3-10 “少女”の過去夢(2)
「違ぇねぇ」
「――んっ…さーて、もう人働きだ~!差し入れ、ご馳走様でした~!」
村の人達から差し入れのお礼を言われ、畑仕事に戻っていった。
尼様と私も差し入れの片づけをしながら尼寺に戻った。
ふと、何度も裏山の方を見てしまい「(下手な慰め、か…)」と、考えてしまった。
そんな私の様子を尼様は、気に掛け話しを聞いてくれた――…尼様も同じ事を考えていたのか、一緒に考えてくれた。
その日から村長の許可を貰い、尼寺で摘んだ草花を出店で買った和紙で包装し供えさせてもらったりした、が…――それでは…あくまで尼と巫女としての“役目”全うしているとしか思わぬ事に行き着いてしまっていた。
それどころか、何日経っても…裏山の様子は、変わらなかった。
知らないうちに緊迫し行き詰っていた私は、草笛を吹いた。
草笛は、前に居た孤児院にて姉として慕っていた人から教えてもらった…考え事を纏めたい時や何も考えたくない時に吹くと気分が落ち着き、考えていなかった事がパッと思いついたりすると…教えてもらった。
その人の草笛は、本当に透き通る音で…変な言い方かもしれないが「カッコイイ!」と、いう言葉しか当てはまらなかった。
その人に話しを聞くと私が来る前に孤児院にて、アメリカの海軍の野外演奏会を行うために来てくれた演奏家の一人に教えてもらったそうだ。
その人のように上手くないが何とか私は、草笛を吹いた。
ぎこちない音色だが、何となく『さくらさくら』を吹いた――…吹き終えると、教えてくれた人の言葉通りに気持ちが…少しだけ、和らいだ気がした。
また一からだが、考え直せばいいと改めた。
すると『サワッ…』と、そこそこ強い風が吹くと同時に思わず村の方を振り向くと…若い男の人が立っていた。
歳は、十代後半から二十代前半くらいで、綺麗な黒髪と白く透き通るような雪肌、目の部分は…隠すように厳重に包帯が、巻かれていた。
突然、目の前に現れた青年の登場に驚きながらも…私は、「ど、どうかされましたか?」と、恐る恐る訪ねた。
「――笛の音が聞こえたから…」
「笛…?あ、この音…ですか?」と、持っていた草笛を吹いた。
「うん、その音…」
「草笛です、下手な音を聞かせてしまって…ごめんなさい」
「全然、下手ではないよ…差し支えなければ、もっと聞かせてくれぬか?」
「えっ…えっと…」
「駄目か?」
「わ、分かりました…」
私は、そう言いながら少し深呼吸をし…草笛の演奏をした。
暫くして、1曲~2曲か演奏をし終えると青年は、優しく見つめていた。
思わず、恥ずかしくなり俯くと『彼』に「我の我儘を聞いてくれて、ありがとう」と、言いながら優しく私の頬を撫で『フワ…』と、風が吹くと同時に消え去っていた。
急だが、それが『彼』との出会いだった。
突然な出来事に放心してしまったが、もう夕暮れ時だったため直ぐに夕餉の支度をするために窯元に向かった。
窯元に着くと、尼様と村の村長の奥様が話し声が聞こえた。
私は、挨拶をしようとすると村長の奥様は「それでは、よろしくお願いします」と、尼様にお辞儀をし窯元を後にした。
挨拶しそびれてしまった、私は「尼様?」と、声をかけると尼様は「あっ…居たのね」と、少し歯切れが悪かったが「村の方々から今朝の差し入れのお礼に収穫したての作物を頂きましたよ」と、篭から溢れんばかりの作物を見せてもらった。
「わぁ…凄い沢山っ…!これで、煮物と味噌汁と…香の物も出来ますね」
「そうですね―…早速、作りましょうね」
何となくだが…尼様は、どこか疲れきっているようで“何か”を隠しているようだったが追及せず、夕餉を作り始めた。
夕餉を済ませ、風呂から上がり終え、自室に戻った。
すると、自室の戸の前に山桜の一枝がひっそりと置かれていた。
私は、恐る恐る桜の一枝を持った…桜から仄かに優しく馨っていた。
しかし、もう初夏から夏本番になっていたため、桜の咲いている季節でない事と“誰”が持って来た事に疑問が沸いたが…直ぐに疑問に持つのを止めた。
何故なら夕餉の支度前の出来事の事を思い出し…緊張による疲労で、睡魔に襲われていたのだろう。
直ぐに明日の予定を改めて確認し、床に着く前に床の間に飾った桜に「おやすみなさい」と、挨拶をし就寝した。




