余計なもの
試みに自分の首を切り落としてみました。
ええ、とても苦労はしましたが何とか成功しましたよ。なんせ人の体を切るなんて、まあたいていの人はそうでしょうしそうでなければ通報しなければいけませんが、初めてでしたので。それも自分の首だなんて。
肉を切るだけならばまだしも厄介な骨がありますし。確か首の骨というものは七つあるんですよね。そしてキリンぐらいに長い首でも実は同じように七つしかないと言うのは聞いたことがあります。ただ、私にとっては切り離すのがその内の五番目の骨でも六番目の骨でも変わりありませんが。
包丁やのこぎりや金づち等々。念には念を入れてチェーンソーでも購入していればよかったのかもしれませんが……。
とりあえずは無事に首を切り落とせました。
夢を見ているようです。と言うよりも悪夢でしょうか。現実感がなく不思議な気分です。
しかし、首が落ちた時に大きな音がしたかもしれませんが、耳も分離されているので何も感じませんでした。「首」と言ってもいわゆる喉仏のあるような頭と胴体をつないでる部分だけではなく、当前ですが頭も一緒に自分の体から分離させているからです。
――いえ、よく考えれば本当の「首」の部分さえ落としさえすれば頭も自然と離れますね。私はね子供の頃、「首無し男」と言う名前のお化けが当たり前のように頭も無かったのが、名前とのずれもありスッキリしないものでしたが、実際に自分がなってみると納得ですね。
さて、余計なものが無くなってとても気分が軽くなりました。ええ、体重自体も軽くなっていますよ。
身体を振ります、ぶんぶんと。重量物がないのでずいぶんと軽いです。勢いあまってバランスを崩しかけました。
身体の上部、丁度頭があった空間で両手を結びます。頭がある角度では成立しなかった両手のこの角度とこの位置!
少し残念ですが、認識としては特別でも肉体の方には大きな驚きはないようです。
そんな事よりも望み通りの状態になれている、その喜びが腹の底から湧き上がっているような状態です。
いらなくなったんですよ。悩み苦しむ、そんなものの為に存在する部位なんて。
家族の事、恋人の事、仕事の事、将来の事への懊悩を首と共に取り除けた気がします。
お気に入りの帽子が今後かぶれなくなるのは、まあ残念ですがね。




