第一章⑤ デモ
そこからのクラウドたちの動きはとても早かった。
まずは先ほど説得した兵たちに、国王のやったことを暴露。
ハッコウが捕まっていたというだけの事実を、あくまでも国王が民を裏切っていたと思うように誘導する。
その一方で、自分たちは民衆のために魔法を教えるつもりだと伝えるのだ。
自分たちこそが、民衆の味方であると強調して。
兵たちは面白いほどあっさりと騙されてくれた。
国王が嘘をついていたことによる不信感と、純粋にハッコウ自身が強力な魔法を広めたいと思っていたことがうまく作用したのだろう。
そのうえで、どうか協力してほしいと頼み込む。
何とか脱獄することはできたが、また捕まったらひどいことをされる。
本当は今すぐ逃亡したいけれど、民衆が騙されているのは我慢できない。
国王の横暴を白日のもとに晒すために協力してくれ、と。
そんなクラウドの訴えに、兵たちは涙ながらに頷いてくれた。
そして数週間が経ちーー。
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「な、何が起きている……?」
王宮の前の広場にはデモンストレーションによる人並みができていた。
彼らが持っているプラカードには、「国王を許すな!」「魔法の独占反対!」「賢者の弟子こそ救世主だ!」などと書かれていた。
「デモだと……」
「そんな動きが今まであったか!?」
「いえ、デモ参加者は煙のようにいきなり現れました!」
「民衆が王へ不満を漏らしているなどという報告はなかったはず……!」
玉座の周りを囲む家臣たちの言う通り、デモ参加者は今朝、いきなり王宮前の道を埋め尽くしていた。
夜のうちに準備をしていて、夜明けとともにやってきたのかもしれないが、それにしても夜のうちに何の気配もなかったのにいきなりこんな数が現れるのはおかしい。
それに、デモが起きるときは必ず前触れがあるはずなのだ。
国に対する不満が民衆に広がり、それが一定以上まで膨れ上がることでデモは起きる。
しかし、都を巡回する兵たちからそんな報告は上がっていなかった。
なぜ、こんなにいきなりデモが起きたのか。
この部屋にいる誰もがその答えを持っていなかった。
そうーー
「くっくっく、いい顔してやがるな」
バァン、と勢いよく音を立てて扉を開けた二人組がやってくるまでは。
「誰だ!? 国王陛下の御前だzーーその幸薄そうな顔は、ハッコウ!」
「この騒ぎは貴様の仕業か!」
「衛兵は何をやっている! そいつを捕まえろ!」
「それと……誰だ、そのガキは?」
突然の闖入者に大臣たちが色めき立つが、その正体がいつの間にか逃げたハッコウだと知るとすぐに威勢を取り戻す。
誰に手助けされたのかはわからないが、せっかく逃げられたところを戻ってくるなど馬鹿な奴だ。
今度こそ本物の魔導書のありかを吐かせてやる。
そしてこのダイヤモンド王国が世界の頂点に立つのだ。
この時、ほとんどの者がハッコウの存在に気を取られていた。
隣……というかむしろ率先して立っているように見える子供のことは気にしていない。
仕方のないことだが、彼らに知る由もない。
大切なのがむしろハッコウよりも子供のほうなのだ、ということに。
そして、喧嘩を売ってはいけない相手が誰なのか、ということにも。
「おうおうおう、浅ましいアホどもが騒いでやがるな」
そんな喧騒など意にも介さず、その子供は煽るように告げた。
その言葉に、家臣たちはムッと顔をしかめ、ようやく謎の子供に意識を向ける。
「……誰だ、お前は」
ハッコウたちが現れてから静観していた国王が、ここで初めて口を開く。
彼だけは、ハッコウのそばに佇む子供に何かを感じていたのだ。
大きな天災や魔物の襲来の前に感じるような、そんな畏怖にも似た何かを。
「私から見たら見知った顔が多いが、まぁいい。いちおう初めまして、と言わせてもらおうか。私の名はクラウド」
クラウドの名に、玉座の間にいる者たちが再びざわめく。
「賢者の生まれ変わりだ」
ちょっと短めですね……。
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