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あなたを探して~今日から重世界で生活します~君を探して  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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52/60

52話 出会いは突然 

□  □


‐Side 常緑小高木‐


チクチクと肌を刺すように悪意が絡みついてくる。

どうしてこんなにも自分の望みだけを叶えようとするのだろう。

私はもうあなたの一部ではないのに。


「悪意をまぶせ」


そう言われている気がする。言うことを聞かせるために甘言が効かなくなれば、脅しに変わる。


「あなただって憎いでしょう?」


憎くない


「悲しいでしょう?」


何がどう悲しいの?


「可哀想に」


本当に可哀想なのはあなただった。

今はもう可哀想だとすら思えないけれど。


自分の幸せのために他人を貶めようとする行為は、自分に返ってくるのよ。

あなたを貶めようとする人がでてくる。


その人たちを排除しようとして、また狙われて。その繰り返し。

人の人生として何千年、魂の経験値なら何十回とそんな妄執を捏ね回してさらに気持ち悪いものに進化させたわね。

私はもうとっくにあなたじゃない。

ちゃんと己の醜さに向き合って進むことを選んだの。


だから、今回は守る側。裏が例え汚れていても、表に出すのは綺麗なものだけ。そう決めたから。


□  □


‐Side ひなたと玲央‐


「あいつ、どこに消えたんだろ」

「あいつって?」

「青い哀しい奴」


たぶんおれらの本体。


「ところで玲央、池に落ちたなら戻るときに気をつけないとまた溺れるぞ」

「だよな。てかここどこ?俺、転移したのか?」


「俺は肉体で狭間に落ちてるが、玲央はたぶん違う」

「霊体?」

「うーん・・・そうとも言い切れないんだよなあ」

「?」


「死んではいないだろうし、とにかく戻るときには気をつけて」

「気をつけて何とかなるのかな」

「さあ?」

「なんかこう術でなんとかならん?」

「俺はもうわからないことが多すぎて何が正解なのかわからん」


「・・そうか」


□  □ 


‐Side Gathering‐


魂の掃除機。

それが穴だ。


たまたま近くを通ったものを吸い込むこともある。わざわざそいつを探して吸い込むこともある。


吸い込まれた後、どうなるのかは吸い込まれた奴にしかわからない。

消滅してしまうのか、凝縮されてしまうのか。

ただ、己が無くなるという恐怖に襲われる。


吸い込まれてしまう。


己の全てが消えて闇に包まれてしまうという恐怖。


何度も吸い込まれそうになった。

自分の周りにいた者が吸い込まれていくのを見た。


必死で逃げたおかげか、それとも吸い込まれない理由が自分にはあるのか。吸い込まれそうになったのに、吸い込まれないという奇妙な自信が生まれた。


なあ


そんなに吸い込みたいなら、この頑なになった心の芯や、自分さえ良ければいいというそこら中に転がっている傲慢な心を吸い込んで掃除してくれよ。

頼むから


□  □


‐Side 環‐


まだ暗い内に山を下りて、スルスルと街を走る。

下ろされた場所は大きなビルの谷間。

交差点に立たされ


「ここから引っ張ってくれ」


と言われる。


引っ張る?


「異世界側に行けばいいんですね?」そう尋ねれば

「おそらく行けんの」


そう言われたので、目を異世界側へと移す。

なんと、ぐにゃぐにゃと歪みながら回っていた。


「これは?」

「おそらく、自浄作用じゃな」


作用しているのはこちらの世界?それともあちらの世界なんだろうか。


「おそらく、両方じゃよ」


口に出してはいなかったけれど、しょうちゃんにはわかったのか。

どちらにしろ、ここへ入って無事に戻ってこられる気がしない。

だから「引っ張る」なのか。


扉を開けるように異世界へと腕を伸ばす。


「お名前はひなたさんでしたよね」

「そうじゃ」

「では、『ひなたさん』」


異世界側へと声をかけた。

しばらく待つ。


異世界へと差し伸べた手は、ぐにゃりと曲がる。

骨が折れそうだと思った。だけど痛みはない。

感覚的に曲がってはいけない曲がり方をしているような気がするけれど、痛みも痺れもない。

どうすればいいの?としょうちゃんを見る。

にっこりわらって何も言われない。

しょうちゃんほどの人が何も言わない・・。

それはきっと、しょうちゃんにもわからないことなのかもしれない。


次世代だからこそできること、わかることもあるのかも。

ふと浮かんだ存在の名前を呼んでみる。


「オルビス」


あなたはそこにいるの?

狭間に落ちて出られなくなったりしていない?

もしあなたにオルビスとしての意識があるのなら、私のところに遊びにこない?

こちらの世界はとても自由で楽しいよ。

そんな風に思った。パシリと私の手を誰かが掴む。


空間からニョキっと人が現れた。


「おかえり」しょうちゃんが優しく耳に心地よく響く声で笑った


□  □


‐Side 玲央‐


ひなたが消えた。

何か透明なものに包みこまれたように急に消えた。


「参ったな」


自分はどこに帰ればいいのか。

帰り道がわかるようでわからない。


一人ぼっちだ。


□  □


‐Side 環‐


目の前に現れた人に、なんだか既視感を覚えた。

どこかで会ったことがあるような、ないような。


「爺」

「なんじゃ」


「爺」

「だからなんじゃ」


「お・・」


会話している2人を見つつ、私の手と彼の手は繋がれたままになっている。


「俺・・」


そのとき、ぶわりと背中を総毛立つような生ぬるい風が吹いた。


□  □


‐side 常緑小高木‐


還滅(げんめつ)


性懲りもなくよくも飛ばしてきたわね。

一瞬で消す。


私はこの日のためにひたすら訓練してシミュレーションしてきたの。

秒で圧倒してみせる。


一度ならずも何度もまとわりついてくるそれを滅していく。


「ようやった、橘」


御大の声に、それが終わったと知る。


□  □


‐side 環‐


「説明は車でしようかの」


そう言って、しょうちゃんが車に乗り込んだので後に続く。

困ったな、手を離してもらえない。

まだ視界が歪んでいる感覚でクラクラとめまいを覚える。


「さて、もう一箇所でまた同じことをよろしく頼む」


しょうちゃんに言われて頷き、私の手を握る人を見る。


「そいつがひなたじゃ」まあそう・・でしょうね。


「ひなたさん、おかえりなさい」


「・・・ただいま」


ひなたさんの瞳が揺れて


ボロボロと瞳から涙がこぼれ落ちる。

その涙が青色に見える既視感。

思考する前に言葉がするりと出た。


「青い人はいましたか?」


小さく何度も小刻みにひなたさんが頷いた。


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