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第41話――女王陛下と六魔将――


謁見の間の巨大な扉が、ゆっくりと開いた。

「こちらです」

レギンに案内され、ホークスは赤い絨毯の敷かれた謁見の間へと足を踏み入れる。

ここは神界に存在するレイナス王国の王城、その最奥。

天井は高く、柱にはレイナス王国の歴史を刻んだ装飾が施されていた。


その奥――

玉座に座る一人の少女。

第5代レイナス王国女王

エレノア・レイナス。

十八歳という若さながら、背筋は真っ直ぐ伸びている。

偉大だった父王に負けぬよう、常に自らを律している女王。

その左右には、王国最強の戦力が並んでいた。

左側には、

岩のような体躯を持つ壮年の男。

土魔将 ボンブ。

(あいつは……俺より強いな……測れない)

その隣には、冷たい美貌の女性。

光魔将 レイン。

(少し…普通の人とは魔力が違う?)

さらにその隣には、整った顔立ちの青年騎士。

氷魔将 ヴォルド。

(決着がつかなかったがあのまま行ってたらこちらがやられてたかもな?)

右側には、

椅子にだらしなく座る赤髪の少年。

炎魔将 グレン。

(Sランク位か?やけに若いし先代が急逝したのか?)

そしてその隣。

穏やかな笑みを浮かべる細身の男。

風魔将 シェルク。

(何か胡散臭いな……警戒したほうが良さそうだ)

ただ一つ。

闇魔将の席だけが空席だった。


レギンは指定された場所までホークスを案内すると、その場を離れる。

ホークスは謁見の間の中央で片膝をついた。

そして。

女王の声がかかるのを待つ。

静寂が流れた。

やがて。

「顔を上げなさい」

澄んだ声が響いた。

ホークスはゆっくりと顔を上げる。

エレノアは真っ直ぐにホークスを見ていた。

「ギルドメンバー。ランクXのホークス」

「アルク討伐の件、見事でした」

「レイナス王国を代表して感謝と賞賛を送ります」

ホークスは丁寧に頭を下げる。

「ありがたいお言葉です」

「ですがアルク討伐はギルドからの任務として遂行したもの」

「感謝のお言葉は不要にございます」

謁見の間が一瞬静まる。

しかしホークスは続けた。

「ですが、お褒めの言葉はありがたく頂戴いたします」

その時だった。

「無礼です!」

鋭い声が響いた。

女王の側に立っていた近衛女騎士だった。

「女王陛下の感謝を不要とは何事ですか!」

「無礼にも程が――」

「よい」

エレノアが静かに手を上げた。

近衛騎士は口を閉ざす。


エレノアはホークスを見つめる。

「あなたを闇魔将として迎えたいという話」

「以前、氷魔将ヴォルドから聞いていると思います」

「その件について、改めて意思を確認します」

ホークスは答える。

「条件があります」

「ギルドの活動を続けながらでよろしいのであれば」

「闇魔将の任、ぜひお受けしたく存じます」

エレノアは少しだけ考えた。

玉座の肘掛けに指を添えながら、静かに思案する。

そして。

「……許可します」

その言葉に、謁見の間がわずかにざわめいた。

ホークスは頭を下げる。

「ありがとうございます」

「この身、闇魔将として力を尽くします」

その時だった。


「ちょ、ちょっと待つです女王陛下!」

声を上げたのは炎魔将グレンだった。

立ち上がり、無理やり丁寧な口調を作っている。

「その……なんですか」

「オレはその話、反対です!」

空気が変わる。

土魔将ボンブの眉が動いた。

「グレン」

低い声が響く。

「女王陛下の御決定に異議を唱えるとはどういうつもりだ?」

グレンは少したじろぐ。

「いや、その……」

「ちょっと思うとこあるだけですよ」

すると今度は光魔将レインが口を開いた。

冷たい声だった。

「愚かですね」

グレンが顔をしかめる。

レインは続ける。

「すでに決定された事に、今更異議を唱える」

「理解力の欠如としか言いようがありません」

「な、なんだと……!」

「静まりなさい」

エレノアの声だった。

三人の魔将の口論が止まる。


その時。

ホークスが静かに言った。

「炎魔将殿、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

グレンを見る。

「反対だと申されましたがどのような理由で反対なのでしょうか?」

グレンはニヤリと笑った。

そして言い放つ。

「簡単な話だ、血筋だよ」

謁見の間の空気が冷えた。

「血筋も分からねぇ雑種みたいな奴がよ、闇魔将なんて大役、務まるわけねぇだろ」

「弁えろよ!、ギルドの雑種風情がよ!!」

ホークスはグレンを見つめる。

そして言った。

「あなたがどれほど偉い方なのかは存じませんがこの様な場で罵倒される言われはありません」

一拍置く。

「売られた喧嘩は買いますよ」

ホークスの視線が鋭くなる。

エレノアはわずかに顔を曇らせた。


「申し訳――」

謝罪しようとしたその時。

「女王陛下」

ボンブが口を開いた。

「王たる者、軽々しく謝罪すべきではありません」

エレノアは口を閉じる。

ボンブはグレンを見て、半ば呆れたように息を吐いた。

「グレンよ、一度痛い目を見るのも薬だろう」

そして言う。

「ホークス殿、グレンとの決闘を提案する、責任は儂がとる」

謁見の間がざわめく。

「言葉より、力で示せばよい」

レインはため息をついた。

「……愚かな」

それ以上は何も言わない。

黙って腕を組んだ。


風魔将シェルクはクスッと笑った。

「いいですねぇ」

グレンを見る。

「グレン殿、せっかくの機会ですよ?決闘を受けて六魔将の力を見せつけては?」

だがその目の奥では、別の光が浮かんでいた。

(新しい闇魔将の実力、見せてもらいましょうか)

その時。

氷魔将ヴォルドが静かに言った。

「結果の分かっている決闘は…正直あまり面白いものではありません」

そして女王を見る。

「ましてや女王陛下にお見せするには、少々心苦しい」

その言葉に。

グレンの眉が跳ね上がる。

「なんだとヴォルド!このオレが負けるって言いてぇのか!」

闘志が燃え上がる。

「上等だ!決闘を受けてやる!」

エレノアは小さく息を吐いた。

そして言う。

「……わかりました、決闘を許可します」

謁見の間の空気が張り詰めた。

闇魔将の席を賭けた決闘。

その戦いが、始まろうとしていた。


第41話―終

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