38話 セントール5
ミアは前で戦っていた二人の横を通り抜け、そのまま後ろにいるレイラのもとへと向かう。ミアは一対一であれば、ラクトは問題ないと考えたのだ。だが、それはあくまで一対一ならだ。後ろで支援する……そしてレイラが呼び寄せた精霊、シルフィがいる限り目の前にいるラクトを倒すことは不可能といっても過言ではない。ミアがレイラを狙ったのも当然のことといえるだろう。
「レイラ!!」
体制を崩したラクトとシルフィはすぐにはレイラの元へと駆けつけることはできない。魔法を主流としたレイラには近寄ってくるミアに対処することができないかと思われたのだが……
「舐めないで欲しいわね」
もう既に人類と言い難い身体能力をしているミア。そんなミアが繰り出した拳をレイラは見切り、躱したのだ。
……あり得ない、思わず呟いてしまう。仮にその自身の拳が見えたとしても、避けるのが間に合うはずが、それも自分が知覚できないほどの速さで。
それは目の前の女性……レイラが自分よりも高い身体能力を有していることに他ならなかった。ただ、それはあまりにもミアには信じられないことで。ただ事実としてレイラの拳がミアの脳を粉砕するのを呆然と戻って来た本来のミアの体で感じるだけだった。
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先ほどのミーちゃんよりはましとは言えども……それでもあっさりとやられたミアは肩を落としながらとぼとぼとナオヤ達が集うモニターの前へと帰ってくる。
「……駄目だった」
一言、落ち込みながら帰って来たミアはそう言った。今回、ここで自分が役に立つと言うことを、少しでもアピールしておくつもりだった。だが、結果はこの通りである。ミドラよりは多少マシだとはいえ、あっさり負けたことには変わりがない。
そんな落ち込むミアを見て、ナオヤは一言、
「別に焦らなくていいんだぞ。例えミアが戦えないとしても俺達は見捨てたりしないんだから」
「……うん」
そのナオヤの一言に、たった一言に満足そうにミアは頷くのだった。
一方で迷宮内……その二階層。
「あんた達……何をしているの?」
レイラの口からでたその言葉にラクトとシルフィは押し黙る。と言うよりも何も言えない。ラクトとシルフィ、本来は前衛を務め、レイラの身を守るのは役目だ。だというのにあっさりと先ほどの少女……ミアを通したことに対して憤慨していた。
「ま、まさかレイラに向かうとは思わなくて……」
『まさか、あそこまで強いとはねぇ……まぁ、それでもレイラには及ばなかったみたいだけど』
ラクトは重々しく、言い訳を。シルフィに関しては全く反省したそぶりもなく、軽々とした口調で。
「全く……今ので大分解析が遅れたじゃない」
そう、本来この中で一番強いのはレイラなのだ。例え魔法の力を抜きにしたとしてもラクトはレイラに敵う事がないほどである。なぜ、そんな力を有してるのか……それはレイラの出自にも関係しているのだが……それは今は置いておくことにする。
何故そのレイラがいま戦いに直接手を出していなかったのかというとこの閉じ込められた部屋からの脱出を、進むための方法を探すためである。いつまで相手が現れるか分からないこの閉じ込められた部屋。それも自分たちの実力を試すかのように一体一体相手は現れる。そもそも迷宮と言う相手の土俵、どうも観察されているような気がしてならないのだ。実際レイラのその感覚は当たっている。
だからこそこの部屋を出るすべを探していたのに、前衛の不手際で遮られてしまった。
「はぁ、どうせまだ続くんでしょうし次はちゃんとお願いね?」
「あ、ああ。任せとけ」
『おっけー』
そう言って再びレイラは部屋からでるすべを探るのに集中し始める。ただ、その余裕もすぐになくなることとなる。
次に現れるものはこの迷宮最強の魔物であるのだから……
はい、今まで読んでくださっていた方も、読んだことがなかった方もお久しぶりです。毎週土曜投稿とはなんだったのか……取りあえずなんかもう色々疲れましたので眠りましょうそうしましょう。
次話投稿……いつになるのでしょう。




