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第1話 ――帰還――


神々の戦争が終結してから250年後。

レイナス王国の境界線付近のとある街道にて。


「くっ……!」

革鎧の青年剣士が地面を転がった。

その頭上を巨大な槍が薙ぎ払う。

ドンッ、と地面が抉れた。

オークウォリアー。

しかも二体。

さらに空からはレッサーワイバーンが二匹、円を描くように飛び回っている。

そしてもう一体。

石の翼を持つ魔物――ガーゴイルウォリアー。

五体。

完全に囲まれていた。

青年は歯を食いしばる。

「ちっ……境界線近くとはいえ多すぎだろ……!」

剣を構え直した瞬間だった。


一閃。

オークウォリアーの体が、真横に割れた。

青年の目が見開く。

「……え?」

いつの間にか、そこに一人の男が立っていた。

鋭い目。

腰には二振りの剣。

一本は細身の刀。

もう一本はロングソード。

男は倒れたオークを一瞥する。

「……帰って早々これか」

男は魔界での修行を終え4年ぶりに神界に帰ってきた。

神界の空気をゆっくり吸い込む。

魔界と比べて乾いていて軽い風。

「助太刀する、お前はそこのオーク1体抑えてろ。後は俺がやる」

「助太刀感謝します!わかりました!」

その瞬間。

空から火球が降ってきた。

レッサーワイバーンのブレス。

男は手に持った刀を振る。

「闘技、剣風」

振るわれた剣の風圧が火球をかき消した。

続けて詠唱する。

「フレイムウィング」

炎の翼のような魔法が空へ広がる。

炎の翼で薙ぎ払い、レッサーワイバーン達を直撃した。

二匹は悲鳴を上げ、空中で大きく体勢を崩す。

そこへガーゴイルウォリアーが突っ込んできた。

斧を振り上げる。

男は半歩身を引き、斧を避ける。

すれ違いざまの一閃。

ガーゴイルの胴が斜めに裂けた。

だが男は止まらない。

地面を蹴り、空へ跳ぶ。

「――マジックシールド」

空中に小さな魔法の盾がいくつか出現し男はその盾を足場代わりにした。

男はそこを踏み、さらに跳躍した。

投げナイフを数本放ち、空の魔物を牽制しながら距離を詰める。

刀が振り抜かれ、一匹のレッサーワイバーンの首が飛ぶ。

残った一匹は逃げようと翼を広げた。

「闘技、飛剣風」

体勢を変え、空を裂く斬撃が放たれる。

レッサーワイバーンは空中で真っ二つになり落下した。


残る魔物は一体。

もう一匹のオークウォリアー。

その頃には、青年剣士も立て直していた。

「はあああっ!」

「闘技!強斬撃!」

気合と共に剣を振るう。

オークウォリアーの首を跳ねた。

戦いは終わった。

息を整えつつ青年剣士は呆然としていた。

「……す、すごい……」

男は何でもないように地面へ降り立つ。

そして青年を見る。

「大丈夫か?」

「は、はい! 助かりました!」

青年は慌てて姿勢を正す。

「あなたが……ホークス様ですね!?」

男――ホークスは、軽く目を細めた。

「……誰だ?」

「ギルド本部からの伝令です。境界線付近であなたを探すよう命を受けまして。

自分はリグルド。ランクはBランク下位です」

ホークスはその言葉を途中で遮った。

「そうか……話は街で聞く」

「え?」

「腹が減ってる。魔界の飯は不味いからな」

真顔だった。

「……は?」

「まともな飯が食いたい。ついでに食材と調味料も買う」

リグルドは一瞬ぽかんとした後、慌てて頭を下げた。

「も、申し訳ありません! すぐ街までお供します!」

ホークスは歩き出す。

「そうか」

それだけ言って、二人で街へ向かう。


境界の街――リングウェル。

小さいが活気はある。

戦時下ゆえに空気はやや重い。

二人は酒場へ入った。

ホークスとリグルドは店員に軽く注文をし品物が運ばれてくる。

肉料理。

焼きたてのパン。

濃いスープ。

ホークスは無言で頬張る。

「……うまい」

それだけで、満足そうだった。

リグルドはようやく本題を切り出す。

「本部から呼び出しがあります」

ホークスの手が止まる。

「呼び出し?……理由は?」

「正式な通達は受けていません。ただ――」

リグルドは少し声を落とす。

「レイナス王国は、三年前から隣国オルクス獣王国と戦争状態にあります」

「……戦争?」

「はい。戦況は芳しくありません。もしかすると、その件かと」

ホークスは四年前から魔界にいた。

神界の情報はほぼ入っていない。

「そうか……知らなかったな」

肉を頬張りながら言う。


リグルドは恐る恐る尋ねる。

「ちなみに……ホークス様のランクを、お聞きしても?」

ホークスは逆に聞き返した。

「お前は確かBランクだったな」

「はい」

「……そうか」

水を飲み、何でもないように言う。

「俺はSランクだ」

リグルドは小さく息を吐いた。

「やはり……」

納得の声音だった。

食事を終え、ホークスは金を置いて立ち上がる。

「準備して王都へ向かう、伝令感謝する」

「いえ!こちらこそ助けていただきありがとうございました!」


レイナス王国の王都ブレドへ。

酒場を出て、街を歩く。

その時――

炎の匂いが、脳裏をよぎった。

四年前。

燃え盛る戦場。

父――ゲン。

親友――シルバー。

撤退戦の殿を務める二人。

「行け!」

怒号。

ホークスは致命傷を負い、

無理やり撤退用の馬車に放り込まれた。

次の日。

まだ治りきらぬ体で戦場跡へ戻った。

そこに残っていたのは――

一本の剣だけ。

シルバーの剣。

それを、シルバーの妹のウィンに渡した。

俺の幼馴染。

彼女は、大粒の涙を流して泣いた。

今の自分なら。

魔界で四年を生き抜いた今の自分なら。

あの時。

父と。

親友と。

共に残り、戦えただろうか。

「……」

答えは出ない。

ただ、歩き続ける。

王都ブレドへ。

運命が待つ場所へ。


――第1話 終


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