう。

 と言うわけで【魔力操作】でゆっくりと魔力を流していく。ついでに溢れるほどある人形の木片を劣化しているところに補強するように詰め込んでいく。糊や接着剤はないので魔力を込めながらくっつけくっつけと念じておく。


「くっつけ……纏まれ……一つになれ……。ふぅ、これで魔力は行き渡ったと思うけど、どうかしらね」


 最大MPの半分ほどの魔力を流したところで反発が強くなってきたので流すのを止めた。

 魔石を作ったときと比べると、しなやかさというか弾力性があり、何となくだが限界の目安が手に取れた。魔石はこれがわかりづらく、つい魔力を流しすぎてしまったので割れてしまった。


「さてさて。どう変わったかしら」


 やり終えた人形の腕の鑑定結果がこちら。


【素材】魔法人形の腕 レア度3 品質C

 マギドールの腕のパーツ マギドールの魔力が染みついた木材の腕型パーツ 太さや長さがあまりないので加工するには向いていない


 うん、素材が勝手に進化してた。マギドールは確かドールからの進化先の一つだったはず、ただの人形の腕がそのマギドールのアイテムであろう魔法人形の腕になっていた。それも品質がCと初心者装備に並ぶほど高い。

 傷やへこみに詰め込んだ木片も完全に一体化して区別がつかないほど綺麗になっている。やってみるものだな。


 折角なら両腕分あった方が見た目のバランスもいいので、今作ったのとは左右逆の人形の腕を取り出し、同じように作った。こちらも鑑定結果は変わらず魔法人形の腕になり、これで一対の腕が揃った。


 ふとここで、何故腕しか落とさないのかと疑問に思った。

 朽ちたドールには腕も脚も当然頭もある。それなのに手に入るアイテムは毎回人形の腕と木片だけ。既に百何十と倒しているのでドロップする確率の問題とは考えにくい。

 足をもいでから倒したこともあるが、その場合も腕だけだった。

 何か方法があるのか、全身を残して倒す方法があるのか、と考えたが、ただのゲーム的な設定かもしれないと頭を振り、何にせよ今度にしようと【錬金】を再開した。


 次にやろうとしているのは掲示板に書いてあった魔石の合成だ。

 これは下位の魔石を十個消費して一つ上の魔石を作り出すと言うもので、そのやり方は円周上に九個の魔石を、その真ん中に一つの魔石を置き、真ん中の魔石に他の魔石の魔力を移すように【錬金】をすると出来るようだ。

 これをすると周りに置いた魔石はなくなってしまうので、魔力を込めて魔石に戻すというやり方は出来ないようになっていた。

 ただこの方法を見たとき、魔石から魔石に魔力を移しているだけならば、私から魔石に魔力を込めても出来るのではないかと思ったが、実際は出来ずに割れてしまった。魔石同士だと魔力の性質が合うのか、ゲーム的な仕様か。とりあえず一度試してみよう。


「極小の火魔石を並べてっと、【魔力操作】で補助をして、あつまれ~あつまれ~」


 すると真ん中の魔石に魔力が吸収されどんどんと大きくなっていく。反対に周りの魔石は小さくなっていき、最後にはなくなってしまった。そして残った真ん中の魔石は、二回りは大きくなり拳くらいになっていた。


【素材】火魔石:小 レア度2 品質C

 火属性の魔力が含まれている魔石 サイズは小さい


 ちゃんと成功していた。掲示板には難しいと書いてあったけど上手く行って良かった。

 その掲示板には、魔石のサイズを上げた方が買い取り金額が高くなると小さな賑わいを起こしていた。

 私は売りに行く場がないのでただの興味本位だ。そしてやってみてわかったが、この方法だとMPの消費がほぼなく作れるのでレベル上げには良さそうだ。ということで今ある火魔石を全てサイズアップしてしまおう。


《スキル【錬金】のレベルが5になりました。新たな技術【変形】【合成】を覚えました》


 火魔石を半分ほど消費したところで、【錬金】のレベルが上がった。そして変形と合成という技術を覚えた。

 これってもしかしなくても本来は合成を使って魔石を大きくするんじゃないだろうか。覚える前から出来てしまっていたんだけど……。まぁいいか。


 その後、合成を使って火魔石を作ってみたけど品質がDに下がっていた。何でだろうと考えつつ、【魔力操作】しながら合成するとCに戻った。


「うーん。使ってるスキルを多くした方が品質が良くなる? それともただ相性がいいだけ? これだけじゃわからないわね」


 まぁ、品質が高いに越したことはないし、別段大変と言うこともないので今後も【魔力操作】を使いながらやることにしよう。


「火魔石はこれでほぼ終わり。次にやってみたいのは……」


 今度はこの小サイズの火魔石を十個使うと中サイズになるかどうかだが。


 結果は、出来なかった。どうやら私の【錬金】か【魔力操作】のレベルが足りないようで、魔力を移そうとしても僅かに動くだけで到底貯まる様子がなかったから諦めた。魔石がなくならなかっただけマシかしらね。


 次は闇魔石のサイズアップを終わらせた。三割くらいしかフライングドールは落とさないのでそこまで数はないが、小サイズの闇魔石が数個作れた。この時に自作した闇魔石も混ぜて合成してみたけど、何の問題もなく完成した。


 つまりはMPさえあれば光魔法を石ころに込めてまとめると光魔石の小サイズも作れるかもしれない。今はMPも時間もないのでやるとしたらまた今度にしよう。


 さて次で最後にしよう。

 合成した火魔石を初心者の短剣で叩き削り砕いていく。専用の器具があればこんなことしなくてもいいのかもしれないが、私は持っていないので耐久力∞のこの短剣で無理矢理削っていく。

 そしてこの砕いた火魔石を魔樹の投げナイフの刃の部分が見えなくなるまでまぶして、変形で形を整えてから合成で一つに纏まるように固めていく。

 仕上げに表面を綺麗にし、刃になる部分だけ短剣でやすり鋭くさせて、念のためもう一度【魔力操作】で全体を固めて完成した。


【武器:短剣】魔樹の魔石装ナイフ レア度3 品質D

 攻撃力17 重量4 耐久値90/90

 刃の表面に魔石を纏わせた魔樹のナイフ 投げるのには適さなくなったが普通のナイフ程度には硬くなった 魔力を通すことで切れ味が上がり火属性の攻撃が可能になる


 作っていたのは新しい武器だ。ボスに挑むために武器や防具を作りたかったのだけれど、防具は【木工】と【錬金】では今は作れそうになく、武器は私もアシュリーも攻撃スキルが【短剣術】しかないので必然的に短剣を作るしかなく、思いついたのがこの硬いもので覆った短剣だ。

 硬いものが魔石しかなく、その上加工する方法もわからなかったので、とりあえず三つほど砕いて回りにくっつけて固めただけだが、意外としっかりした見た目の短剣に仕上がった。

 その見た目はやや刃の部分が大きい黒っぽいナイフだ。触るとデコボコしているが、合成の成果か砕いた魔石は全て一体化していて思いのほか荒くは見えない。試しに魔力を流してみると刃が薄らと赤くなった。説明通りならこれで攻撃すると火属性になっているだろう。


「ふぅ。なんだかんだでいい時間になってしまったわね。それじゃあこのナイフはアシュリーにあげるわ」

「……?」

「私が使わないのかって? それでもいいのだけれど、二人の戦力のバランスを考えるとアシュリーが使った方がいいと思うわ。それに、ナイフはまた作れるけど、今のアシュリーは創れないもの。大事にしないとね」

「!! ……!」

「嬉しいのはわかったから少し落ち着いて。と言うことだからこれは渡しておくわ。さぁ書斎に戻るわよ」


 出来るならこのナイフを私が使って短剣をアシュリーに渡せばいいのだけれど、初心者の短剣はアシュリーにも譲渡も装備も出来ないから、やっぱりアシュリーが使うのが一番だろう。どうしても必要ならまた作ればいいことだし、握った感じ私は今の短剣の方が扱いやすそうなので、ナイフに未練など全くない。


 そうして、合間に耐久力を回復させていたアイテムも回収して、私は書斎に戻ってログアウトした。明日はいよいよボスに挑もう。


名前:クリスティーナ

種族:マリオネット Lv11

職業:マリオネット Lv11


生命力 10

筋力  17

知力  15

精神力  8

器用  20

俊敏  20


スキル 残りSP8


短剣術Lv15 操糸術Lv9

光魔法Lv10 闇魔法Lv10 死霊魔術Lv4

木工Lv4 錬金Lv3→5

魔力操作Lv4→5 糸操りLv3

識別Lv12 鑑定Lv12 解体Lv12

状態異常耐性Lv10



名前:アシュリー

種族:ドール Lv8


生命力 13

筋力  11

知力  10

精神力 13

器用  15

俊敏  12


スキル

短剣術Lv9 かばうLv1

状態異常耐性Lv6 火属性弱点Lv6

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