3-9 “少女”の過去夢(1)
主人公の『前世』のお話です。
よろしくお願いします。
そして、改めて契約をし直す事が出来た大学の多くは、不思議な事に今まで芋づる式に出ていた不祥事の報道や取材は、静かに鎮火し収まったそうだ。
その一件を嫌というほど、体験し経験した多くの講師と在校生と関係者は、口々に「あの村の『戒厳令』は、絶対!」だと、後から来た新人講師と後輩達に語り続けているらしい。
元々、初めの契約をした際に祖父から説明を受けていたのに村の人達に「何を言ってるんだ?」と、厭きられているが諦めているそうだ。
しかし、大学は村の裏山に住まう『土地神様』の偉大さと威厳さに大学と、その関係者が恐れ続けている事を叔母が、愚痴交じりながら話してくれた。
――そんな事を思い出しながら時計を見ると…もう夜の十一時になっていた。
軽く慌てて布団に潜り込むと先程まで、あんなに寝付けなかったのに『スゥ…』と、手を引かれるように睡魔に襲われた。
そして、懐かしい『夢』を見た。
・・・・・
その『夢』の内容は…不思議な事に読んでいた古書と同じ、だが…後日談?のようだった。
私だけど違う…不思議な感覚だが、違和感が無かった。
その『夢』の中での私は、戦時中に親兄弟を亡くし、孤児院にて生活が困らないように物書きや料理、裁縫等を教えてもらっていた日々を送っていたが…尼様に養女として引き取られた。
尼寺に着き、部屋にて尼様に手伝ってもらい…初めて着た巫女衣装は、新鮮だった――…何となく巫女衣装に三つあみは、似合わないと感じ…直ぐに髪を解き、ポニーテールにした。
着替えを終えた頃…尼寺から少し離れた所には、合併予定の廃村もあり…行く事になっていた。
丁度、その村に私の挨拶回りをする事になっていたのだ。
尼様の話では――…元々、大きな山に覆い隠すような目立たない廃墟となっていた山村だったが…戦時中の隠れ家として、物資運びが楽になるように山を切り開いたそうだった。
しかし、その山村は、曰くつきであった――…村に着いて早々に村長さんの挨拶を済ませ、裏山に向かうように尼様と一緒に促された。
裏山に着くと、どっしりとした迫力と“人”ではないが…風格が、凄く圧倒された。
――その山の特有の美しさが凄かった…が、どこか哀しげな印象を受けた。
私は、裏山に手を合わせ「今日から村の外れにある尼寺の子になりました」と、挨拶をした。
挨拶をし終えた時に『フワッ…』と、その山から優しいそよ風が髪と頬を撫でた。
まるで「よろしく」と、言っているようだった。
私は、直ぐにお辞儀をし裏山を後にした。
尼寺で過ごしながら年月が過ぎていく中、私も成長すると同時に何度も裏山を巡って、二度も惨事が起こってしまった。
一つは、ある貴族が裏山から覗く風景が気に入り別荘を建てたいと申し出た。
当然、村長は断った。
何故なら「代々、この地を守り続けている『土地神様』の住まいであり、そんな失礼な事をすれば恐ろしい呪いが降りかかる」と、いくら貴族に向け断言したが「今の時代に古臭い『土地神様』など、居るものか!」と、迷信として聞き入れない貴族一家は、村長の忠告を無視し裏山に入ってしまった。
後に無残な惨殺死体として、山菜取りに行っていた村人に見つけられた。
・・・・・
窯元で、農作業をしている村人の人達のためにおにぎりや稲荷寿司、温かい煎茶の差し入れの準備中に尼様から話しを聞いた私は、恐る恐る窓から裏山を見た…凄く濃い真っ白な霧が覆い隠していた。
まるで、裏山を荒らされ怒りを隠しているような感じを受けた。
差し入れの支度を終え、尼様と一緒に畑仕事をしている村人の人達に挨拶を済ませ差し入れを配った。
ついさっき、作ったばかりの差し入れが、あっという間に気持ちよく完食してくれた。
私は、また何となく…裏山の方を見た。
やはり、差し入れを用意している時に窓から見たままだった。
直ぐに「(何か…私に出来る事は、あるかな…)」と、思っていると村人の人達も裏山を見ていた。
尼様から聞いた惨事の事を話し始めた。
「あれだけ、村長が言っていたのに…」
「元々、迷信と決め付けて聞かなかったからな~…」
「…土地神様のお怒りで、また濃霧の迷い森になってしまったな…」
「だなー…おい、オメェ等も行くんじゃねーぞ」
「えー!またぁー?」
「ワガママ言っちゃ駄目だよ、どうなるかぐらい身に沁みてるだろ?」
「!うーっ…」
「まったく…土地神様がお怒りの時に友達と探検ごっこして迷子になって…神主である村長のお陰で、見つかったんだからね?もう煩わせるんじゃないよ?」
「だ、だって~…おいら達の声を聞いたら土地神様…喜んでくれると思ってぇー…」
「何だ、その屁理屈…」
「火に油じゃないか…巫女様も気をつけてくださいね」
「は、はい」
「バカ!巫女様をオメェ等と一緒にするんじゃねぇよ!」




