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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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3-11 “少女”の過去夢(3)

 ――ほんのりと優しい桜の馨りに私は、安心してしまい…静かに寝息を立てた。


・・・・・


 翌朝、起床し…朝餉の支度をしている時に尼様から昨夜の村長の奥様との話しを教えてもらった。

 どうやら『土地神様』に“変化”が、あったそうだ。


 昨夜の夕餉前に理由は、分からないが…あんなに覆い隠すように濃い霧を立ち込めていたというのに『パッ』と、息を吹いたように晴れたそうだ。

 奥様に理由を聞かれたが、分からなかったので、そう答えた。


 そして、奥様に理由が判明したら教えて欲しいと約束されたそうだ。


 困り果てた尼様に「何か、知りませんか?」と、質問されたが…私自身も知らないため「分からないです」と、答えるしかなかった。


 私の答えに尼様は「そうですよねぇ…」と、一瞬だけ悩まれたが直ぐに「分かりました、変な事を聞いてごめんなさい…さ、朝餉を作りましょう」と、直ぐに切り替えるように朝餉作り始めた。


 私も尼様の手伝いをしながら朝餉を作り、今日も差し入れを作った。

 自分達の朝食を食べ終えながら片づけをし、出かける準備をして玄関先まで向かっていると、誰かが訪ねてきた。


 尼様が、玄関の戸を開けて対応すると…村長だった。


 村長は、尼様に深々とお辞儀をしながら「朝っぱらから訪ねてしまって、申し訳ありません」と、早い朝からの訪問を詫びると尼様は「いぇいぇ…すみませんが、先に行っていてもらえますか?」と、私に訪ねられ私は「分かりました、行ってまいります」と、尼様と村長にお辞儀をし差し入れを持ち、尼寺を後にした。


 今日も朝から忙しそうに農作業をしている村の人達に挨拶を済ませ、尼寺の窯元にて、作った梅干しのおにぎりと焼きジャケのおにぎり二種と関東風の稲荷寿司と持った野菜を昨夜に仕込んだ青葉の醤油漬けと温かい緑茶の差し入れを手渡した。


 差し入れを手渡すと、これでもかと感謝され受け取ってくれた――…そして、お礼に今日も収穫したての野菜を届けると約束を交わし、畑を後にした。

 尼寺(じたく)に戻り、部屋に行こうとすると尼様と村長の話し声が聞こえた。


 恐らく、昨日の裏山の霧が晴れの事だろう。


 神主である村長は、今までになかった経験したため昨夜から原因を探っているようだが困り果て「妻から聞いただろうが…本当に心当たりは、ありませんか?」と、尼様に質問していた。


 軽く立ち聞きしてしまったが…差し入れを届けた事を報告しないといけないので、私は「尼様、戻りました」と、戸を開けた。


 戸を開けると…尼様と村長に「お帰りなさい」と、口々に言いながら優しく微笑み出迎えてくれた。


 そして、村長から私に尼様にしていた質問を問いかけた――…やはり、何度も考えても分からなかったので「すみません、分からないです」と、素直に答えた。

 私の答えに村長は「そうですか…それでは、一体…」と、ますます困り果てていた。


 何となくだが…村長に私は「どうして、そんなにこだわるんでしょうか?」と、質問返しをしてしまった。


 尼様に多少、注意を受けたが村長は「確かに…先程から私ってば、一方的でしたな」と、私と尼様に謝罪をし「実は…近日、お祭りに大きく関わる事態なのです」と、事の成り行きを離し始めた。


 簡単に纏めてしまうと…裏山に住む『土地神様』を慰める意味を込め“ある行事”を代々、絶やすことなく行わないといけない事と一度でも“お怒り”による先程の濃い霧が立ち込めてしまっている時に行事を行うと天変地異を引き起こしてしまう事を話してくれた。


「――以前は、子供達の元気に遊ぶ声で何とかなったのですが…」と、ポツリと話すと出されていた茶を飲んだ。

 昨日、差し入れをした際に子供達から聞いた話だった。


 しかし、今回は…駄目だったそうで何とかしようとしている最中に『スゥ…』と、静かに立ち込めていた濃い霧が消え去っていったそうだ。


 私は、何となくだが…草笛を吹いていたの事を思い出していた。


 しかし、直ぐに「(違うんじゃないかな…?)」の方が強く残っていたので、何も言わずにいたが…先程まで考え込んでいた尼様が「音…?」と、言葉にした。


 尼様の言葉に直ぐに村長は「音?」と、控えめだが食いついた。


 村長の思わぬ食いつきに驚いていたが…尼様は「昨日の夕暮れの時でしょうか…笛の音が聞こえたような…」と、静かながら控えめに言うと村長は「笛の音、ですか…ふむ…」と、また考え込んでしまった。


 考え込んでしまった村長をよそに何時の間にか昼食の時刻になってしまったので、私は「昼餉の用意とお茶のお代わりを持ってまいります」と、尼様に挨拶をし窯元に急ぎ、昼食作りを始めた。

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