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第2話――ギルドマスター――


レイナス王国の王都ブレド。

外壁を越えた瞬間、ホークスは足を止めた。

「……なんだこれ」

4年前とは別物だった。

石畳は整備され、露店は増え、

人通りも倍以上。

「魔界の同盟国の首都より栄えてるな……」

思わず呟く。

物珍しげに街を見渡しながら歩く。

子供の笑い声、武器屋の呼び込み。

魔道具店の光。

活気がある。


やがて視界に入る――

巨大な建物。

「……でかくなりすぎだろ」

ギルド本部。

4年前の倍はある。

増築、増築、さらに増築。

ホークスは苦笑しながら中へ入った。

中はさらに賑やかだった。

受付は列ができ、

酒場は冒険者で満席。

昔は人も少なく、静かな建物だった。

「……随分、立派になったな」

少しだけ嬉しそうに、呟く。

受付へ向かい、ギルドカードを差し出す。

受付嬢はカードを見た瞬間、ほんの僅かに目を見開く。

だがすぐに表情を整える。

「お待ちしておりました。奥へどうぞ」

案内され、転送部屋へ。

魔法陣が光り、視界が歪む。

次の瞬間。

ギルドマスター専用棟。


扉の前に立ち、ノックする。

「入れぇぇぇ!!」

豪快な声が響く。

うるさい。

ホークスはため息をつき、扉を開けた。

広い部屋。

机の向こうに座る大男。

髭面。白髪。

豪放磊落な笑み。

ギルドマスター兼ギルド最強の男ボイド。

「おぉぉぉ!!久しぶりじゃねぇかホークス!!」

立ち上がり、机を叩きながら笑う。

「相変わらずうるさいな、おやっさんは」

「うるせぇだと!?元気な証拠だ!!はっはっは!!」

豪快に笑い、肩を叩く。

「よく帰ってきたな!4年ぶりの神界だよな!?死んでねぇだけで上出来だ!」

ホークスは少しだけ嬉しそうに答える。

「……ありがとうな」

「で?用件だろ?」


ボイドの目がわずかに鋭くなる。

「獣王国との戦争、どこまで知ってる?」

「3年前に始まって、劣勢ってとこまでは伝令から聞いた」

「まぁそんなもんだな」

ボイドは椅子にどかっと座り直す。

「発端はレイナスの六魔将、当時の炎魔将と闇魔将だ」

ホークスの眉が動く。

「外交失敗」

「獣王国ブチ切れ」

「レイナス側からの宣戦布告」

ボイドは指を折りながら続ける。

「戦争の発端を作った先々代炎魔将、その責任を取ろうとした次代の炎魔将、そして戦場で一騎討ちをした先代氷魔将は――」

一瞬間を置く。

「獣王国の将軍」

「魔獣将アルクに討ち取られてる」

「……アルク?」

「そんで闇魔将は暗殺」

「後を継いだ次期闇魔将は最近大怪我で前線離脱になりそのまま闇魔将を辞退」

「それで前線はさらに悪化」

ホークスは呆れたように言う。

「どう見てもレイナス側の過失だろ」


ボイドはため息をつく。

「分かってる」

「だがな」

「ここはギルド本部のある国だ」

少しだけ真剣な声。

「助けてぇんだよ」

そして皮肉混じりに笑う。

「この戦争のおかげでな」

「治安維持、魔物討伐、境界警備……仕事は山ほど来た」

「ギルドはデカくなった」

「人数も質も上がった」

「……だが素直に喜べるかって言われるとなぁ」

ホークスは言葉に詰まる。

ボイドは急にニヤリと笑った。

「そこでだ。妙案がある」


嫌な予感。

「六魔将を3人討ち取ったアルクを――」

机を叩く。

「お前が討ち取れ!!」

静寂。

ホークスは苦い顔をする。

「……アルクとは、共闘したことがある」

「なに?」

ボイドの目が細くなる。

ホークスは語り始める。

魔界側の境界線付近にある同盟国の戦争。

神界から来たという獣人。

前線で槍を振るい、敵陣に単騎突撃する姿。

その後ろを追い、2人で敵地ど真ん中で暴れたこと。

敵の基地を落としたこと。

戦の後、酒の飲み比べで勝負して負けたこと。

「……名前はアルクだった」

ボイドは腕を組む。

「戦争狂いの戦闘狂だ」

「今回も武勲まみれだ」

ボイドは立ち上がる。

「お前がアルクに一騎打ちを挑み、ギルドの名を名乗り、討ち取る!」

「アルクが討ち取られれば獣王国の動きも止まり、そのまま終戦するはずだ!」

「そして戦争を終わらせた英雄がギルドから出る」

「そうすれば名声は爆発する!」

さらに笑う。

「ついでにランクXを名乗れ」


ホークスの目が細めボイドが続ける。

「秘匿とされていた噂だけの伝説扱いのランクX、その一騎討ちで戦闘力を世界に叩きつけろ!」

強く言う。

「これ以上の宣伝はねぇ!!」

ホークスは静かに言う。 

「……アルクと戦える武器がない」

ボイドは即答する。

「3週間やる、最高の武器を用意しろ」

「そして対アルクの戦術も組め、そして戦場で名乗り上げろ!」

「ランクXホークスだとな!!」

沈黙。


ホークスは目を閉じ思い出す。

炎の戦場。

アルクの笑い声と槍での薙ぎ払い。

(あいつの槍を、俺が)

(あいつを……超えたい)

「……分かった」

ボイドは豪快に笑う。

「よし来た!!」

「暴れてこい!ギルドの未来を背負ってな!!」

ギルド本部を出たホークスは空を見上げる。

(……まさか帰って早々こんな事になるなんてな)

(魔界での修業の成果を、まさかあいつに試すことになるとは思わなかったぞ)

尋常じゃなく頑丈な武器が必要だ。

まずは――

鍛冶屋を回るか。


第2話―終


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