第62話――志願者の選定――
ホークスはギルド銀行のカウンターの前に立っていた。
「……合計300万ルクスになります」
受付係が丁寧に言う。
ホークスはため息をついた。
「……はぁ」
ルクスを受け取りながら呟く。
「ギルドの仕事で六魔将になったのに、なんで俺が払うんだよ……」
ぶつぶつ文句を言いながら、リゼルの元へ戻る。
そして待っていたリゼルに、泣く泣くルクスを渡した。
リゼルは受け取ると、いつも通り淡々と言う。
「確かに受け取りました」
ルクスを確認し、書類に印をつける。
そして顔を上げた。
「それでは明日の朝9時半。城壁外の大型訓練場に来てください」
「志願者はすでに集まり始めています」
ホークスは眉を上げる。
「もう集まってるのか?」
「はい」
リゼルは頷いた。
「準備がありますので、私はこれで」
それだけ言うと、さっさと立ち去っていく。
残されたホークスはしばらくその背中を見送り、深くため息をついた。
「……もういいや…酒、飲むか」
ホークスはそのままギルド酒場へ向かった。
やけ酒である。
「あのクソジジィ、まさか、たかられるとは思わなかった」
酒を飲み、適当に飯を食い、夜には宿へ戻る。
そして翌朝。
ホークスは城壁外の訓練場へ向かっていた。
遠くからでも分かる。
すでに人が集まっている。
300人ほどだろうか。
訓練場の前には志願者達が集まり、ざわざわと騒いでいた。
そこにホークスが現れると、空気が少し変わる。
「……あれが」
「闇魔将か」
「ホークス……」
「アルクを討ち取ったって本当か?」
ざわめきが広がる。
ホークスはそれを気にもせず、まっすぐ朝礼台へ向かった。
そこにはすでにリゼルが立っている。
「来ましたか」
「ああ」
ホークスは軽く頷いた。
そして小声で言う。
「この後、俺が軽く挨拶する」
「終わったら志願者の中を見て回れ」
「最低でもランク3の魔法の素質がある奴は肩を叩け」
「魔法戦士候補だ」
リゼルは即答した。
「了解しました」
そして志願者達の方を見て、すでに魔力を測定し始めている。
ホークスは朝礼台に上がった。
志願者達の顔を見る。
綺麗な身なりの貴族。
武骨な兵士。
粗野な冒険者。
戦場を知っている顔。
野心を秘めた顔。
色んな人間がいる。
ホークスは少しだけ笑った。
「……へぇ」
小さく呟く。
「中々いいな」
そして声を張る。
「静かにしろ」
ざわめきが止まった。
全員がホークスを見る。
ホークスは腕を組みながら言った。
「お前ら、よく集まってくれた」
「俺の部隊は遊びじゃない、戦争を終わらせる決定打を与えるための、この国の精鋭中の精鋭の部隊を作るつもりだ」
「厳しい訓練をする」
「ついてこれない奴は勝手に消える」
ホークスは淡々と言う。
「だが」
「最後まで残った奴は」
「俺と一緒に戦場に立つ」
「皆それぞれ思惑があるだろう。俺の演説に感化された奴」
「戦場を求めて来る奴、出世の為に来る奴。」
「どんな思惑でもかまわん!!」
「俺について来れる奴は歓迎だ!!」
少し間を置く。
「今から部隊は二つに分ける」
「魔法戦士」
「機動部隊」
志願者達を見る。
「肩を叩かれた奴は魔法戦士候補」
「叩かれなかった奴は機動部隊だ」
ホークスは朝礼台を降りてそのまま志願者の群れに入った。
魔力を測りながら歩き規定を満たしている者の肩を叩く。
その途中。
見覚えのある顔を見つけた。
「……お」
「お前は確か……リグルドか?」
男が振り返る。
「ホークスさん!」
目を輝かせる。
「覚えててくれたんですね!」
「まあな」
ホークスは笑う。
「志願したのか?」
「はい!」
リグルドは頷いた。
「ギルドと掛け持ちで頑張ろうと思ってます!」
ホークスは肩をすくめた。
「訓練で足腰立たなくなって」
「クエスト行けなくなっても知らねぇぞ?」
リグルドは笑った。
「それでもやります」
ホークスは魔力を確認した。
(前見た時は普通の剣士だったが……潜在魔力もそれなりだな。こいつは伸びるかもな?)
軽く肩を叩く。
「魔法戦士候補だ、頑張れ」
リグルドは満面の笑みを浮かべた。
「はい!」
こうして。
ホークスとリゼルは志願者を見て回った。
300人程いた志願者の中から
約100人。
魔法戦士候補が選ばれた。
ホークスは全員を見回す。
「よし」
「早速だが訓練を始めるぞ」
志願者達がざわつく。
ホークスは振り返る。
「今から城壁の周りを一周だ」
そして走り出した。
志願者達は一瞬固まる。
「え?」
「今から?」
だがすぐに後を追う。
ホークスとリゼルは軽いランニングの速度。
しかし志願者達は必死だった。
息を切らしながら走る。
ホークスは後ろを振り返る。
「午後はもっときついぞ!」
リゼルを見る。
「木剣」
「短剣」
「防具」
「訓練用のやつ用意しとけ」
リゼルは頷いた。
「承知しました」
そのまま訓練場へ走って戻る。
一時間後。
ホークスは城壁を一周し終えた。
しかし志願者はまだ来ない。
しばらくして。
数人が走ってくる。
その中にリグルドがいた。
さらに30分ほどして
ようやく全員が戻る。
ほとんどが息を切らしていた。
「……マジかよ」
「いきなり走るかね」
「ハァハァ…ちくしょう」
ホークスは訓練場へ入る。
そこにはすでに
木剣
短剣
訓練防具
が並んでいた。
「次の訓練だ。装備しろ」
志願者達が顔を見合わせる。
「……ちょっと待ってくれ」
一人が文句を言った。
「ハァハァ……休憩させてくれ」
ホークスは木剣を手に取る。
「準備できた奴から、俺と手合わせだ」
志願者達が固まる。
「動けない奴は、そこで見ながら休んでろ」
ホークスは木剣を軽く振った。
「さぁ」
「準備ができた奴からかかって来い」
こうして
闇魔将直属部隊の訓練が始まった。
第62話―終




