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第37話 止まった一瞬

距離を詰めるにつれ、ニコル・アーステルドの前方に立つ人物の姿がはっきりしていく。

黒いフードを深く被った人物。

どう見ても怪しい。


「お前がニコル・アーステルドだな」

「そうだけど。君は誰だい?」


ニコルは突然のエンカウントにも、落ち着いた口調で応じる。


「ウィル・ハーモスたちを殺したのは、君だね」

「そうだ。次はお前だ」

短い言葉。

だが、 明確な殺意。


「どうしてそこまで憎む? 話を――」

ニコルは予定通り、犯人との会話で時間を稼ごうとする。

もちろん、左手では魔導具を握りしめながら。


「我らの祖先の敵。正義の鉄槌を下す」


だが、次の瞬間、犯人が問答無用とばかりに右手にもった杖を振る。

「イカヅチ!」


そして、炎がニコルへ放たれる。

ニコルは即座に防御のために魔導具を展開した。


ボン、と鈍い音。

鈍い音が辺り一帯に響く。

そこへエドワードたち先鋒隊が割って入る。


「殿下!無事ですか!」

「平気」


護衛の3人がニコルの無事を確認し、犯人に対して攻撃の構えをとる。

俺はというと、作戦通り、犯人の前には出ずに木の影に隠れて、様子を伺う。

それはいざと言う時に、ニコルを逃がす役割があるためだ。


護衛の3人が魔力を剣に込め、構える。

ニコルは一歩後ろに下がり、3人と犯人の戦闘を静観する。


そして、3人が3方向から一斉に犯人に突っ込むと、犯人は右手の杖を振り下ろして、炎の魔法を前方180度に放つ。


3人は遠方攻撃を受けるが、魔法壁でこれを防ぐ。

だが、風圧の勢いで2メートルほど押し戻されている。


それでも、3人は怯まない。

再び犯人に向かっていく。

犯人も同じように広範囲魔法を放ち、うまくいなす。


この攻防が5回ほど繰り返され、まさに一進一退だ。

先に隙を見せた方が殺られる。そんな予感がした。


そのとき、護衛の3人の動きが少し変わる。

バカの一つ覚えでなく、あえてエドワードが突っ込まず、その場に留まり、2人で襲いかかる。

犯人は二人からの攻撃に対応するため、同じ広範囲攻撃で応戦する。


そのとき、射程外となったエドワードがワンテンポ遅れて、魔法で遠距離攻撃を企てる。

エドワードから物凄い、風の斬撃が犯人めがけて飛んでいく。


ザ、ザ、ザ!


切れ味の鋭い一撃が犯人にヒットする。

だが、かろうじてクリーンヒットを免れたようだった。


それでも犯人には切り傷が多数つき、少しよろける格好。

深めに被っているフードがボロボロとなり、今にも脱げそうだ。


この好機を逃してはならないと、3人は再度突っ込んでいく。


犯人が「ちっ」と舌打ちし、次の瞬間、左手で隠していた棍棒のような魔導具を勢いよく上下に振った様子が見えた。


その瞬間、もの凄い破壊音が鳴った。

まるでダイナマイトが爆発したような衝撃。

離れている俺のところまで強い風圧。


次の瞬間、目を凝らし周りを見渡すと、エドワードら護衛3人が仰向けに倒れていた。

犯人の隠し玉だったようだ。

 ―これは非常にまずい


俺は犯人の様子を確認するため、目を向ける。

犯人は、大技の影響もあったのか、ボロボロであったフードが完全に切れてしまっていた。

姿をはっきりとこの目で捉える。

 ―あれは、女?


ここから見えた犯人の姿は金髪のロングヘヤー、瞳がサファイアブルー・・・。

…フリーラ!?


俺が見た犯人の姿は知っている顔であり、とても信じられないものであった。

どうして、フリーラが?どうして・・・?


俺はあまりにも出来事に混乱のあまり、膝を地面につき、うなだれてしまう。


「殿下、お逃げください・・・」

だが、護衛の1人からこの言葉が入ってくると、我に返る。


完全に形勢が逆転している。

このままではニコルの身が危ない。


状況は一刻を争う。

プランどおり、俺が前に出てニコルを逃がす。


迷っている暇はなかった。

できる限りの魔力を巡らせ、後方から勢いよく、ニコルの前まで一気に飛び出した。

俺とフリーラの距離は4、5メートルほど。


剣を構え、こう叫んだ。

「フリーラ何やってんだよ!」


フリーラは突然現れた俺の姿を見て、一瞬動揺する。

だが、俺が敵対心をもって距離を詰めようとしたため、フリーラも本能的に右手で持っていた杖を構える。


そのまま距離を詰めると、杖を振り目の前で炎が舞う。

まるで警告のような攻撃だった。


「フリーラ。ニコル王子を殺すつもりなのか!」

「あんたはすっこんでなさい!」


あの清楚で落ち着いたフリーラとはまるで別人だった。

もはや俺の言葉ではフリーラを抑えきれないことを悟った。

 ―やる他ない


剣を振りかざしながら、フリーラの元に突進する。

「うぉー!!!」


フリーラは突進する俺に合わせて、右に持っていた杖を振りかざす。

俺が右側から、フリーラの腹部めがけて剣を横ぶりに振る。


この瞬間、まるで時間が止まったようにフリーラと目が合った。

このときは一足一刀がスローダウンしているように感じる。


フリーラは杖を完全に振り下ろしてこない。

明らかにフリーラの攻撃のほうが早く、剣が当たる前に攻撃できていたはずというのに。


次の瞬間、魔力を込めた剣がフリーラの腹部に直撃し、ものすごい音を立てる。

バキーン!


剣の威力がフリーラの防御壁の耐久を超え、フリーラの体が後ろに勢いよく吹っ飛んだ。

その距離は5メートルほどだった。


フリーラはそのまま壁に激突し、頭を強く打った。

ピクリとも動かない。

俺は、倒れたフリーラを前にただ呆然と立ち尽くしていた。


【魔法世界メモ37】

魔法による戦闘とは?

遠距離攻撃として、火系統、風系統、そして、土系統が使われる。

近距離としてはオーソドックスに剣などの武器に魔力で威力を強化したものを打ち込む。

これに対し、魔力で防御を適切にとれるかが勝負の鍵になる。


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