何で…
「おい!!陽斗君?」朦朧とした意識で目を開けると、涼矢先生が目の前に立っていた。
「えっ涼矢先生?」
「喋らなくていいから。今からいつもと違う場所いくからな」そう言って先生は僕を抱き上げた。
しばらくして、
「寝てていいよ」そう言われて、保っていた意識をまた手放した。
「ひな君、馬鹿なの?心配したんだから…」
「お兄ちゃん…」
「2人とも、怒るのは後にして?倒れたばかりだから…」
「あーくん、何で来たの?来なくていいって言ったじゃん」僕は素直になれなかった。
「陽斗君、俺が朝日たちに連絡したから…」
「ひな君、何であんな所いたんだよ。涼矢が来なかったら、死んでたかもしれないんだぞ?」
「うるさい。僕のことなんかほっといてよ。帰って…」
「陽斗君、朝日たちは心配して来てくれたんだよ?」
「ねぇ帰って、帰って!!ゴホゴホ…」
「ひな君!?」
「帰って!!もう1人にさせて…」僕はそう言ってそっぽを向いた。
「朝日、一旦出るよ」そう言いながらあーくんたちは僕の病室を出て行った。
落ち着いて周りを見渡して見ると、いつもの部屋じゃなかった。
僕の腕には、輸血のための管と、点滴が付いていて、僕の胸から伸びている線の先には、心電図が付いていた。
(これを全部抜いたら死ぬのかな…)
そう思いながら、それが出来ない自分と、生かされている自分に嫌気がさして、僕は目から涙を流した。
泣くと必然的に過呼吸になって、苦しくなった。
そして、過呼吸に誘発されて、発作もおきてきた。
(何でこんなに弱いんだよ…)
心電図から警告のアラームが鳴り、病室の外で待機していただろうあーくんたちが病室に戻ってきた。
「何で帰ってないの?」
「ひな君、後で怒っていいから、今は喋るな…」あーくんは兄貴の顔から、医者の顔になっていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」友ちゃんまで居るの?
心配かけちゃうな…
「僕は大丈夫だから…帰ってよ」
「はぁはぁ…ゴホゴホ」
「どこが大丈夫なんだよ。苦しいだろ?」
「大丈夫…ゴホゴホ…」僕はムキになっていた。
喋る度に胸は痛くなって、僕は胸を掴みながら咳き込んだ。
手で抑えても、口元からこぼれ落ちる赤いものは止まらずに、毛布を赤く染めた。
「陽斗!?」あーくんの手が一瞬止まった。
僕は何も言わずにそっと目を閉じた。




